2019 Fiscal Year Research-status Report
Network Analysis of multidimensional biosignals focused on non-linear correlation
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18K04184
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
吉田 久 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (50278735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小濱 剛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (90295577)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ネットワーク解析 / コネクティビティ強 / Granger因果性 / F検定 / 相互相関関数 / 偏相関関数 / 皮質脳波解析 / てんかん |
Outline of Annual Research Achievements |
多次元生体信号のネットワーク解析は、その信号発生の機序を知るうえで非常に有用なツールとなる。脳機能解析においては盛んにネットワーク解析が行われているが、そのほとんどがピアソン積率相関係数を用いた線形相関解析である。信号伝播経路を反映した時間遅れや、信号伝播機構の非線形性などを考慮したネットワーク解析法が望まれる。また多変量間のピアソン積率相関係数は見かけ上の相関、すなわち他の変数からの影響による相関を含んでいるため、これを利用したネットワーク解析では実際のネットワーク構造を見誤る可能性が高い。本研究では、研究代表者らが開発した難治性てんかんのネットワーク解析法を拡張し、時間遅れ、偏相互相関関数、および非線形相関関数を導入した新たな生体信号のネットワーク解析法を確立し、実生体信号へ適用し、評価・検証することを目的としている。 令和元年度はGranger Causality(Granger因果性)に基づいたネットワーク解析法を導入した.Grange因果性は線形予測による予測誤差を検定することによって,2つの時系列間の因果性を導くものである.今,xとyを定常時系列とする.yがxに対してGranger 因果性を持つとは,xの自己回帰モデルx(t) = a_0+a_1 x_1(t-1)+…+a_m x(t-m)+e_x(t)と,この自己回帰モデルに別の説明変数y(t)を回帰させた x(t) = a_0+a_1 x_1(t-1)+…+a_m x(t-m) +b_1 y(t-1)+…+b_n y(t-n)+e_xy(t)を比較し,x(t)の自己回帰モデルより予測性能が向上した場合をいう.実際は予測誤差e_x(t)とe_xy(t)の分散をF検定することによって行う.今回このGranger因果性検定を基に,実データであるてんかん皮質脳波の解析に応用することを試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である平成30年度は,研究実施計画にある時間遅れを考慮したネットワーク解析法に関して研究を進めた.この方法の目的はネットワーク解析する際の情報伝達の有向性を解析することにある.まず,現存の提案モデルのシンプルな拡張である相関関数における最大相関値を示す遅れ時間τの正負を用いて情報の伝搬方向を決め,有向最小木を構成する方法を提案した.また,複数チャネル間のコネクティビティを求める際に,相互相関関数を用いるとネットワーク構造を見誤る可能性を指摘し、このような影響を取り除いた偏相互相関関数による新たなコネクティビティ強度を提案し,提案のネットワーク解析法を拡張した.また実際にこれらのネットワーク解析法を実データであるてんかん患者の皮質脳波に適用し,有向最小木によるネットワーク解析を行った結果,てんかん焦点の同定や伝播経路の推定が他のモダリティによる総合的な診断結果と一致するものであった. 令和元年度(平成31年 - 令和元年)は,単純な時間遅れによる解析ではなく,因果性を考慮したネットワーク解析法の研究に着手した.ここでは古くから経済データ解析などに利用されているGranger因果性検定を導入し,ネットワークにおける情報の有向性解析に因果性という概念を新たに導入し,ネットワーク解析方の改良が進んだと考えている.以上の状況から概ね順調に研究目的の達成する方向に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,ネットワーク解析法のさらなる進展を目指し,その応用例として主にてんかん患者の皮質脳波解析を実施していく.今年度は線形予測モデルにおける因果性,すなわちGranger因果性を導入し、コネクティビティ強度に因果性という概念から有向性を持たせるように拡張したが完全なものではない.本研究計画書でも指摘しているように多次元データの解析においては2系列間の相関性を評価する場合とは異なり,見かけ上の相関、すなわち他の変数からの影響による相関を考慮しなければならない.Granger 因果性検定は2つ系列間の因果性に関する方法であり,複数の系列間ではその因果的構造を見誤る可能性が高い。今後は上記の点から,昨年度導入した相関関数ならびに偏相関関数における最大相関値の遅れ時間の正負による方向性を持つコネクティビティ強度と本年度Granger因果性を導入したコネクティビティー強度を比較検討する必要があると考えている.また,現在は最小木を構成することによってネットワーク解析を行っているが,これは閉路を構成するネットワーク解析には適用できない.試金石としているてんかん患者の異常興奮脳波の伝搬も閉路がないとは言えないため,閉路を考慮したネットワーク解析法についても検討する.また我々の提案するネットワーク解析法とストロガッツらのネットワーク理論から導かれるマクロなネットワーク特徴量との比較も行う必要があると考えている.さらに非形相関として相互情報量の導入も視野に入れつつ文献調査も進める.
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Causes of Carryover |
本年度予定していた年度末のデータ整理等の業務に対する謝金の支出,ならびに成果報告,研究調査を予定していた研究会,学会等が新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から全て中止になってしまったことが,次年度使用額が生じた理由である.次年度はこの新型コロナウィルスの影響が今後どの程度社会的影響を与えるかが不明であるため,使用計画を立てるのが難しいが,学会などがオンラインとなる可能性が高いため旅費を減額し,計算機資源や資料の調達費を増額する予定である.
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Research Products
(8 results)