2018 Fiscal Year Research-status Report
Accurate Measurements of Thermodynamic Temperature using Acoustic Gas Thermometer based on Different Monoatomic Gases
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18K04189
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
Widiatmo Januari 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (30371024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 享 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (20357643)
三澤 哲郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (40635819)
斉藤 郁彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (50710620)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱力学温度測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、音響気体温度計(AGT)システムを開発して、温度Tおよび圧力Pが極めて安定化された球共鳴器に充填した単原子分子気体中に音響共鳴および電磁波共振を発生させ、そのときの音響共鳴周波数f(T)および電磁波共振周波数fσ(T)を測定することによって熱力学温度Tを決定する。一方、同球共鳴器に設置し、国際温度目盛ITS-90に基づいて校正された標準白金抵抗温度計を用いT90を測定するによって、熱力学温度と国際温度目盛の差(T-T90)を導出する。2018年度は、以下の技術開発および測定を行った。 AGTにおいて、高精度に熱力学温度を決定するためには、1Lという大型の共鳴器の温度の均一性を確保する必要がある。既存のAGTでは、音響共鳴周波数の測定に使用したマイクロホンのプリアンプの発熱が、共鳴器の温度安定性に1 mKを超える影響を与えており、熱力学温度値の測定不確かさを大きくしていた。本研究では、球共鳴器の設置方法を改良することで、このプリアンプからの発熱の影響を1 mKを下まわるまでに抑制することに成功した。また、この改良を加えたシステムにより、熱力学温度と国際温度目盛の差(T-T90)をガリウムの融解点(29℃)で測定し、その結果を国際学会で発表した [1]。また、AGTでの測定に用いる温度計を、ガリウムの融解点において、異なる測定システムを用いて校正し、システムに依存せず、校正結果が一致していることを確認することで、国際温度目盛の信頼性を向上するとともに、その結果を国際学会で発表した [2]。 これまで開発してきた共鳴器は、アルゴンのみによる測定システムであったが、アルゴンに加え、ネオンやヘリウムという異種の単原子分子気体を互いに汚染することなく、別々に導入することを可能とするように、共鳴器を改良すると共に、専用のガスハンドリングシステムの開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要に対し、以下の技術開発および測定を行った。 これまで開発してきた球形の共鳴器(QSR)は、水平円周方向からの三点固定の設計であった。本年度は、マイクロホンの発熱が外部に逃げやすい構造にするため、QSRを下部で固定するように改良を加えた。その結果、マイクロホンのプリアンプの発熱の影響を抑制することに成功し、QSR温度の均一性を1.5 mK以内から0.8 mK以内に低減することに成功した。AGTをアルゴンとは異なる単原子分子気体であるネオンを用いて測定が可能になるように、ネオンガス専用のガスハンドリングシステムを設計・製作した。 AGTにおいて、QSR温度の均一性が、熱力学温度測定に大きな測定不確かさをもたらす。温度の均一性はQSRの数ヶ所に設置したキャプセル型標準白金抵抗温度計(CSPRT)によって確認する。信頼性の高い測定には、不確かさの小さいCSPRTの校正が重要であり、QSRに設置するCSPRTを水銀の三重点(-40℃)、水の三重点(0.01℃)およびガリウムの融解点(29℃)で国家標準を用いて校正した。特にガリウムに関しては、異なる測定システムで校正を行い、システムの違いに関係なく校正結果が一致している結果を得ることで、その信頼性を確認した。また、熱力学温度の測定を、より高温域まで可能にすることを目的に、本年度ではインジウムの凝固点(150℃)まで使用可能なCSPRTを準備し、インジウムの凝固点での校正を行うための、校正システムの改良のための設計に着手した。 上記改良型QSRを用いて、水の三重点とガリウムの融解点において、熱力学温度の測定を行った。得られた結果から(T-T90)を導出し、既存の測定値と1 mK以内で一致していることを確認した。本成果を国際学会で発表するとともに、現在、水の三重点とガリウムの融解点の間の温度において、測定を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
【ガスハンドリングシステムの開発】2018年度で設計・製作したネオンガス専用のガスハンドリングシステムに、圧力計・流量計・ガスフィルターの設置し、流量ラインを真空ベーキングで水分等を除去し高純度化を行う。これに続き、AGTにより高精度に熱力学温度を測定するために、圧力制御や流量制御を調整し、それら制御の最適化を行う。 【キャプセル型標準白金抵抗温度計の校正】熱力学温度の広範囲の測定のために、使用のCSPRTをインジウムの凝固点(150℃)で校正する。その校正に必要なジグおよび改良型の校正システムを新規開発する。 【共鳴器の調整・テスト】音響気体温度計の共鳴器に150 ℃までの温度域で校正をしたCSPRTを設置し、温度測定、圧力測定、音響測定および電磁波測定関連の機器調整・テスト等を行い、性能を確認する。共鳴器を温度・圧力が可変可能な環境に使用するために専用の容器(圧力容器という)に設置して、機器調整・テストを通じて共鳴器の健全性を確認する。 【ネオンガスによるテストおよび初期測定】共鳴器が入った圧力容器を温度の安定化に使用する恒温槽に設置し、ガスハンドリングシステムと連結して、水の三重点(0.01℃)でのネオンガスによるテストおよび初期測定を行う。その後、ガリウムの融解点(29℃)までの熱力学温度の測定に着手するとともに、さらなる測定温度範囲の拡張を目指す。
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Causes of Carryover |
理由:消耗品は予定より低価格であった。 使用計画:2019年度の請求予算と合わせて、消耗品の購入に使用する。
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