2018 Fiscal Year Research-status Report
高効率な海水中ワイヤレス電力伝送を実現する電気二重層結合器の研究
| Project/Area Number |
18K04262
|
|---|
| Research Institution | Toyohashi University of Technology |
|---|
Principal Investigator |
田村 昌也 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50736410)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 水中無線電力伝送 / 無線電力伝送 / 電界結合 / 海水 / 電気二重層 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
電界方式ワイヤレス電力伝送はシンプルな結合器からなり、システムの軽量化に適しているため主に移動体への給電技術として研究が進められているが、海水中に適用した場合、その高い導電率のため海水のQ値が低く高効率化が困難である。そこで、本研究は海水中での電界方式ワイヤレス電力伝送の実現を目的とし、平成３０年度は伝送効率向上のキーとなる海水のQ値を電気二重層効果によって向上できるかという問いの解決を図った。具体的には、円形の銅電極とアクリルの筐体からなる測定セルにおいて、銅電極間距離を一定にして電極半径を変えた場合と、銅電極半径を一定にして電極間距離を変えた場合のセルを作製し、海水を充填したときのアドミタンスを測定した。次に空気を充填した場合と純水を充填した場合から得られるアドミタンスを用いてセル定数と寄生容量を算出して海水の結果からディエンベディングすることで海水の複素誘電率を導出し、電気二重層の発生とQ値の変化を調べた。結果、RF帯でも複素誘電率の実部が大きく向上することが確認され、電気二重層が形成されていることを明らかにした。同時に複素誘電率の虚部も大きく増加したが、複素誘電率の実部の増加量の方が大きく、海水のQ値向上が確認された。また、実験結果から面積に対してQ値は対数関数的に向上することを見出した。一方で電極間距離に対しては、Q値は二次関数的に減少することを発見した。この結果をもとに結合器のプロトタイプ作製と測定を行い、理論最大伝送効率を算出したところ、電気二重層効果を考慮していないシミュレーションから得た理論最大伝送効率よりも大幅に改善することが明らかとなった。そこで、測定セルで得られた結果から電磁界解析に用いる材料パラメータを作成し、電磁界解析にて結合器の設計に取り掛かっている。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成３０年度に実施を予定していた研究はすべて計画通り進み、少なくとも海水のQ値は電気二重層効果により30倍以上向上することを発見した。本結果をもとに査読付き学術論文としてIEEE transaction on Microwave Theory and Techniques １件、マイクロ波の分野で最も権威ある国際会議の１つである査読付き国際会議論文IEEE Int. Microwave Symp. １件という大きな成果を得た。次年度から行う送受電器設計における基礎データも取得できたことから、本年度の目標を概ね達成したと判断できる。
|
| Strategy for Future Research Activity |
電気二重層によってQ値を大幅に向上できることを明らかした。これにより海水中での電界方式結合器の等価回路を明らかにできることから、まず等価回路解析から結合器のどのような電気的効果により効率が低下・向上するのかという物理的意味と、その電気的効果は構造的にどこをどのように改良することで制御できるのかを明らかにしていく。
|
| Causes of Carryover |
採録が決定した国際会議論文IEEE Int. Microwave Symp.１件の発表が平成31年度になったため、当該発表の旅費に一部充てるための次年度使用額が生じた。
|
