2018 Fiscal Year Research-status Report
準ハンケル作用素を取巻く作用素とそれらのノルム解析を介した制御系性能評価への挑戦
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18K04198
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萩原 朋道 京都大学, 工学研究科, 教授 (70189463)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハンケルノルム / サンプル値系 / 周期時変系 / 準ハンケルノルム / L_∞/L_2誘導ノルム |
Outline of Annual Research Achievements |
動的システムの本質は,その入出力関係が静的ではなく動特性をもつということである.言い換えれば,各時刻における出力は,その時刻における入力のみによっては定まらず,過去の入力の影響も受けるものとなる.つまり,過去の入力が未来の出力に影響を及ぼすものとなる.動的システムを扱う制御系の研究においては,このような過去の入力から未来の出力への影響の大きさを定量的に評価することが重要となる.従来,そのような定量的な評価値はハンケルノルムと呼ばれ,線形時不変系を中心に研究されてきた. ところが,近年のディジタル機器を利用した制御のもとでは,ディジタル機器の周期的動作に伴い,制御系は時不変系としては記述されず,周期時変系と見なすことが妥当なものとなる.そのような視点において,従来のハンケルノルムの考え方を適切に拡張することが重要となる.本研究は,そのような視点に沿ったものであり,過去と未来の境目を制御系の一周期の中の任意の一点として選んだときの定量的評価として,準ハンケルノルムと呼ぶものを導入することが鍵を握るものとなっている.その上で,その境目を一周期のうちでどの位置に選んだときに準ハンケルノルムが最悪値を与えるのかという基本的な問題を中心として,本年度は研究を行った. とくに,そのような問題の中でも比較的扱いが容易であると考えた問題,すなわち,入力のノルムは L_2 ノルムで測り,出力のノルムは L_∞ ノルムで考えた場合について,従来,時不変系の場合も含めて研究がなされてきた L_∞/L_2 誘導ノルムの問題と密接な関係にあることを明らかにし,準ハンケルノルムの最悪値については,L_∞/L_2 誘導ノルムの計算で利用されるある関数を通して求められること,さらには,その関数の特徴から,最悪の準ハンケルノルムを与える最悪の境目に関する情報が得られる場合もあることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要として述べた通り,入力のノルムは L_2 ノルムで測り,出力のノルムは L_∞ ノルムで測るという状況下において,過去と未来の境目を固定した場合の過去の入力から未来の出力への影響度,すなわち,準ハンケルノルムについて中心的に検討を行った.この状況ではまず,「現在から未来にわたる入力が現在から未来にわたる出力に及ぼす影響を定量的に評価した L_∞/L_2 誘導ノルムが,本研究で扱う準ハンケルノルムにおいて,過去と未来の境目を一サンプリング周期の間で最悪なものを選んだときの最悪値に一致する」ということを示した.この基本的成果は非常に重要であり,そこからさらにさまざまな結果を導くことができると考えている. まず,前者の L_∞/L_2 誘導ノルム に関しては,既存の研究から,その値を求める方法が知られており,それは,一周期上で定義されたある具体的に計算可能な関数の最悪値として求めるというものである.この値は,すでに述べたことから,過去と未来の境目を変化させたときの準ハンケルノルムの最悪値(これをハンケルノルムと呼ぶ)に一致することは明らかであるが,この関数を扱うことには,単にハンケルノルムの値を計算すること以上の意味があることを明らかにした.具体的には,この関数が最大値をとるときの独立変数の値から,準ハンケルノルムが最悪値をとる(したがってハンケルノルムの値と一致する)ときの過去と未来の境目の値に関する情報も得られうることが明らかになった. 上記の対応関係は,準ハンケルノルムおよびその最悪値を達成するときの過去と未来の境目に関する完全な情報を与えるものとは考えていないが,さらなる検討を通して,より詳細な情報を得ることができる見通しが立ちつつあり,引き続きその検討を続けていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況において記した通り,サンプル値系において,入力のノルムを L_2 ノルムで測り,出力のノルムを L_∞ ノルムで測る状況において,準ハンケルノルムおよびその最悪値を達成するときの過去と未来の境目に関するより詳細な情報を与える成果を得られる可能性が高いと考えており,まずこの点について研究の進捗を図る. 一方,連続時間の周期時変系も,入出力関係が周期性をもつという意味において,サンプル値系と同様の扱いが可能であると考えられる.ただし,サンプラやホールド回路を有するサンプル値系とは異なることから,サンプル値系に関する扱いがどの程度同様に連続時間周期時変系に対しても発展させられ,どのような扱いについてはより難しくなるのか,また,その難しさは本質的に避けがたいのかどうか,といったことについても検討を進める予定である. また,入力のノルムを L_2 ノルムで測り,出力のノルムを L_∞ ノルムで測る視点は,既存の膨大な研究でよく知られている H_2 ノルムに関する研究と密接な関係をもつことがわかっており,準ハンケルノルムを通して,サンプル値系や連続時間周期時変系に対する新たな H_2 ノルムを定義し,その性質について論じることも可能であると考えている. さらに,出力のノルムも入力と同様に L_2 ノルムで測るという視点は,ハンケルノルムに関する既存の研究ではより一般的であり,そのような状況に関して,まずはサンプル値系を対象として検討を進める予定である.
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Causes of Carryover |
2018年12月に国際会議への参加を予定していたが,諸事情によりその国際会議への参加を取りやめた.その後,年度末で多忙が続き,未使用となった当該国際会議参加費ならびに旅費の相当額をすべて使用するには至らなかった.2019年度の国際会議参加等に充てる予定.
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Research Products
(2 results)