2019 Fiscal Year Research-status Report
制御工学的手法を用いた心拍変動周波数解析の高速化と疲労度提示システムへの適用
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18K04219
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
沢口 義人 木更津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (50455119)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生体計測 / 心拍変動 / 不等間隔サンプリング / 状態空間フィルタ / 帯域パワー推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,心拍変動周波数解析を高速化し疲労度提示システムへの応用を図ることである.2019年度には,前年度に提案した心拍変動周波数解析法の適用に際して問題となった,心拍変動時系列の欠損への対処法を検討した.また,疲労度提示システムの実現に向けて,2種類の生体信号測定装置を試作した.以下,これらについて説明する. 前年度に提案した心拍変動周波数解析法では,心拍間隔が欠損なく取得できることを仮定していた.実測定で心拍の検出漏れがあった場合に特別な対処をしないと,真値と大きく異なる心拍間隔値となり,周波数解析に悪影響を及ぼすこととなる.また実環境での各種活動下の心拍測定では,電極の接触不良や機器間の通信障害などを原因として,数秒から数十秒の間,心拍間隔値が得られない状況が発生する様子が見受けられた.これらに対し,心拍変動時系列の統計的性質を用いて外れ値を除外するとともに,周波数解析の後処理となる帯域パワー算出において前年度に提案した不等間隔時系列に対する線形時不変フィルタを適用することで,データ欠損の悪影響を低減した.そしてこれらの欠損対処法を,研究協力者として参画している総務省消防防災科学技術推進制度採択課題「消防活動時の心肺負荷状態推定手法の高度化とプロトタイプ計測器の開発」に技術供与した. 並行して,スマートフォンを操作端末とするウェアラブル高強度身体運動記録器と,長期間の心拍変動記録のためのパッチ型装置を試作した.前者は加速度と角速度および地磁気の各3軸測定値をMicroSDカードに記録できるサイズ50mm×30mm×14mm,重さ19gの装置である.後者は心拍間隔の1週間程度の連続取得のためのサイズ34mm×20mm×10mm,重さ20gの装置である.これらの装置による疲労度推定には至らなかったが,次年度の疲労度提示システム製作に向けての技術的知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では2019年度の実施項目として,心拍間隔値のデータ欠損に対応する手法の検討と,心拍間隔値をスマートフォン等に送信できる市販の心電測定装置(POLAR社 H10 心拍センサー)から得た測定値に対して提案アルゴリズムを適用するプログラムのスマートフォン上への実装を挙げた.このうちデータ欠損への対応手法は,前述のように一定の成果を得た.またプログラム実装については,研究協力者として参画している総務省消防防災科学技術推進制度の採択課題「消防活動時の心肺負荷状態推定手法の高度化とプロトタイプ計測器の開発」において,研究協力者である企業の技術者によるプログラム開発がなされた.この一方で,この研究協力企業の意向を受けて,積極的な外部発表を差し控えることとなった.さらに年度末に感染拡大が起きた新型コロナウイルス感染症の影響により,複数人を対象としたスマートフォンプログラムの実証試験が年度内に未実施となった.以上より,やや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2020年度には,指輪型ないし腕時計型のウェアラブル装置を試作して提案アルゴリズムを実装し,着用者へ疲労度指標を提示するシステムを構築する.この際,心拍間隔値は自作の心電測定装置または POLAR 社 H10 心拍センサーから得るものとする.そして主に研究代表者を対象とする開発システムの実証試験により,提案アルゴリズムの有効性や生体情報提示の有用性などの知見を得る.新型コロナウイルス感染症の動向によっては,研究代表者所属機関の学生を中心として複数人数を対象とした開発システムの実証試験を実施し,個人差への対処法などを検討して,開発システムのさらなる改善を図る.併せて,2019年度に差し控えた国際学会での発表や学術論文の投稿を実施する.
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Causes of Carryover |
共同研究者として参画している研究課題が総務省消防庁「消防防災科学技術研究推進制度」に採択され,当該年度にも助成を受けた.この助成により,スマートフォンや心電測定装置,生体計測装置材料などを多数導入したため,本補助事業では物品費を執行しないこととした.また,新型コロナウイルス感染症の発生により,年度末に予定していた資料収集等のための旅費の執行も取り止めとなった. この一方で,疲労度と密接な関係を有する酸素摂取量等を実測できるウェアラブル呼気ガス分析装置が,2019年に国内でも入手可能となった.この装置の導入により,本補助事業のさらなる進展が見込めるため,当該年度助成金を次年度使用し,次年度分の助成金と合算してこの装置を導入することとした. 以上の理由により次年度使用が生じた.上述のウェアラブル呼気ガス分析装置を導入するとともに,学会発表や論文投稿に向けた謝金や旅費,論文投稿料として活用したい.
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Research Products
(3 results)