2018 Fiscal Year Research-status Report
遅延結合を含む回路のトポロジーに基づく電磁場の幾何学的設計
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18K04139
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久門 尚史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80301240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遅延電磁結合 / トポロジー / 等価回路 / メタマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な電磁現象の人工的な設計が注目されているが、それを表現する導体構造の設計は直感的なアプローチや電磁界解析を用いた試行錯誤が多数を占める。一方でMaxwell方程式から系統的に導体構造と等しいトポロジーの等価回路を導出し、電磁場の遅延結合を考慮すると、複雑な構造における固有モードや周波数特性、放射・分散特性などの表現が与えられる。本年度はこの等価回路を用いて、回路のトポロジーがそれらの特性に与える影響の評価を行った。 まず、従来の導体球と導体線に基づく構造の等価回路では、導体線のトポロジーのみ接続行列で表現したため、テレゲンの定理が適切に表現できない問題点があった。それに対して、導体球もトポロジーに入れることで、テレゲンの定理が自然に成り立つ形の回路モデルが構成できることを示した。 従来、電流を用いて振動モードを表現していたが、それと対をなす形の電荷を用いた表現も存在する。そこで、拡張された接続行列を特異値分解することで、それぞれ直交するモードに分解でき、それらが対応づけられることを明らかにした。 次に、トポロジーに基づく特性評価を行うため、相互結合を無視することにより、グラフラプラシアンのみを用いて固有振動数と固有振動モードが近似的に表現できることを示した。これにより、グラフラプラシアンというトポロジカルな表現を用いて電磁的特性が表現できることになった。 グラフラプラシアンの摂動を用いることにより、導体球と導体線の構造を順次追加していくことで、所望の特性を表現する回路を設計する方法を、提案した。グラフラプラシアンの摂動に対して固有値と固有ベクトルを導出するときには、2次の微小量まで考慮することが重要であることを示し、固有ベクトルの設計の例として、電流分布の設計、固有値の設計として分散特性の設計の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Maxwell方程式と対応する等価回路において、そのトポロジーに注目した電磁現象の設計を目標としている中で、適切なトポロジーを持つ回路の定式化を行い、テレゲンの定理が成立する形にしたことは、エネルギーの関係を扱ううえで重要な進捗といえいる。 また、特異値分解を利用することにより、固有モードの電流表現と電荷表現を結びつけられたことで、Maxwell方程式の微分形式による表現と回路表現の対応が明確化された。 その中で、微分形式と対応する形のグラフのラプラシアンにより共振モードや共振周波数が表現できることが明らかになったため、回路のトポロジーと電磁現象が密接に関係していることを示すことに成功したことで、トポロジーに基づく特性評価の可能性が見えた。 さらに、電磁現象の設計へとつなげるために、グラフラプラシアンに対して摂動を施すことで、最適化問題として導体線と導体球のペアを加えていく手法を提案できたことは、他のネットワーク解析においても重要な手法を提案できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
導体球と導体線の構造については、より一般的なトポロジーの変化を表現できるような設計を検討する。また、遅延電磁結合の影響を考慮することで、電磁界との対応の明確化を試みる。時間領域の定式化を試みることで、過渡現象の特性を評価可能にする。さらに、単導体線路モデルにおいても電磁現象とトポロジーの関係の明確化を進める。
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Causes of Carryover |
物品購入が想定より安くできたため。実験用の消耗品として本年度使用予定。
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