2018 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of static / dynamic smart window by using silver nano-structure for optical devices
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18K04269
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
内田 孝幸 東京工芸大学, 工学部, 教授 (80203537)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 銀ナノイオン / プラズモン / フェルミ準位 / 電子エネルギー / エネルギー準位 / 逆バイアス / ゼラチン / メッシュグリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
銀ナノイオンを用いて、必要に応じて動的ならびに静的な変化ができるようなデバイスの構築を目的として研究を進めた。具体的には透明状態から鏡状態にする場合、バイアス電圧を-2.5V程度印加させ、強制的に還元し導電性膜付きガラス(ITOガラス)に電着する場合、応答性は数秒である。他方、この鏡状態から透明の状態に戻す場合は、溶液中への濃度勾配による自発的な溶解(イオン化)に基づいているため、その応答性は数分と遅い。 この問題を、改善するため鏡状態から透明の状態へ引き戻す場合に逆バイアスを印加する方法を検討した。しかし、この素子は通常の状態が透明であり、両電極ともに透明電極を用いる。このため、逆バイアスを印加すると片方の面に在った銀が対極に移動してしまうため、一度はイオン化するが透明に保持することが出来ない。そこで、対向する透明電極の間にメッシュ状のグリッド電極を設けることで、逆バイアス時には、このメッシュ電極のワイヤ部分に銀を捕集し、デバイスの応答性の向上を提案した。これらの結果をまとめ、学会発表(画像関連学会連合会、第5回秋季大会)にて、口頭発表を行った。 また、銀イオンと電極の間の電子レベルの状態について基本的な検討を行なった。銀ナノ構造の酸化はそれらのフェルミ準位がそれらの周囲のものより低いとき安定であるという以前の論文の指針原理の下でそれらの劣化のための重要なステップとして検討した。 薄い銀層のフェルミ準位の低下は銀塩写真で用いられてきたヨウ化銀の単層を含む特定の有機化合物の自己組織化単層(SAM)の形成によって引き起こされ、そしてその正の誘電体層の形成に起因することを示した。個々の素子において上記の指針を実現するために必要とされるさらなる検討について考察を行った。これらの知見を「フェルミ準位を調整することによるAgナノ構造の安定化」という題目でJJAPに掲載に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までで、理論ではフェルミ準位に関する銀の安定化の検討と知見をJJAPにまた、デバイスではグリッドメッシュ電極によるバイアス電圧の印加などが試作され検証された。今年度はこの知見に立って、銀ナノ構造体を用いた動的/静的スマートウィンドウの構築の基礎的なデバイス設計に進めるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討では、主に、アクティブ動作の観点から逆バイアス印加による応答性について検討した。一方、バイアス電圧を印加せずとも、銀イオンを保持できる溶媒やマトリックスの検討がスタティックな状態保持の観点から検討が期待される。銀イオンを固定し長期間に渡って安定に保持するバインダー・マトリックスとしてゼラチンは銀塩写真の歴史が示すように、確固たる実績がある。今後の検討では、この銀のナノ粒子の安定化においてこれらの材料が見直されている。光デバイス用銀ナノ構造体を用いた動的/静的スマートウィンドウの構築という、アクティブ・スタティックの相反する特性を両立すべく、これらの材料を用いながら、特性向上の検討を行う。
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Causes of Carryover |
前年度は、銀の安定性とフェルミ準位の関係について主に検討を行ったため、理論的な内容になった。このため、当初予定したよりも実験材料や機器への支出が少なくなった。今年度は、前年度の知見をすでに物理系の論文誌であるJJAPにも掲載出来たため、この指針を元に銀を用いたデバイスの具現化を図り、さらにそれらを発表・論文にするための予算計画とする。
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