2019 Fiscal Year Research-status Report
ランダム媒質中の電磁波伝搬における交差偏波成分算定法の開発
Project/Area Number |
18K04187
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Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
南部 幸久 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (00228115)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不規則媒質 / 偏波特性の劣化 / 電波伝搬 / 多重散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,不規則媒質(ランダム媒質)中を通過した電磁波の主偏波成分が僅かに減衰する現象(depolarization)の量的な評価方法の構築と実験による測定法の模索を課題として研究に取り組んでいる。この主偏波成分の減衰量は非常に小さな量であるため,一般に通信の分野ではこれを無視して差し支えないが、この減衰量を定量的に評価できれば,ランダム媒質の電気的特性(実効的な電気的定数)が得られ,リモートセンシングや気象の測定精度向上に寄与できる。平成30年度は,ランダム媒質を通過した電磁波の主偏波成分の減少と同時に生じる交差偏波成分の理論解析を行い,ランダム媒質中で前方多重散乱を繰り返しながら伝搬する電磁波が解となる積分方程式及びダイアディック・グリーン関数の導出を行った。そして,この積分方程式に摂動法を適用し,第ゼロ次摂動解(主偏波成分)と第一次摂動解(交差偏波成分)の表現式を解析的に求めた。得られた表現式(解析解)から、ランダム媒質中の伝搬過程で生じた交差偏波成分の一次モーメント(コヒーレント界)と二次モーメント(電力に相当)を求めた。令和元年度は,これらの解析解を特定の条件の下に数値計算する予定であったが,研究を進めるためには,二次モーメントの解析解の中の波源となる強制項の近似解が必要となり,今年度はこの近似解の解析に取り組んだ。複雑な計算を要する解析であったが,結果的に近似解の導出に成功し,その成果を国際会議PIERS(中国:厦門市)で報告した。次年度は,適切なランダム媒質の数理モデルを設定し,数値計算により,主偏波成分と交差偏波成分の間の量的なシフトのメカニズムを調査する予定である。更に,今年度に実施した計測に使用するアンテナの調査結果から,VHF及びUHF帯の放送電波を利用して,主偏波特性と交差偏波成分の計測結果を得られ,かつ,量的な評価が行えるように検討を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で用いる積分方程式と強制項の理論解析において,想定以上に手作業での丁寧な計算処理が必要で,時間を要してしまい,時間的な遅れが生じた。今年度は,適切なモデルを設定して数値計算に進み,遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に研究成果として得られたランダム媒質中の伝搬過程で生じる交差偏波成分の一次モーメント(コヒーレント界)と二次モーメント(電力に相当)の解析解に加え,令和元年度に得られた二次モーメントの解析解の中の波源となる強制項の近似解に対して,適切な条件の下に解析モデルを定め,数値計算を行い,交差偏波成分の主偏波成分に対する量的な評価を試みる。併せて,主偏波成分と交差偏波成分の間の量的なシフトのメカニズムを調査する。更にVHF及びUHF帯の放送電波を利用して,偏波特性の劣化を交差偏波成分の計測から定量的に評価する方法についても検討する。具体的には,福岡タワー(福岡市)から送信されたFMラジオ放送(VHF帯)または地デジ放送電波(UHF帯)を、約80km離れた有明高専の屋上(大牟田市)で,今年度調査した組合わせ線状アンテナの使用を試み,水平偏波及び垂直偏波を受信する実験を行う予定である。利用する放送電波は,通常は直進性が強く、送受信点が見通し距離内に存在しなければ受信できないが、伝搬路上である佐賀県の背振山地など,急な天候変化によって雨が降りやすい地域があり,この降雨空間や積乱雲をランダム媒質として捉え,異常屈折(異常伝搬、ダクト伝搬)による電波を受信・計測し,ランダム媒質の影響で生じる交差偏波成分の検出を試みる。
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Causes of Carryover |
平成30年度及び令和元年度は,理論解析を中心に研究を行ったので,数値計算用のPCを使用するところまで研究が進まなかった。PCは使用する直前の段階で購入しない と,性能やOS等が古くなることに加えて価格面で不利となるので,翌年度以降の購入となった。結果として,次年度使用額が生じることとなった。よって,翌年度以降は数値計算を行うことから,翌年度分として請求した助成金と合わせて,数値解散用のPCその他の研究用物品を購入する計画である。
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Research Products
(2 results)