2018 Fiscal Year Research-status Report
表流水と周辺地盤との間の水分と物質移動に関する研究
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18K04376
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Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
東野 誠 大分工業高等専門学校, 都市・環境工学科, 准教授 (90311117)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 凍結防止剤 / 塩化ナトリウム / 飽和・不飽和浸透流 / 真砂土 / 水分保持曲線 / 降水 |
Outline of Annual Research Achievements |
冬季の気温低下に伴う路面の凍結は,自動車事故等を引き起こす最も危険な要因の一つである.路面の凍結を防止する為,水より低い凝固点が得られる塩化ナトリウム(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl2)等の凍結防止剤が散布される.我が国においては北日本や東日本の寒冷地のみならず,九州地方においても凍結防止剤は使用されている.この,凍結防止剤の大部分は環境中に残存し,道路周辺の地盤,水田,畑地等を経て最終的には河川へと流出し,橋脚などの構造物を腐食・劣化させるとともに,植生や河川生態系に重大な影響を及ぼす.また,地盤内に残存した凍結防止剤は降水とともに周囲の水田,表流水中へと流出し,夏季においても高濃度の塩分が検出されるなど,年間を通じて環境への被害を引き起こすことが報告されている.本研究では,このような地盤内の塩分の挙動について,特に真砂土で構成された地盤に着目した.真砂土は,全国的に,とりわけ関西以西で広く分布している.先ず,地盤内の水分移動を再現するために不可欠な水分保持曲線について検討した.次に,このような地盤から降水の浸透によって塩分が除去される過程について,シミュレーションによる再現を試みた. 地盤厚さを1mとして,地盤から塩分を十分に除去するのに必要な降雨継続時間(hours)について検討した.ここで,飽和透水係数はSand (USDA)ではKs=8.25×0.001(cm/s),熊本産,および日吉産真砂土ではKs=3.93×0.001(cm/s)とした.検討の結果,Sand(USDA)の場合,約2時間の降雨で地盤から塩分を除去し得る.一方,日吉産真砂土では約8時間,熊本産真砂土では60時間以上要しており,砂地盤であっても水分保持曲線によって,地盤から塩分を除去するのに要する時間が大きく異なることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究での解析対象地盤は,均質な真砂土からなる1次元不飽和地盤とする.飽和・不飽和地盤の浸透流解析にはRichards式が用いられる. 本研究では,水分特性曲線と不飽和透水係数Keの推定にあたって,異なる土の水分保持曲線に適合するための自由度が高く,かつ最も広く用いられているvan-Genuchtenモデルを用いる.モデル中の形状パラメータα,n,mは土質条件(砂質土,シルト,粘土等)によって異なる値をとる. まず,熊本産真砂土,および日吉産真砂土についてサクションψ(cm)と有効飽和度Seとの関係を実験的に調べた.United States Department of Agriculture(USDA)は,砂で構成された地盤には,前述のvan-Genuchtenモデル定数としてθr=0.045,θs=0.43,α=0.145,n=2.68を推奨している.検討の結果,これらのモデルパラメータが実験値を再現し難いことを明らかにした.また,熊本産真砂土と日吉産真砂土では,異なる位置にプロットが並ぶ.そこで,これらの真砂土のSe~ψ関係にvan-Genuchtenモデルをあてはめ,実験値との誤差が最小となるように形状パラメータα,nを決定した. 以上のようにして得られたαとnをvan-Genuchtenモデルに代入し,Se~ψ関係をシミュレートした.これより,αとnを適切に与えれば,同モデルは真砂土におけるSe~ψ関係(実験結果)を良好に再現し得ることを見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で同定したモデル定数を用いて,真砂土で構成された不飽和地盤からの塩分の除去について検討する.それに際して,間隙率と飽和透水係数は実測値,すなわちφ=0.4,Ks=3.93×0.001(cm/s)を用いる.初期状態としてField capacityを仮定し,連続的に表面流出が生じるに十分な雨量強度で降雨が継続する場合を想定する.地盤が飽和状態となるまで,物質移動は生起せず,塩分は地盤内に保持されるが,一旦飽和状態に達すると,浸透流による物質移動に起因して塩分が地盤から除去される.これらを再現するためのシミュレーションモデルを構築する. 上述のようにして得られたモデルの妥当性を検証するためにカラム実験を行う.まず,PVCカラムを作成し,カラム内を真砂土,および豊浦砂を充填する.なお,これらの砂は実験前に土粒子の比重,間隙率,および透水係数等の基本的な性質を測定しておく.実験では,一定の濃度に調整したNaCl水溶液をカラム内に浸透させる.次に,カラム下端から排水してField capacityの状態とする.そして,カラム上端から純水を浸透させ,カラム下端からの流出水を採水し,流出量と電気伝導度を測定する.得られた電気伝導度から流出水中の塩分濃度を推定する. 上述の実験と同様の条件(真砂土,および豊浦砂の性質とカラム長)でシミュレーションを行い,その結果を実験値と比較する.
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Causes of Carryover |
当初,予定していた実験について,シミュレーションモデル構築の進捗状況を鑑みて計画していたが,モデルの感度分析を実施したところ,若干,想定から著しく乖離した結果が得られた.そこで,実験計画を若干見直し,次年度以降に持ち越すこととしたため,予定していた物品購入の時期を2019年4月以降に遅らせた.今後は,上述のモデル感度分析結果を考慮して修正した計画に基づいて実験を行うこととし,そのための物品を購入する予定である.
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Research Products
(7 results)