2019 Fiscal Year Research-status Report
磁性ジョセフソン接合を用いた超伝導任意位相差素子の実現とその回路応用
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18K04291
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
赤池 宏之 大同大学, 工学部, 教授 (20273287)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 / 超伝導材料・素子 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者らがこれまで検討してきた巨視的波動関数の位相を制御する超伝導位相シフト技術の発展を目的として、磁性ジョセフソンπ接合を用いた任意の初期位相差を持つ任意位相素子の実現し、さらに、本素子の導入による単一磁束量子回路の性能向上を目指している。 令和1年度は、平成30年度の結果を受けて、任意位相素子について数値計算に基づく検討をさらに進めた。具体的には、前年度同様ジョセフソンπ接合及び通常のジョセフソン接合を含む2接合超伝導量子干渉素子(2接合SQUID)に加え、ジョセフソンπ接合を1個含む1接合SQUIDについて、回路素子パラメータを変更させて静特性および動特性を調査した。その結果、前者の2接合SQUIDは位相素子及びスイッチング素子の両方の機能を持つが、素子パラメータによりこのスイッチング特性が大きく変化することがわかった。一方、1接合SQUIDでは位相素子のみの機能になるものの、素子パラメータの調整により初期位相で0~0.8πまでを実現できることが分かった。また、本素子の回路応用として、単一磁束量子回路の一種である量子化磁束パラメトロン回路に適用することを検討し、回路動作に必要となる直流バイアスを大きく低減できることがわかった。一方、磁性ジョセフソン接合用磁性層についての基礎実験として、単体のNi薄膜に着目、成膜速度を変化させて作成し薄膜特性を室温及び77Kにて評価した。その結果、成膜速度が9 nm/min 以上では抵抗率は変化しないのに対し、5 nm/minにすると9 nm/minに比べ約3倍大きくなることがわかった。障壁層に用いる磁性層は膜厚を薄くする必要があり、高い制御性が要求される。そのため、成膜速度が小さいことが重要となるが、上記の結果から、成膜条件の知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1接合SQUIDあるいは2接合SQUIDから構成される任意位相素子の静特性及び動特性を明らかにすることができた。また、単一磁束量子回路の一つである量子化磁束パラメトロン回路への導入およびその効果についての知見が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
任意位相素子の単一磁束量子回路への応用の観点から、数値計算に基づく検討を行う。まずは、量子化磁束パラメトロン回路に着目して、任意位相素子の導入方法及び効果について、さらに検討を進める。一方、素子作製においては、磁性障壁層としてのNi層あるいはNi系材料を考え、素子作製プロセスの検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた会議発表のための旅費に関して学会がキャンセルになったこと、及び、その他効率的に使用することができたため残額が生じた。この分は、次年度の計画のために使用する予定である。使用計画として、真空部品、デバイス作製用プロセスガス、基板材料、化学薬品、フォトマスクなど試料の作製評価に関わる消耗品等を予定している。
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Research Products
(3 results)