2018 Fiscal Year Research-status Report
超高周波帯マイクロウェル電極による循環腫瘍細胞の早期検出とその高感度化
Project/Area Number |
18K04295
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
黒木 太司 呉工業高等専門学校, 電気情報工学分野, 教授 (30195581)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 循環腫瘍細胞 / リング共振器 / 負性抵抗素子 / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界各国で高い死亡率をもたらす疾患として悪性新生物が挙げられるが、その生存率を上げるためには悪性新生物の超早期発見が要求される。循環腫瘍細胞(CTC)は各腫瘍組織から遊離し、血液中に浸潤した癌細胞であるが、CTCを同定し、細胞の持つ情報を精査することで癌の進行状態などの評価が可能となる。一方、血液中に含まれるCTCの数は血球と比べ極めて少量であることから、CTC検出は困難で高度な技術が必要となる。 我々のグループではCTC検出の初期検討として、各細胞が所持する固有の誘電定数に着目し、平行電極にリング共振器を並列に装荷したリング共振器型電極を用いて、細胞固有の誘電定数を共振周波数として測定する手法を考案し検討してきた。そこで平行電極にB, Tリンパ球を挿入し共振周波数を計算した結果、共振周波数に差異が生じ細胞同定が可能なことを数値的に確認したが、細胞や血液による損失が大きいため共振時のQ値が乏しいことが課題となった。 そこでさらなる検出感度向上を目指し、負性抵抗素子を本電極上に装荷し、その負性抵抗値を制御することでQ値の改善を目指した。負性抵抗素子としては、エサキダイオードやキャパシタンスを帰還回路として接続したFETを使用し、その有用性を回路シミュレーションで検討した。さらに、FETを負性抵抗素子として接続したリング共振器型電極を実際に作成し、この電極の性能を精査するため、細胞の代わりに純水やチタン酸バリウム粒子を用いて共振周波数を測定した。以上の検討の結果、共振周波数が各状態においてMHzオーダで分離し、負性抵抗素子により本電極のQ値は負性抵抗を実装していない場合と比べ24倍向上し、負性抵抗よりリング共振器型電極の損失を抑制可能であることを実験より確認、検出感度が向上することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血液中はマイクロ波にとって高損失媒質であるが、これを負性抵抗素子を利用することで感度を向上させることに成功した。これにより、組織固有の比誘電率の差異に起因する共振周波数の分離が明確になり、当初困難が予想されたCTC検出感度が大幅に改善されたと考えられる。
なおCTCを検出するための微細電極作成に関しても、昨年度研究室にクリーンルームを構築でき、暗室作業を可能にするための各種設備も2019年度8月中旬には完成予定であり、これらを踏まえると、本研究は一層の加速が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の事項を推進する計画である。 1)単一細胞電極の実験:ヒト肺癌由来細胞株(PC-9)を用いて試作電極の有効性検証を行い、PC-9の誘電分散など基本的な誘電特性を把握後、実際にCTCを検出を試みる 2)エレクトロローテーション検査結果との相関推定:本電極に多相超高周波信号を印加することで発生するエレクトロローテーションを活用する。これにより細胞が自転する角速度は細胞固有の誘電特性に起因することから、画像処理技術により得られたCTC検査結果と1)の実験結果の相関を自己組織化マップを用いて評価し、CTCの検出感度を高める技術を確立する。また実際の臨床現場を踏まえ、AIを導入してCTCの検出確度を向上させる。 3)マトリクス状細胞電極の基礎検討:細胞電極をマトリクス状に配置し、対向する上下電極に印加する信号をスイッチにより時系列に掃引することで約百万個の細胞を迅速に評価するための基礎研究を開始する。
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Causes of Carryover |
残額378円は次年度消耗品費として使用する予定
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