2018 Fiscal Year Research-status Report
表面終端が変えるシリコンナノ結晶―多様なデバイス形成に対応するために―
Project/Area Number |
18K04242
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐藤 井一 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (90326299)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シリコンナノコロイド / ゲルマニウムナノコロイド / 有機単分子層 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は主に、ヒドロキシ基やチオール基をもつ有機分子で終端されたシリコン(Si)ナノ粒子をメタノール内で作製し、それらの構造と熱的安定性を電子顕微鏡観察、熱分析、光学特性により評価した。また、同じIV属半導体であるゲルマニウム(Ge)を用いて、同様の表面終端のナノ粒子の作製を試み、両者を比較した。得られた実験結果は学会で発表した。 表面終端のための有機分子は、メタノール内での酸解離定数(pKa)が6~16の範囲のものを選んだ。その結果、pKaがおよそ8~12の範囲の有機分子がSiナノ粒子表面を安定に終端することがわかった。具体的には、酒石酸やクエン酸、乳酸、コハク酸、チオリンゴ酸、フルオレセインなどで安定な表面終端を確認した。pKaがおよそ12以上の有機分子の場合、再現性良くSiナノ粒子を表面終端することが難しくなった。赤外吸収測定の結果、pKaがおよそ14以上の有機分子は、Siナノ粒子表面に固定されずに、Si原子と結合した状態で溶液内に分散していることがわかった。これは、表面Si原子をちぎって再び溶液内に溶け出してしまったことを意味している。一方で、pKaがおよそ8以下の有機分子(例えばグルタチオンやヒスチジン、シスチンなど)にはSi原子との結合が確認されなかった。これは、表面Si原子と有機分子との結合が弱すぎて安定に終端しなかったためと考えられる。 今年度の研究で、表面Si原子を安定に終端する有機分子と、表面Si原子をちぎろうとする有機分子があり、その違いはメタノール内の有機分子のpKa値で予測可能であることが示された。これは、有機分子のpKa値が、表面Siにどの程度の歪みを与える終端となるかを示す目安となり得ることを意味している。従来は表面終端用の有機分子の選択を試行錯誤で進めてきたが、今後はこれを系統立てておこなえるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Siナノ粒子およびGeナノ粒子の表面を様々なカルボン酸やアルコールで終端するための実験条件がほぼ明らかになった。メタノール内での酸解離定数(pKa)がおよそ12~14の有機分子でSiナノ粒子を表面終端しようとすると、粒子の表面Si原子を歪ませる可能性が高く、pKaがおよそ8~12の有機分子は粒子表面の原子をあまり歪ませないと考えられた。Geナノ粒子に関しては、pKaがおよそ12以上の有機分子がGe表面原子を安定に終端することがわかった。表面Ge原子を歪ませる有機分子のpKa値は現在のところ明らかにできていない。 Siコアサイズは、ボールミル粉砕後の遠心分離過程における遠心条件を変化させることで、平均直径6 ~ 50 nmの範囲で変化可能であった。Geナノ粒子に関しては、3 ~ 40 nmの範囲となった。 チオリンゴ酸で終端したSiおよびGeナノ粒子は、250~300℃の熱処理で表面の有機分子が昇華し、ほぼ硫黄のみによる終端となることが、熱分析と赤外吸収測定、X線光電子分光測定により示された。このナノ粒子堆積膜は電気伝導性に優れており、デバイス応用に向いていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な有機分子で終端されたSiおよびGeナノ粒子の結晶性評価と、それらのナノ粒子膜の電気的・光学的評価をおこなう。 ナノ粒子の評価では、表面終端に使用する有機分子の酸解離定数(pKa)をさらに細かく変えて、Siナノ粒子およびGeナノ粒子の表面原子の歪みの変化を系統立てて調べる。そして、結晶構造の変化が起こる有機分子終端を明らかにしていく。 ナノ粒子堆積膜の評価は、主にチオリンゴ酸とオクタノールなどのアルコールで終端したSiナノ粒子とGeナノ粒子の堆積膜についておこなう。チオリンゴ酸終端ナノ粒子膜については、膜の電気伝導性、および金属電極とのショットキー障壁の評価をおこなう。そして、ガスセンサーへの応用を念頭に、様々な酸化性ガスと還元性ガス雰囲気下での電気伝導性変化を調べる。アルコキシ終端SiあるいはGeナノ粒子膜については、光伝導性、光起電力、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンスの評価をおこなう。 研究協力者の大学院生が平成30年度で卒業したため、平成31年度からは新たな学生に研究協力者として参加してもらい、上記研究を効率的に進める。
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Causes of Carryover |
(理由)当初の計画では、走査型電子顕微鏡(SEM)の油回転真空ポンプを新しく交換する予定であった。しかし、そのSEMに搭載されているエネルギー分散型X線分析(EDX)の制御用コンピューターの調子が非常に悪くなり、このコンピューターの修理の方が真空ポンプの交換よりも重要度の高いものとなった。コンピューターの修理が平成31年4月となったため、その費用を次年度に繰り越すことにした。 (使用計画)次年度使用額は、上記のEDX制御用コンピューターの修理費に充てる。
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Research Products
(4 results)