2019 Fiscal Year Research-status Report
Control of the energy distribution of trap levels in the charge trapping films
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18K04244
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小林 清輝 東海大学, 工学部, 教授 (90408005)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シリコン窒化膜 / 電荷トラップ / 電子保持特性 / 常磁性欠陥 / 点欠陥 / 欠陥準位 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、シリコン窒化膜を構成する元素の一つであるSiに比べ、電気陰性度が低い4族元素であるHfをシリコン窒化膜に添加し、その膜を用いて作製したメモリキャパシタの電子保持特性を調べた。その結果、Hfを添加した窒化膜を有するメモリキャパシタでは電子保持特性が低下した。また、β-Si3N4結晶を構成するSiをHfに置き換えた系の第一原理計算において、Si3N4の伝導帯下端の直下に浅い準位が生成するという結果が得られ、Hf添加試料の電子保持特性の低下に対しこの浅い準位が関与している可能性が示唆された。そこで今年度は、窒化膜に深い準位を形成できる元素を探索するために、β-Si3N4結晶のSiを、電気陰性度がSiに比べて低い5種類の元素(Mg, Ti, V, Mn、Al)に置き換えた系について第一原理計算を行い、生成する欠陥準位について調べた。また、β-Si3N4結晶のNを電気陰性度が高いCl, Fに置き換えた系についても計算を行った。その結果、Mnを添加したSi3N4結晶において、電子に対する深い欠陥準位が生成することが見出された。一方、他の金属元素を添加した系では所望の欠陥準位は得られなかった。Cl, Fを添加した系では浅い準位が現れた。 次に、シリコン基板上のシリコン窒化膜-トンネル酸化膜二層絶縁膜の窒化膜に対し、3×1013 cm-2の密度でMnイオンを注入し、窒素雰囲気で750度の熱処理を加えた。その後、アルミニウムゲート電極を設けることでMn添加窒化膜を有するメモリキャパシタを作製した。その試料の室温における電子保持特性を調べたところ、比較的高いゲート電圧で長時間の電子注入を行った条件では、電子保持特性が良好であった。現在、Mn注入条件の最適化を図ったメモリキャパシタを作製中であり、試料作製後に電子保持特性向上についての検証を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一原理計算を用いて、β-Si3N4結晶に深い電子捕獲準位をつくることができる添加元素の探索を行い、Mnを添加したSi3N4結晶に深い準位が生成するという計算結果が得られた。これを受けて、シリコン窒化膜-トンネル酸化膜二層絶縁膜の窒化膜中にMnイオンを注入し、メモリキャパシタを作製した。その試料作製に当たって、Mnイオンがゲート電極-シリコン窒化膜界面近傍の窒化膜中に分布する注入条件を選択した。この試料の室温における電子保持特性を調べたところ、比較的高いゲート電圧(19 V)で長時間の電子注入を行った条件では、良好な電子保持特性が確認できた。 次に、メモリデバイスの一般的な動作条件でMn添加の効果を確認するために、シリコン窒化膜-トンネル酸化膜界面近傍の窒化膜中にMnイオンが主として分布するイオン注入条件を選び、新たな試料の作製を開始した。しかし、シリコン窒化膜-トンネル酸化膜二層絶縁膜の形成と窒化膜へのMnイオン注入まで完了したが、Covid-19の影響によってその後のプロセスを実施できておらず、試料作製が中断している。同様に、電子スピン共鳴法によってMn添加窒化膜に生成する点欠陥の性質の解明を進めていたが、これについても実験がやや遅れている。 加えて、上述の第一原理計算を用いた研究成果について投稿した国際学会(International Conference on Nano Research and Development)が延期となり、Mn添加窒化膜を用いた試料の電子保持特性に関する成果も投稿予定の学会が中止または延期となり、成果発表および研究者間のディスカッションが滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
シリコン窒化膜-トンネル酸化膜界面近傍の窒化膜中にMnイオンを注入する条件を採用した新たなメモリキャパシタの作製を完了させる。キャパシタ試料の作製が完了した後、電子と正孔の捕獲特性と保持特性を測定する。電子保持については高温(125~250度)での特性も測定し、電子捕獲準位のエネルギー分布についても調べる予定である。 また昨年度、電子スピン共鳴法によってHf添加窒化膜における常磁性欠陥生成を確認した。同様の方法を用いて、Mn添加窒化膜に生成する点欠陥の性質について調べており、その解明を進める。 最後に、これらの結果を整理して、研究のまとめを行う。
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Causes of Carryover |
消耗品の価格変動により余った。2020年度に学会発表を行う際に使用する。
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