2019 Fiscal Year Research-status Report
非線形プリコーディングを用いるXOR物理層ネットワークコーディングの研究
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18K04142
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田野 哲 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80378835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ネットワークコーディング / 無線中継 / 双方向通信 / 多値変調 / プリコーディング / 演算量低減 / 周波数利用効率向上 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)アンテナ数が不均一な無線中継ネットワークへの拡張と高速化: 複数の中継端末が存在する2ホップ無線中継ネットワークにおいて双方向通信の高速化・効率化のための、物理層ネットワークコーディング(Physical Layer Network Coding : PLNC)の研究を行った。全ての中継端末を利用しつつ、中継端末での演算量を低減できる物理層ネットワークコーディングのための過負荷プリコーディング法を提案した。その基本特性を検証した結果、中継端末が増えるにつれ送信データ量は増えるものの、伝送特性が著しく低下することが明らかになった。そこで中継端末の一部だけを利用することとした。そして、送信できる情報量を最大化する中継端末選択法を考案した。考案した方法は、中継端末において誤り訂正を用いる2ホップ無線中継を前提としており、2ホップを構成する各々のチャネル行列の固有値を全て掛け合わせたものが最大になる中継端末を選択するものである。ランダムに中継端末を選択する場合に比較して、BER=1.0E-3 点において17dB程度の利得があることを示した。前年度提案した方法に比較しても2dB程度特性を改善させている。 (2)非線形過負荷プリコーディング:直交振幅変調(QAM)を適用した物理層ネットワークコーディングのための、MMSE規範に基づく最適非線形プリコーディングを導出した。提案する最適非線形プリコーディングにおいても、前年度検討したストリーム毎利得制御を適用している。提案する非線形プリコーディングを適用することで、昨年度に提案した順序づけコレスキー分解を適用した非線形プリコーディングに比較してBER=1.0E-4点において5dB程度の特性改善を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)アンテナ数が不均一な双方向無線中継ネットワーク物理層ネットワークコーディングのための中継端末選択方法を提案し、昨年度提案した方法よりさらに2dB程度高い伝送特性を達成してことは特筆できる。端末では非線形プリコーディングを適用しているにも関わらず、提案法はチャネルの固有値の積という線形信号処理により実現できることも、従来の常識の域をこえるものであり、当初の予定を上回る成果が得られている。 (2)物理層ネットワークコーディングのための基底格子縮小を適用した最適非線形プリコーディング法を提案した。多値変調を適用した物理層ネットワークコーディングにも適用できるよう、前年度検討してストリーム毎利得制御を適用したシステムにおける提案プリコーディングの最適性を証明した。基底格子縮小の適用は計画通りであるが、その最適非線形プリコーディングの構成法を示したことは計画以上の進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までは中継端末アンテナが多数存在する場合の非線形プリコーディング法や、その際の中継端末選択方法を検討してきた。中継端末が多い場合には選択という余地がある。一方、中継端末数が少ない場合には、端末に数多くのアンテナが備えられていても、中継端末数によって通信速度が限定される。そこで、中継端末数、あるいは中継端末に備えられている総アンテナ数が端末アンテナ数よりも少ない場合にも、高い通信速度を達成する物理層ネットワークコーディングを検討する。特に、中継端末での演算量増大を極力低減させるプリコーディング方法を検討する。 さらに、端末や中継端末の物理的なアンテナ数に依存せず、空間多重数を設定できる物理的なアンテナ数に依存しない物理層ネットワークコーディングを検討し、当初計画通りの高速化を目指す。
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Causes of Carryover |
高機能の計算機を前年度に購入予定であったが、新型コロナウィルス関連による計算機製造工場の一時停止等により年度内での納入が叶わなくなってしまった。今年度は状況を見つつ迅速に購入を計画する。
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