2019 Fiscal Year Research-status Report
既設コンクリート/断面修復材界面の剥離危険度評価と一体性確保による安全性向上
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18K04309
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
宇治 公隆 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70326015)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | せん断付着強度 / 打継ぎ界面 / 補修・補強 |
Outline of Annual Research Achievements |
既設コンクリート構造物の補修・補強における断面修復との一体性を検討する研究に取り組んだ。母材コンクリートの界面性状とプライマーの種類を要因に、直接2面せん断試験に基づき界面のせん断付着強度を求めた。試験には、□100×100×400mmの角柱供試体を用い、①プライマーの違いがせん断付着強度に及ぼす影響、②断面寸法の違いがせん断付着強度に及ぼす影響について検討した。①では、アクリル系およびエポキシ系の2種類のプライマーを用い、それぞれについて界面の目粗し条件(有・無)をも要因とした。また、②では、エポキシ系プライマーを用い、目粗し有りの条件で、断面形状を縦長(縦100mm-横50mm)あるいは横長(50-100)として実験した。断面100×100mmの角柱供試体を用いたもの、切り欠きを設けて縦長あるいは横長にしたもの、の3種類について2面せん断試験を行った。また、付着抵抗域の把握のため、AEを用い、荷重増加に伴うAE発生源位置評定を行った。凹凸を再現するため、界面部は凝結遅延シートを用いて処理し、断面修復材を施工する前に、界面部分の凹凸を測定し算術平均粗さを指標として検討した。試験の結果、エポキシ系プライマーを用いた場合、アクリル系プライマーに比べ、30~40%高いせん断付着強度を示した。アクリル系は母材との付着性が重要な要求性能であるが、また吸湿防止効果をも期待される。付着強度の傾向からはエポキシ系よりも低い値であるが、アクリル系も十分なせん断付着強度を有していることを確認した。なお、前年度にアクリル系を用いて縦長と横長の違いを検討したが、今年度のエポキシ系を用いた場合においても、付着界面が縦長の場合の方が横長に比べてせん断付着強度が大きいことが明らかとなった。さらに、形状の違いによる強度の相違を、AEイベント数やSiGMA解析結果から説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補修・補強においては、新設コンクリート構造物のように、打継ぎ面に対して自重や上載荷重等による鉛直力が作用しないため、せん断方向に対する抵抗力は小さいと考えられる。その現象および影響を把握することが本研究の目的である。今年度行った試験の結果から、実務で広く使用されているアクリル系およびエポキシ系プライマーの効果が明確になり、かつ、縦長および横長の形状を変えた試験の結果から、せん断付着強度を設定する際に注意すべき要因が明らかとなった。今年度の成果において注目すべき点は、アクリル系プライマーとエポキシ系プライマーにおけるせん断付着強度の違いである。アクリル系の場合、〔目粗し:無〕で2.49N/mm2、〔目粗し:有〕で3.20N/mm2、一方、エポキシ系の場合、〔目粗し:無〕で3.15N/mm2、〔目粗し:有〕で4.69N/mm2を示し、プライマーの種類の違いによりせん断付着強度が30~40%相違することが明らかとなった。なお、アクリル系プライマーは、一般に吸湿防止効果をも期待して使用することが多く、〔目粗し:有〕の3.20N/mm2は十分な強度を示すと判断される。なお、〔目粗し:有〕〔目粗し:無〕でも差が30%程度想定されることも有り、施工環境等を考慮して材料選定すべきであると言え、最終年度で計画している、実務での補修設計における考え方の提示に対して、有益な結果が得られた。また、圧縮強度や引張強度は、試験方法が明確に規定されているが、せん断付着強度に関しては数種類の試験方法がせん断強度試験として提案されている状況である。耐荷特性に見合ったせん断付着強度の設定は、補修・補強構造物の安全性確保の面からも重要であり、本研究の試験方法に関する検討結果が活用できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
プライマーや断面修復材の種類、さらには断面形状を要因としたこれまでの試験結果から、せん断力に対して界面の全面積が同時に抵抗するのではなく、抵抗域(せん断付着応力が生じる箇所)は順次移行していくものと考えられる。すなわち、場合によっては、せん断付着による抵抗力を過大評価してしまう懸念があると言える。そこで、最終の2020年度は、過去2年の試験要因を補完するための試験を行い、施工現場での施工条件に対応できるようにデータの蓄積を図る。そして、これまで明らかになった、プライマーの違い、試験時の検討面積・形状の影響を含めて再検討し、実務での補修・補強設計に活用できるよう、例えば、CFRP格子筋や格子状金網など、格子状となった矩形のマス形状部分ごとに抵抗するなども含め、界面の一体性に関する考え方(期待されるせん断付着強度や付着抵抗機構、など)を整理・提示する。
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Causes of Carryover |
2年目の2019年度は、プライマーの相違によるせん断付着強度の違いを明らかにすることを目的に、AE測定による抵抗域の変化に注目して測定を行った。せん断付着応力の移行特性を把握し非常に有益な成果を得たが、本測定は1体あたりの測定に要する時間が非常に長く、試験材齢との関係で、供試体数も制限しながら研究を進める必要が生じた。そのため、試験要因を絞り込み、結果、消耗品費も変化した。なお、最終年度、試験項目や試験時期を調整し、必要なデータを漏れなく収集することから、記載金額を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)