2019 Fiscal Year Research-status Report
不安定系に対する出力誤差型閉ループ部分空間同定法の誤差分散解析
Project/Area Number |
18K04217
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
奥 宏史 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (20351455)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | システム同定 / 閉ループ系 / 不安定系 / 誤差解析 / 部分空間法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では以下の二つの課題について取り組んでいる.1)MOESP 型閉ループ部分空間同定法(CL-MOESP)の適用に関して,従来の「同定対象は安定」という仮定を緩和し,適用可能な不安定な系のクラスを明らかにする.2)CL-MOESPの推定値の一致性および誤差分散解析により,同手法の同定精度について定量的な評価を与える. 令和元年度は,同定対象を含む閉ループ系を定数ゲインフィードバックにより安定化された閉ループ系に問題を限定してCL-MOESP 法の誤差解析に取り組んだ.CL-MOESPの手順におけるデータハンケル行列のQR分解は,膨大なデータ空間から同定対象の特徴を抽出する重要な手順である.2)について,そのQR 分解から得られる三角行列の誤差解析を行った.とくに三角行列の行列要素のうち同定対象の係数行列の推定に利用される要素に着目し,それらの信号成分と雑音成分それぞれのデータハンケル行列による表現を導出した.研究成果として,それら信号成分と雑音成分それぞれの漸近的性質を明らかにした.詳細には次の三つの結果を得た,一つ目は,信号成分が同定対象の係数行列から構成されるある定数行列に確率収束することを示した.二つ目は雑音成分については0に確率収束することを示した.三つ目は,雑音成分の誤差分散を陽に導出した.1)については,2)の研究成果の導出過程において同定対象の安定性の仮定は必要ないことがわかり,CL-MOESPが不安定な同定対象にも適用可能であることが示された.以上の成果をまとめ,その一部を第7回 制御部門マルチシンポジウムにて発表した.また,国際会議にも投稿し採択されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題1)については定数ゲインフィードバック系に限定しての成果であるが解決した.一般のフィードバック系への拡張は比較的容易と考えられる.課題2)について,定数ゲインフィードバック系に限定しての成果であるが,CL-MOESPで主要な役割を果たすブロック行列の漸近的性質が解明された.これにより同定対象の拡大可観測性行列の推定値の漸近的性質の解析に概ね目処がついた.また一般の場合への拡張は複雑にはなるが困難ではないと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
このままの方針で研究を遂行する.具体的に,拡大か観測性行列の漸近的性質の解明,一般のフィードバック系への結果の拡張を行う.最終年度であるので,研究成果をまとめ,国内会議や国際会議で発表し,雑誌論文に投稿する.
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Causes of Carryover |
令和元年度に得られた研究成果を発表するために当該分野の国際会議に投稿したが、すべて令和2年度以降に開催予定の会議であるため、次年度使用額が生じた。令和2年度には、得られた研究成果について国際会議4件(1件採択、1件投稿中、2件投稿準備中)、国内会議2件の発表を予定している。また、国内学術雑誌に投稿する予定である。
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