2018 Fiscal Year Research-status Report
炭素繊維束で端部定着された炭素繊維格子板のせん断特性の評価に関する研究
Project/Area Number |
18K04335
|
Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
宮内 克之 福山大学, 工学部, 教授 (80368779)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 炭素繊維 / 炭素繊維格子板 / せん断補強 / 乾式吹付け / 定着 / ポリマーセメントモルタル |
Outline of Annual Research Achievements |
対象とする炭素繊維格子(CFG)板を用いたせん断補強方法は、既設部材と補強部分の一体性を吹付け材と既設コンクリートとの付着力で確保している。また、補強材であるCFG板の定着は、吹付け材の付着力と提案するCFG板端部の定着で保証しようとしている。したがって、補強方法としてみた場合には、吹付け材と既設コンクリートとの付着力(強度)の影響を受けるものと考えられる。過去の研究においては、圧縮強度が70N/mm2程度のPCMを用いた実験を行い、非常に良い結果を得ている。そこで、圧縮強度が50N/mm2程度のPCMを使用して補強した試験体によるせん断破壊試験を行い、吹付け材の圧縮強度の影響の有無を確認した。また、既設部材と補強材を一体化させる施工方法としては、吹付け工法のほかに左官工法もある。したがって、圧縮強度が50N/mm2程度のPCMを使用して左官工法で補強した試験体に関してもせん断破壊試験を行い、問題点に関して検討した。 本年度の実験的研究により得られた知見は、以下のとおりである。 (1)圧縮強度が50N/mm2程度のPCMを乾式吹付け工法により一体化させる方法でせん断補強されたRC部材に関する力学的特性は、圧縮強度が70N/mm2程度のPCMを乾式吹付け工法により一体化させる方法でせん断補強されたRC部材の力学的特性と大きくは変わりがなかった。したがって、乾式吹付け工法に用いるPCMの圧縮強度に関しては、50 N/mm2程度以上であれば、補強部材のせん断特性に与える影響はないものと考えてよさそうである。 (2)左官工法により一体化した場合は、既設コンクリートとPCMとの界面剥離が生じ、せん断補強用のCFG板の性能が十分には発揮できなかった。したがって、左官工法により既設部材と一体化した場合には、CFG板の端部を炭素繊維束で固定する定着方法が成立しない可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)研究成果は日本コンクリート工学会の年次論文集に投稿している。現時点では「条件付き採用」となっており、2019年度内には査読付き論文として発表が予定されていること。 (2)研究成果は2019年度土木学会全国大会第74回年次学術講演会で発表予定(投稿済み)であること。 (3)研究対象としている提案方法において、ポリマーセメントモルタル(PCM)の圧縮強度の影響がある程度予測されたが、現在までのところ50N/mm2程度の強度では影響が確認されておらず、今後の研究の展開において多少の変更を考えざるを得ないため、「おおむね」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度:補強設計の設計式の提案:一般に、炭素繊維で補強されたRC部材のせん断耐力は、コンクリート系材料が負担するせん断耐力Vcu、既設帯鉄筋が負担するせん断耐力Vsyおよび補強用CFG板が負担するせん断耐力Vguの和で表される。本研究では、補強用CFG板が負担するせん断耐力Vguを算定する式において、定着用炭素繊維でCFG板の格子を結束することによる、補強用CFG板の格子の強度の低下あるいは結束による応力集中等による定着用炭素繊維束の強度低下を、補強用CFG板の強度の有効係数Kgの形で評価式に取り入れようとするものである。2018年度までに本研究課題を含め7体のRCはり試験体を用いたせん断破壊試験を行っている。これまでに得られた知見を整理し、炭素繊維束を用いたCFG板の端部定着による耐震補強(せん断補強)設計手法を確立する。すなわち、Vguを算定する式において、定着用炭素繊維で格子板の格子を結束することによる、格子板の格子の強度の低下あるいは結束による応力集中等による定着用炭素繊維束の強度低下を評価する有効係数Kgの値を明示する予定である。 2020年度:FEM解析に用いるCFG板のモデルの提案:一般的に補強設計の検討段階では、対象構造物の条件を考え、様々な可能性を考慮し、最終的に最もよい補強方法が決定される。その際、FEMなどのシミュレーションにより、補強方法を絞り込むことも行われる。このような設計段階における種々の検討を可能にするためには、本研究で提案する補強方法に関しても、解析用モデルを提案しておくことは極めて重要である。そこで、提案方法でせん断補強されたRC部材の力学的挙動をFEMにより解析する際に用いるCFG板のモデル化について解析的に検討する。また、検討をとおして、シミュレーションに必要なCFG板のモデルを提案し、モデルの妥当性に関して検討する。
|
Causes of Carryover |
理由:RCはり試験体作製用の鋼材等の物品費を当初の予定より安く抑えることができたため。また、実験等を当初の予定より効率的に行うことができ、実験補助の謝金の支出を少なく抑えることができたため。
使用計画:解析用ソフトの年間サポート料および研究遂行に必要な多少の消耗品購入の予定である。
|