2019 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of AC impedance by magnetic method and its application to the evaluation of electrochemical reaction in localize region
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18K04168
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堺 健司 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 助教 (40598405)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電気化学インピーダンス / SQUID / 磁場分布 / 色素増感型太陽電池 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で,電流が作る磁場の交流応答を測定し電気化学インピーダンスが推定できることを明らかにした。しかし,検出磁場の空間分解能は現段階で数mm程度であることも明らかになり,本研究の目的である局所領域の電気化学インピーダンススペクトル(LEIS)の評価には,現在の測定装置の空間分解能をさらに向上させる必要があった。そこで令和元年度は局所領域の磁場検出に向けて,シミュレーションと実験により検討を行った。 まず試料内を流れる電流が作る磁場の空間分布を把握するため,有限要素法を用いて,交流インピーダンスが異なる素子を空間に配置したモデルを作成した。電流の周波数を広い範囲で変化させて磁場分布を計算した結果,これまでの実験で確認した結果と対応するシミュレーション結果を得ることができた。また,このモデルを用いて空間分解能の向上を検討した結果,磁場の検出領域を大幅に小さくしなければならないことが分かった。 そこで,磁場検出部に透磁率が高い軟磁性体を磁場検出プローブとして使用し,このプローブの先端をニードル状に加工して局所領域の磁場を収束させて検出することを検討した。超高感度磁気センサのSQUIDを用いた磁場検出部に磁場収束用のプローブを取り付け,磁場分布の検討を行ったが,現状の装置ではSQUIDの冷却構造などにより,プローブとSQUIDとの距離を近づけるには制限があり検出した磁界との結合が弱く,また,SQUIDが非常に高感度なため試料から発生する遠方の交流磁場も直接検出してしまい,プローブで検出した局所領域の磁場のみを検出することが困難であった。そこで,磁場検出部はニードル状プローブに検出コイルを巻き付け,検出コイルと直列に接続した入力コイルによりSQUIDと結合させるフラックストランスフォーマーにより局所領域の磁場を検出する測定装置の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に計画していた交流磁場分布のシミュレーションについて,有限要素法を用いて交流インピーダンスが異なる素子に交流電流が流れた際の磁場分布を計算するモデルを作成し,印加電流の周波数を変化させた場合の磁場分布を計算により求めることを実施した。また,前年度に測定した結果と概ね一致することを確認することができた。従って,シミュレーションに関する実施内容は概ね計画通りに進んだ。また,触媒材料などを変えて1つの色素増感型太陽電池内で電気化学特性が異なる試料を作製することも実施し,局所領域の交流インピーダンス評価を実証するための試料作製も概ね達成した。 しかし,空間分解能を向上させるための計画についてはやや遅れた結果となった。これは,本年度シミュレーションおよび実験により空間分解を向上させるための手法を検討したが,現状の超高感度磁気センサSQUIDを用いて磁場を直接検出する方式では困難であり,装置の改造にも限界があることが分かった。そこで,SQUIDと磁場検出部を分離した構造にし,磁場検出部で交流磁場を収束可能なプローブを提案し,この提案手法を実現する装置の作製も行ったが,局所領域の磁場検出の実証は未達成である。 以上の状況を総合的に判断し,進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に検討したフラックストランスフォーマーと軟磁性材料を用いたニードル状プローブによる磁場検出手法により,局所領域の交流磁場応答を検出して空間分解能が向上するかどうかを調査するとともに,局所領域の交流インピーダンスの推定を試みる。この際,令和元年度に検討したシミュレーション結果との比較も行いその妥当性を評価する。また,プローブに使用する材料に透磁率が高い金属系の軟磁性体を用いることも検討する。軟磁性体は導電率が高く交流磁場の検出には適さないが,軟磁性体を絶縁材料のゴムや樹脂に分散させた複合体を使用することで,導電率を低くし交流磁場の検出が可能と考えられる。作製した複合体の磁気特性,電気特性も評価し,局所領域の微小磁場を効果的に検出するプローブ材料の検討も行う。 また,現状の交流磁場を検出し交流インピーダンスを評価する方法は,電流のみの情報を取得しているため,定量的なインピーダンスの評価ができない。そこで定量的なLEISを実現するため,空間内の局所領域における電位を推定する新規手法も検討し,非接触,非破壊でLEISを定量評価することも検討する。 さらに,上記で検討した手法を特性が局所的に異なる色素増感型太陽電池を用いてLEIS評価を実際のデバイスで実証するとともに,他の電気化学反応で駆動するデバイス評価への適用も検討する。
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Causes of Carryover |
研究を行う過程で測定装置の改善が必要となり,本年度はこの内容に時間を費やしたため,当初予定していた備品や測定試料作製のための消耗品の購入に助成金を使用することがなくなり,本年度に残額が生じた。従って,これらの残額は,測定装置の改良が終了する次年度に使用する計画である。
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