2019 Fiscal Year Research-status Report
複列砂州河川の河相変質とその自律的回復を促す河道管理技術の構築
Project/Area Number |
18K04362
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
清水 義彦 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (70178995)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 複列砂州 / 単列砂州化 / 蛇行流路 / 河岸侵食 / 砂州の固定化 / 低水路 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,複列砂州河川の維持機構(単列化に対する複列砂州維持の自律性メカニズム)と複列砂州の河相変質機構(単列化を強制化する要因と,その非可逆的変化のプロセス)を明らかするため,大型直線水路を用いた移動床水理実験およびその水理実験を対象とした平面2次元河床変動解析を行い,複列⇔単列の可逆的変化と複列砂州維持の機構解明および単列化を生む要因に対する河道応答「複列→単列の非可逆的変化」の機構解明を検討した.得られた知見を列挙する. 1)移動床水理実験から,単列化のプロセスを抽出した.すなわち複列砂州の変形過程として左右岸砂州の片側が発達することで非対称性が生じ,これが単列化に至る過程を明らかにした.2)単列化は水路上流側から下流にかけて発達し,とくに平均河床高の縦断曲線から見ると堆積傾向の区間で顕著となる.3)複列砂州形成時に比べ単列化が進むと,波高,波長ともに増大する.横断面内比高は単列化に伴い周期的になり,その振幅も増大する.4)河岸侵食が生じると,側岸供給土砂の影響により低水路河岸沿いでの堆積が流路分岐を生じさせ易く,屈曲化した単列化を強調する傾向が認められる.さらに,側岸供給土砂とともに河岸侵食による低水路幅の増大は砂州の移動を鈍化させ,砂州・低水路の固定化およびそれに伴う河岸侵食の顕著化が認められた.こうした素過程は釜無川等で見られる河岸被災事例と対応する.5)複列⇔単列の可逆的変化は水路上流側で生じ易い.複列砂州形態に見られる中央深掘れが消滅,生成を繰り返すことで,この区間での単列化が生じても安定することなく不明瞭となることで,複列砂州の可逆性が保持される.この過程は実験では見られるものの,平面2次元河床変動解析から再現できなかった.断面全体で砂州形成の流砂量が確保され,複列砂州固有の横断比高が維持されているものと推測され,次年度の検討に持ち越す内容となった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複列砂州を伴う河道では,洪水時の砂州移動による流路変動が活発で川の自律的な変化が維持できる河道とされている.しかしながら,近年こうした河道特性が崩れ,砂州の固定化と河道内樹林化,顕著な蛇行流形成がもたらす水衝部固定など,河道のダイナミズムが消失した複列砂州の河相変質が顕在化してきた.このような河道特性の変質に注目し, H30,H31年度の研究では,複列砂州河川の二極化を生む単列化の要因とその機構について,移動床水理実験と平面2次元河床変動解析によって考察を進めた.H30年度研究において,複列砂州河川の二極化を生む単列化の要因としては,「研究実績の概要」で述べたように,実験と解析から明らかにしつつある.この中で,複列⇔単列の可逆的変化は単列化が生むような大きな横断比高を生じないことや河岸侵食による土砂供給は非可逆傾向になることが推測されているが,さらなる考察が必要である.
|
Strategy for Future Research Activity |
1)引き続き,これまでの移動床水理実験および平面2次元河床変動解析から,河道応答「複列→単列の非可逆的変化」の機構解明を行う.ここでは,複列砂州に内在する単列砂州モードの卓越化現象と,河床条件,河岸条件,砂州への植生の侵入等の外部条件が砂州の単列化に及ぼす影響を解明する. 2)得られた知見にもとづき複列砂州を自律的に維持するための河床河岸管理の提案を移動床水理実験・数値解析から検討する.すなわち,平面2次元河床変動解析において初期形状として複列砂州を発生させ,これに単列化の要因条件を与えてその河道応答を追跡し,河道応答の各段階に応じて人為的な河床河岸管理を与えた場合の「複列⇔単列の可逆的変化(複列砂州維持)」への移行条件を明らかにする.人為的な河床河岸管理としては,現時点では,低水路河床高の維持(低水路の部分的掘削と埋め戻し),砂州の比高緩和(砂州河床の部分的掘削),低水路線形の変更,砂州上の樹木管理(伐採),河岸防護工の設置などのインパクトに対すると中小洪水営力のレスポンスを考えている.以上,本研究での成果を総括して,中小洪水の営力を有効に活用した複列砂州の自律的維持・回復河道管理技術の提案する.
|
Causes of Carryover |
研究最終年度に該当するため,実験結果の整理と対応する条件での数値計算的検討,とりまとめを行うために必要な物品費に充当させる.
|