2020 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of AC impedance by magnetic method and its application to the evaluation of electrochemical reaction in localize region
Project/Area Number |
18K04168
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堺 健司 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 准教授 (40598405)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 電気化学インピーダンス / SQUID / 磁場分布 / 軟磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である局所領域の電気化学インピーダンススペクトル(LEIS)の推定を実現するため,本年度は微小な磁場を高い空間分解能で検出し,測定した磁場信号から交流インピーダンスを推定することを検討した。この目的を実現するため前年度までに行った研究結果を踏まえ,超高感度磁気センサのSQUIDと磁場検出部を分離した構造にし,磁場検出部の構造を工夫することで,空間分解能の向上を目指した。 磁場検出部には透磁率の高い軟磁性材料を用いたニードル形状のヨークにコイルを巻いた磁場検出プローブを作製し,ニードル先端の狭い領域の微弱な磁場を高透磁率材料でできたヨークにより効果的に検出することを試みた。本研究では数Hz~1 MHz程度の交流磁場を検出することを想定しているが,軟磁性体のみを磁場検出プローブに使用すると軟磁性体の導電率が高く高い周波数領域では表皮効果により交流磁場の検出が難しくなる。そこで,軟磁性体を樹脂に分散させた複合体を作製し,機械加工によりニードル状プローブを実現した。このニードル状プローブにコイルを巻きSQUIDと磁気的に結合させて磁場を検出した結果,検出磁場の空間分解能が1.6倍に向上し,プローブ形状の最適化によりさらなる空間分解能の向上も期待できることがわかった。 また,導電率の低い複合体の使用,SQUIDの制御回路の最適化,測定試料が無い場合の磁場差分による補正により10 Hz~1 MHzの周波数範囲で微小な交流磁場が検出できるようになった。 さらに,磁場検出部をSQUIDと分離することでSQUIDの冷却機構などの制限がなくなり磁場検出部の自由度が高くなり,電池などの実デバイスを容易に測定可能な計測システムを実現できた。 このように最適化した装置で,電子部品を流れる電流が作る磁場を測定した結果,各電子部品の交流インピーダンスに対応した磁場応答を検出できることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である局所領域の磁場検出における空間分解能を明らかにし空間分解能を向上する研究目的は,申請者が提案した新たな方法で本年度に検討を行い達成することができた。また,研究当初は検出できる交流磁場の周波数帯域の上限が10 kHz程度であったのに対し,計測システムの最適化を行うことで上限の周波数を1 MHz程度まで高くし,電気化学反応の評価で必要な周波数帯域の微小磁場を検出することも達成した。さらに,最適化したシステムで基礎実験を行った結果,交流インピーダンスに対応した磁気信号が取得可能なことも本年度で明らかにした。従って,計測システムの開発に関しては研究計画時の目標を達成でき,研究は順調に進展した。 さらに,このシステムを電池などの実デバイス評価に適用することも計画しており本年度検討を行ったが,局所領域における電気化学反応と測定した磁気信号の相関性などを明らかにするまでには至らなかった。 以上の達成状況を総合的に判断し,研究計画の一部未達成な部分があったため,進捗状況はやや遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
開発した計測システムで,局所領域の微小交流磁場を測定し,交流インピーダンスに対応した磁気信号を検出可能なことが明らかになったため,このシステムを用いて実デバイスの評価に適用可能かを今後検討する。測定対象は,有機太陽電池などの電気化学反応で駆動する電池とする。市販の有機太陽電池を開発した計測システムを用いて測定し,既存の電気化学インピーダンス解析装置で測定した結果と磁場計測により電気化学インピーダンスを推定した結果を比較して本研究の手法が実デバイスの測定でも妥当であることを示す。 次に,局所領域の電気化学インピーダンススペクトル(LEIS)が推定可能かを検討するため,電池材料を一部変更したり,電池材料の一部に傷を付けたりして電池を自作し,部分的に特性が異なる試料を測定して部分的な変化に対応した磁気信号の変化が検出可能かを検討する。必要に応じて,さらに空間分解能を向上するなど計測システムの改良も実施する。 以上の実施事項により,局所領域の電気化学反応が開発した計測システムで評価可能かを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた研究計画を全て実施し一部の目的が未達成であったが,未達成の研究内容を継続することで想定していた研究成果が得られる可能性があり,研究期間を延長した。また,新型コロナウイルスの影響により,当初予定していた研究成果発表のための旅費を全て使用しなかったため残額が生じた。このような状況から,延長した研究期間で残額を使用し研究を継続して実施することとなり,次年度使用が生じることとなった。
|