2020 Fiscal Year Research-status Report
表流水と周辺地盤との間の水分と物質移動に関する研究
Project/Area Number |
18K04376
|
Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
東野 誠 大分工業高等専門学校, 都市・環境工学科, 准教授 (90311117)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 地盤内物質移動 / 飽和・不飽和浸透流 / 降水の浸透 / 表流水・地下水 / 硝酸性窒素 / 施肥 / 凍結防止剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,次の事項について研究を進めた.①大分県内を流れる大野川を対象とし,数年に 亘る観測データを基に,流域での硝酸性窒素(NO3-N)の収支,とりわけ,水田が河川での硝酸性窒素負荷量に及ぼす影響を考察した.②冬期に使用される凍結防止剤,すなわち塩化ナトリウム(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl2)の地盤内の塩分の挙動について,特に真砂土で構成された地盤に着目した.真砂土は,全国的に,とりわけ関西以西で広く分布している.先ず,地盤内の水分移動を再現するために不可欠な水分保持曲線について検討した.次に,このような地盤から降水の浸透によって塩分が除去される過程について,シミュレーションによる再現を試みた. 大野川における検討結果より,(1) 河川におけるNO3-N負荷量は夏季に増大する傾向が 見られる.これは,夏季の河川流量の増大に起因する と考えられる.(2) 河川における NO3-N 負荷量は河川流量 Q と関連付 けてL-Q 式で表現できる.(3) 晴天時,雨天時に係わらず,湛水期の方が乾田期よりも同比流量に対するNO3-N汚濁負荷原単位が小さい. これは,NO3-N が水田で水稲の生育に利用されたことに起因すると考えられる.以上のことから,各河川における栄養塩の流出過程において,土地利用や降雨等の要因が影響していることが確 認できた.また,水田が栄養塩の流出に及ぼす影響については,湛水期において,水稲などによる水中の栄養塩の吸 収が発生していることが考えられる.定量化を行う際には,上記のことを考慮する必要があるといえる. 次に,真砂土を対象とした,地盤からの降水の浸透による塩分除去について,砂地盤であっても水分保持曲線によって,地盤から塩分を除去するのに要する時間が大きく異なることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナ禍のため、国内外の出張が大幅に制限され、実験や研究打ち合わせなど、当初予定していた共同作業に支障をきたした。加えて、学会等での成果の発表とこれにともなう討議の機会が大幅に制限された。このため、当初予定を若干変更し、国内外での学会発表に代えて、研究成果を迅速に取り纏め、学術論文に積極的に投稿するよう、方針を変更した。添付資料の通り、本年度までの研究成果は査読付き学術論文として既に公表されている。論文の投稿、および査読段階で、編集者や査読者から研究内容に関して多くのコメントやご意見を頂戴し、これらは研究状況の確認と今後の研究方針の策定に際して、大いに役立った。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までに実施した研究の妥当性は,実験によって検証・修正される.研究代表者がこれまで10年以上に亘り,共同で研究を進めてきたミネソタ大学,Stefan教授のご厚意により,同大学,セントアンソニーフォールズ研究所内において実験装置のセットアップが完了し,実験を開始できる状況にある.実験は,研究代表者,Stefan教授らによる理論解析と先行実験結果に基づいて実施される.すなわち,アメリカ合衆国,ミネソタ州,ミネアポリス市内のFree way周辺の複数の地点において,既に幾つかの地盤サンプルを採取し,セントアンソニーフォールズ研究所内において,複数のカラムを用い実験を行う予定である.実験では,これらのカラムに純水,および塩水を浸透させて,カラム流出水の水質を連続的に計測し,モデルによる推定結果と実験値とを比較しつつ,モデルをより精巧なものへと仕上げてゆく予定である. 以上のようにして,地域毎に水文条件と地盤の諸条件(土粒子の粒径,空隙率,透水係数)より,施肥起因のNO3-Nや凍結防止剤として散布されたNaClの地盤内での移動や物質変換を再現し,滞留時間やこれらの物質の地盤から地下水や表流水中への流出をシミュレートするためのモデル構築を進めてゆく予定である.
|
Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍のため、国内外の出張が大幅に制限され、実験や研究打ち合わせなど、当初予定していた共同作業に支障をきたした。加えて、学会等での成果の発表とこれにともなう討議の機会が大幅に制限された。当初は、前述の研究打ち合わせなどの共同作業、および研究成果の学会発表を見込んで、国内外旅費を計上していたが、コロナ禍により、これらが実現できなかったことにより、予算執行が当初計画と異なることとなった。研究最終年度となる令和3年度は、国内外旅費として予算を執行する予定である。
|
Research Products
(4 results)