2019 Fiscal Year Research-status Report
ブラインド分離と機械学習を用いた騒音下での打音検査装置の研究開発
Project/Area Number |
18K04171
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
新田 益大 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (20453821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 泰人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10718688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハンディ型打音検査装置 / 卓越周波数 / コンクリート / 空洞 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,最初に,三次元CADを用いてハンディ型打音検査装置の設計・開発を行った.研究計画調書に記載した打撃機構はL字型のヘッドに,鋼球落下を再現するために金属打撃子を半球状に加工してネジ止めし,バネにより打撃を与えるものであったが,直径20mmの鋼球の落下を再現すると,L字部に応力集中が生じて破断する可能性があることが分かった.そこで,L字型のヘッドではなく,筒状でバネと一体になったピストン型ヘッドに改良することで,打撃力を維持したまま,連続してコンクリートを打撃しても破断が生じない,手のひらサイズの打音検査装置を開発することができた.このピストン型ヘッドの駆動は,当初の予定通り,間欠歯車とDCモータを用いることで,電圧を変化させると任意の速度で打撃を与えることができる仕様となっている. つぎに,ハンディ型打音検査装置に小型のステレオピンマイクを装着し,名古屋大学橋梁長寿命化推進室のN2U-BRIDGEにある壁面空洞供試体でテストしたところ,巨大空洞では500Hzの,また,極小空洞では3500Hzの卓越周波数を観測することができ,これは,人がハンマーを用いて検査した場合と同等の結果であった.このことから,開発した装置が実用十分であることが裏付けられた.さらに,名古屋大学材料形態学グループが製作した標準供試体において,ラウドスピーカからドローンのローターブレード音(ノイズ)を発生させながら実験を行ったところ,前年度の成果であるブラインド分離を適用すると,高ノイズ下でも,加速度計と同じ8000Hzの卓越周波数を観測することができた. 最後に,機械学習を用いた自動診断についてであるが,当初計画ではFPGAに論理合成可能な機器を用いる予定であったが,予算の都合上,数値計算ソフトを用いて,周波数分布が卓越しているか,そうでないかの分類をするに留まっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハンディ型打音検査装置については,設計変更やバネ定数の最適化,機械音の低減などに時間を要したが,今年度の予定通り,実用に耐えうる小型で頑健なものに仕上がった.この装置を用いてN2U-BRIDGEで評価したところ,内部欠陥が広い場合は低周波,狭い場合は高周波の音が観測されるはずであるから,それが確認できたことは成果である. 一方で,当初計画で購入予定であったマルチファンクション再構成可能入出力デバイスが,予算の都合上,入手できなかったため,機械学習を用いた内部欠陥の広がりを,打音から,リアルタイムに評価するシステムの構築には至っていない.しかし,開発した打音検査装置で,空洞部は卓越周波数が観測される,すなわち清音であるのに対して,健全部では濁音であることを,確認しており,数値計算ソフト上では分類に成功している.したがって,今後は,これをプログラム化してリアルタイムに判別できるように注力する.
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Strategy for Future Research Activity |
名古屋大学材料形態学グループの標準供試体には人工欠陥が3箇所あり,それぞれ,欠陥の厚みが異なるため,卓越周波数も厳密には異なる.研究計画に示したように,それを特定するためには,前年度実施の鋼球落下試験でも分かったように減衰率をアルゴリズムに組み込む必要がある.そこで,今後は,数値計算ソフト上でサポートベクターマシンに卓越周波数と減衰率を学習をさせ,分類性能を調査する.これで問題ない場合は,タブレットPCを表示器として用いてリアルタイムに診断できるようにプログラミングを行う. しかし,空洞などの欠陥部では卓越周波数が存在するため清音となるが,これは第一周波数ピークが強いことを意味し,エネルギは小さいものの,その他の周波数成分も存在することから厳密に減衰率を算出することが困難である.この問題を回避するために,波形を(図形として)学習器に入力して判別することも計画している.
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