2019 Fiscal Year Research-status Report
圧電MEMSエネルギ変換デバイス高性能化のための強誘電体不揮発応力メカニズム制御
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18K04283
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 馨 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (40263230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 実 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (20294168)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 圧電体 / 共振 / 応力 / 周波数制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
振動型圧電MEMSデバイスにおいて,動的に共振周波数可変な機構を導入し飛躍的な高感度化を図る。前年度に得た,電圧印加による共振挙動の変化が構造起因の領域と応力起因の領域に別れるという知見を元に,共振挙動を実測面で詳細に追究するとともに,エネルギー法に基づく理論的な考察を開始した。 実測面では,これまで圧電変換出力に寄与するダイアフラム中心部分での振動だけに着目し,中心対称モードのみを取り上げていたところ,今年度はダイアフラム内の全ての測定点での振動を取り上げ,ダイアフラム全体としての振動を把握した。今回は基本的な振動モードに注力するため,電圧印加を行わない状態で撓み量の異なるサンプル間での評価を行なった。全測定点での振動スペクトルを合成して評価することで,中心反対称モードを含む全モードの挙動を把握できることが分かった。全モードの挙動として捉えても,撓み量が小さい領域では中心反対称モードを含む多くのモードが生じるのに対し,撓み量8μm付近を境にして生じるモード数が減少し,また支配的に現れるモードが変化した。加えて,電極構造をこの支配的モードに合わせた形状へ修正することにより圧電変換素子としての変換能力を向上できる可能性が示唆された。 理論的考察においては,まず振動構造材料の残留応力から座屈撓み量を算出する静的解析に着手した。構造力学的な力の釣り合いからは,座屈形状を算出することはできるが面内力と座屈撓み量を定量的に結びつけることはできない。そこで,面内力の作用下でポテンシャルエネルギーを最小化する条件から撓み量の絶対値を算出することを試みた。現在,素子構造と積層材料の残留応力から撓み量を定式化することを進めている。これは,同様の議論に運動エネルギーを含めることにより,座屈形状に対する固有振動数の算出にも応用できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に,中心対称の振動モードに着目して動的電圧印加による共振挙動と振動構造体形状の関係を明らかにする端緒を得たことを受け,今年度は全ての振動モードを対象としてより精密に振動構造体形状と共振挙動の関係を明らかにするとともに,理論面からのアプローチを開始した。これにより,当初の想定から進捗は若干遅れているものの,内容の深化がこれを補って余りあると考えており,トータルとして概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
全測定モードを対象とする評価方法をさらに推進する。現状では撓み量のバリエーションが少ないため,より広範囲かつ詳細な条件でのデータを得るためサンプル作製と評価を進める。さらに,この全測定モードを対象とした評価においても電圧印加による動的挙動の解明も進めたい。理論面のアプローチでは,まず静的座屈形状の定式化を進め,実サンプルとの整合性を検討する。その上で,運動エネルギーを考慮した動的挙動の解明へ向けても実測データのと比較を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
多数のサンプル作製を行う予定であったが,今年度から導入した全測定点を対象とする評価方法のため測定に要する時間が多く,十分なサンプルを作成することできなかった。次年度に,評価方法の迅速化を進めるとともに,測定系の改良とサンプル作製のために使用する予定である。
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Research Products
(5 results)