2019 Fiscal Year Research-status Report
高速物理暗号光通信のための多段変調素子構成による超多値光位相変調
Project/Area Number |
18K04290
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
谷澤 健 玉川大学, 量子情報科学研究所, 准教授 (10709489)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光ファイバ通信 / 暗号 / 位相変調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高速かつセキュアな光ファイバ通信のための物理暗号の実現を目指して、極めて多値に光の位相を変調するための新たに手法提案し、その動作を実験にて実証することを目的としている。提案する方式では、光位相変調素子を多段に(例えば2つ)接続し、粗い位相変調と密な位相変調を二段階で行うことで、従来方法では達成不可能な変調多値数を実現する。当初二年目の研究計画として、この提案方式にて極めて多値に位相変調をすることで10Gbit/s以上の物理暗号を発生させることを挙げた。初年度の検討が当初計画以上のスピードで進捗したことから、上記に加えてさらに物理暗号の大容量化を目指すことを二年目の課題とした。 本年度は、まず昨年度1ビット(2値)で行っていたデータ変調を2ビットにすることを試みた。これにより、同じ変調速度で2倍の容量の伝送が実現できる。QPSK(2ビット)データ変調後に、多段構成の位相変調を用いて分解能16ビットの(粗6ビットと密10ビットに設定)位相のランダム化を行い、位相多値数262,144(分解能18ビット)で信号を暗号化した。このときのビットレートは、24Gbit/sとなる。データ変調がBPSK(1ビット)の場合と比較して、位相多値数が2倍となることから光の受信時に不可避な量子雑音により覆われる隣接シンボル数が増える。この結果、暗号としてより高い秘匿効果を得られる。次に、偏波領域での暗号の多重化を行い、48Gbit/sの暗号通信を実証した。このとき400kmおよび800kmの光ファイバの伝送も行い、長距離伝送にも適用可能な暗号化であることを示した。 以上の研究成果を、光ファイバ通信分野の代表的な国際学会で発表したほか、米国光学会の論文誌にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画を大きく上回る進捗があり、当初二年目に計画していた実験の一部が完了していた。そこで、二年目である今年度は物理暗号としての大容量化を目指す新たな課題に挑戦した。提案する多段の光位相変調を、多値のデータ変調と偏波多重技術と組み合わせることで、物理暗号通信ビットレートを約4倍にすることに成功した。このように当初計画を大きく上回る進捗を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度(三年目)は、当初の計画に沿って、多段の光位相変調を光集積デバイスで実現するための基礎検討を進める。まず、光集積回路の構成を検討する。次に、光デバイスを設計するためのシミュレーション環境を構築し、性能評価のためのシミュレーションを実施する。
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Causes of Carryover |
今年度項目を追加した研究課題については昨年度構築した実験系を工夫して利用することにより実施できたため、差額が生じた。また、3月に米国で開催された国際学会での発表が急遽ビデオ参加になったため、旅費として計上していた予算分の差額が生じた。 これらの差額については、2020年度に計画していた光デバイスシミュレータの導入において、より精度の高い性能評価を実施する機能を追加するために用いる予定である。
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