2019 Fiscal Year Research-status Report
The improvement of efficiency and durability in organic solar cells by nanometer-size metal particles
Project/Area Number |
18K04292
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
服藤 憲司 立命館大学, 理工学部, 教授 (60442472)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機太陽電池 / 電力変換効率 / 光照射耐久性 / 貴金属微粒子 / プラズモン効果 / 加熱処理 / 薄膜金層 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機太陽電池は、電力変換効率や光照射耐久性が低いという課題がある。この解決のために、ナノメートル・オーダーの貴金属微粒子を有機層に分散させ、プラズモン効果によりキャリア生成を促す方法が提案されている。一方、光照射耐久性に対しては、インジウムスズ酸化物(ITO)アノード電極上に、薄膜金属層を蒸着する方法などが提案されている。 薄膜金属層の導入は、製造プロセス上簡便であり、表面拡散による凝集効果で島状金属微粒子が生成される。これが、プラズモン効果により変換効率を改善する報告は多数あるが、この微粒子の大きさ、面密度に対する体系的なデータは不十分である。 本研究では、厳密な有機材料の純度と膜厚の制御が可能な、古典的な低分子型有機太陽電池を対象にした。薄膜金属材料として、主に金を採用して検討を行った。ITO電極上に3nmのペンタセン有機緩衝層を成膜した上に、0.3 nm 程度の膜厚の極薄膜金を蒸着し、これを温度と時間を制御しながら加熱処理し、金微粒子の大きさと面密度を調整して、変換効率や耐久性に対する体系的なデータを取得した。 加熱処理なしの場合には、電力変換効率や光照射耐久性は良くないが、50℃~100℃で30分間電気炉で加熱処理すると最適な動作特性を示し、ペンタセンのみの場合と比べて、初期効率は、ほぼ同等値を保ちながら、40%以上の耐久性向上を確認した。 この要因を調べるために、原子間力顕微鏡及び走査型電子顕微鏡による表面観察、X線回折による有機膜の結晶性評価、接触角測定によるITO基板の加熱による表面清浄度評価、透過型電子顕微鏡による断面観察、分光測定による薄膜金蒸着層の光学的効果などの分析作業を進めた。この結果から、加熱処理過程で、薄膜金層はペンタセン層の表面の凹凸の平坦化を実現しながら島状凝集し、有機膜の結晶性の改善と、電気光学的効果の増大をもたらしたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低分子型有機太陽電池を対象にして、ITO電極上に3nmのペンタセン有機緩衝層を成膜した上に、0.3 nm 程度の膜厚の薄膜金層を蒸着し、これを、温度と時間を制御しながら加熱処理を施し、金微粒子の大きさと面密度を調整し、これがもたらす電力変換効率や光照射耐久性に対する、体系的なデータを取得した。この一連の実験により、ペンタセンのみの場合と比べて、初期効率は、ほぼ同等値を保ちながら、40%以上の耐久性向上を確認した。また、加熱処理過程で、薄膜金層はペンタセン層の表面の凹凸の平坦化を実現しながら島状に凝集し、有機膜の結晶性の改善と、電気光学的効果の増大をもたらすと考えられることを明らかにできたので、おおむね順調に進展している。 しかし、島状金微粒子が、なぜプラズモン効果から期待できる電力変換効率の向上や、繰り返し光照射に対する耐久性向上をもたらすかの、明確なメカニズムの確認は、十分にはとれていない。一連の実験データの分析をさらに進め、薄膜金属層の構造と、これがもたらす物理的なメカニズムを明らかにしていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
有機太陽電池の電流電圧特性(J-V特性)の初期性能と光照射劣化特性を、変換効率を形作る短絡電流密度(Jsc) 、開放端電圧(Voc)、曲線因子(FF)、さらに、これら個々のパラメータを構成する、例えば直列抵抗成分、並列抵抗成分などの根本的な要因に分解して、丁寧に、島状金微粒子がもたらす物理的なメカニズムと効果を調べていく。特に、加熱温度と加熱時間に対する、変換効率、耐久性、及び歩留まりのデータの二次元等高線図を作成し、最適な条件を絞り込んでいく。
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Causes of Carryover |
予定していた海外や国内での幾つかの学会発表が、新型コロナウイルス問題の影響で中止せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は、島状金微粒子がもたらす物理的なメカニズムと効果を調べていくための材料分析費、および、昨年度、実施できなかった学会発表のために充当し、解析を進めていく。
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