2021 Fiscal Year Research-status Report
ラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置を用いたコンクリートの各種劣化機構の解明
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18K04304
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
伊藤 幸広 佐賀大学, 理工学部, 教授 (90223198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出水 享 長崎大学, 工学研究科, 技術職員 (00533308)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コンクリート / ひずみ / 乾燥収縮 / ラインセンサスキャナ / アルカリ骨材反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリートの劣化機構の解明において、構成材料の変形およびひずみなどの経時変化を調べることは有効な方法である。昨年度の研究ではラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置に取り付けられるアタッチメントを製作して、円柱供試体(φ100mm)の面内ひずみを高精度計測ができる装置を開発した。劣化の無い健全なコンクリート供試体について、乾燥収縮による面内ひずみ分布を調べ、収縮はモルタル部分において一様ではなく収縮が集中する線状領域が存在することを明らかにした。 コンクリートの代表的な劣化要因の1つにアルカリ骨材反応がある。アルカリ骨材反応は、アルカリシリカゲルが給水、膨張することで発生する現象である。アルカリ骨材反応で骨材の外周にできたゲルは水が逸散しやすく乾燥収縮に影響するものと考えられる。しかしゲルと乾燥収縮の関係性について調べられた研究は見られない。本年度は、ラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置を用い、アルカリ骨材反応の生じたコンクリートの乾燥収縮時のひずみ分布計測を行ったものである。供試体としてはφ100mmの円柱供試体を用い、アルカリ骨材反応の生じたコンクリート(ASR)および健全なコンクリート(NOR)について比較検討した。 実験結果としては、ASRとNORを比較すると面内の全収縮ひずみ量は、ASRの方が大きく、収縮ひずみが集中する領域がASRでは、測定した面内全域に存在していることが明らかとなった。特に、収縮ひずみ集中する領域は粗骨材の外周に多く見られた。これは、ASRの骨材外周部のゲルは組織が粗であり、水分が逸散しやすいためと考えられ、乾燥収縮ひずみが集中する領域が全域に生じ、全体として乾燥収縮ひずみ量が大きくなった原因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ関連で実験の実施計画がやや遅延した。また、ラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置が一時不調となり調整に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、アルカリ骨材反応が生じたコンクリートの特有のひずみ変化について詳細な検討を行う。第1に昨年度実施した乾燥収縮によるひずみ変化について、さらに局所的なひずみ変化を測定し分析を行う。第2にアルカリ骨材反応が進行する過程におけるひずみ変化を測定し、骨材内の膨張ひずみ分布、骨材外周(ゲル部分)のひずみ変化および粗骨材で囲まれたモルタル部分のひずみ変化(クリープひずみ)の測定を行い、アルカリ骨材反応の劣化進行過程の可視化を行う。第3にモルタル部分に蓄積されたクリープひずみ(応力)について、微小領域の応力解放法を実施し骨材膨張による膨張圧の実測を試みる。 また、コロナの関係で実験計画が遅延していた鉄筋の腐食によるひずみ分布や腐食膨張圧についても実験的に検討を行う。実験方法としては、電食による促進試験を行い、鉄筋の外周のコンクリートに生ずるひずみ変化を測定し、最終的に微小領域の応力解放法により鉄筋腐食による膨張圧の実測を試みる。
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Causes of Carryover |
コロナの関係で実験の実施や打ち合わせが遅延したため、研究計画および経費の使用が予定通り進まなかったことから次年度使用額が生じた。翌年度は遅れた計画を取り戻すため早めの使用を予定している。
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