2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of the Urban Economic model based on CGE approach to evaluate regional revitalization policies
Project/Area Number |
18K04387
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
武藤 慎一 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90313907)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 地域経済活性化 / 応用一般均衡モデル / 応用都市経済モデル / 便益評価 / 産業連関効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,応用一般均衡型都市経済(CGEUE:Computable General Equilibrium & Urban Economic)モデルを開発し,CGEUEモデルを用いて効果的な地域経済活性化策を評価することにある.研究一年目(H30)は,CGEUEモデルを開発した.そして,研究二年目(R1)は,CGEUEモデルを用いて①リニア中央新幹線山梨県駅のアクセス交通整備による地域経済活性化効果の計測,②笛吹市バス交通ネットワーク再編による地域経済活性化効果の計測,③甲府都市圏の効率的な道路ネットワーク維持管理による地域経済影響評価を行った. ①では,リニア山梨県駅からJR甲府駅間のアクセス交通整備に関し,複数ルートを設定し,さらに立地誘導策を組み合わせたケースについて経済効果の計測を行った.そのゾーン別効果を示し,地域によっては第二次産業に与える効果の大きな場合と第三次産業に与える効果の大きな場合のあることが明らかとなった.②は,人口減少の進む山梨県の地方都市である笛吹市において,バス交通の再編が地域経済の活性化にどのように貢献するのかを明らかにした.笛吹市の産業規模は大きくないものの,他市も含めた通勤や買い物,対個人サービス利用を介した経済効果の発現について明らかにできた.③は,これから社会的に大きな負担となる道路ネットワークの維持管理において,費用の負担が都市圏全体の経済に与える影響を明らかにするとともに,維持管理・更新に伴う交通規制が道路ネットワークを介して地域経済にもたらす影響も評価した. 以上のとおり,研究二年目は甲府都市圏を対象に,地域経済の活性化の様々な政策評価を実施した.CGEUEモデルを用いることにより,交通政策が地域経済の活性化にどのような効果,影響をもたらすのか,それを地域別,産業別に明らかにできることが示せた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗は,「(1)当初の計画以上に進展している。」とした.当初計画では,研究二年目はデータセットの整備と,土地利用規制策や土地造成策と連動させた評価の実施としていた. まず,データセットの整備に関しでは,産業連関表,ゾーン別人口,ゾーン別産業別従業人口,ゾーン別土地利用面積,そして交通ネットワーク,ODなどのデータを,RESASとともにGISのデータを活用し整備した.GISについては,交通ネットワークを構築し,ネットワークデータを取得,それらに基づき最短経路探索,利用者均衡配分を実行し,交通所要時間データを整備する方法も確立した. また,土地利用規制策との連動については,GISデータを活用して,人口分布の現状と過去からの推移について整理するとともに,甲府市都市計画マスタープランおよび笛吹市都市計画マスタープランに基づき,各市が立地政策についてどのような考えを持っているのかを明らかにした.そして,リニア交通アクセス整備および笛吹市バス交通ネットワーク再編に対し,立地誘導策および立地規制策を組み合わせ,より経済効果を高めるための方策についての検討を行った. それらに加え,道路ネットワークの維持管理に係る問題が深刻化する中で,維持管理が社会経済に及ぼす影響評価についても新たに取り組みを開始した.そこでは,橋梁を中心に劣化予測モデルを構築し,将来の維持管理費用を推計し,その財源負担による経済的影響を評価した. 以上の結果本研究においては,積極的な交通整備政策による地域経済活性化効果の計測だけではなく,今後地域経済に負の影響を与えそうな高齢社会の進展や交通ネットワークの維持管理,更新に伴う問題についても,影響をどのようにすれば緩和できるのかが検討できるようになった.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究三年目は研究最終年にあたる.研究一年目はCGEUEモデルを開発し,研究二年目で交通整備政策,それに立地誘導策を組み合わせた総合政策,道路ネットワークの維持管理政策の評価を行ってきた.最終年度には,研究二年目に実施した政策の評価結果を精査し,現実的結果が得られているかを検証する.そして,モデルの修正が必要な箇所等を整理し,シミュレーションの見直しを行う. それに加え,研究三年目は産業政策の評価を行う.山梨県の甲府都市圏は,2027年にリニア中央新幹線の開通を迎える.リニア山梨県駅とJR甲府駅とのアクセス交通の整備評価については既に実施している.ここでは,そのリニア開通の効果をさらに高めるため,産業誘致による地域経済活性化について評価を行う.具体的には,農業および食に係る研究機関の誘致を行い,その研究開発の結果が山梨県内の農業の生産性向上につながるとすれば,その経済効果と,さらにそれが波及することによる経済活性化効果の計測を行う.農業の活性化は,食の充実につながり,それが健康増進効果ももたらすことが期待される.そうした波及効果まで,ここでは計測する予定である. 研究機関の誘致による経済効果を,これまで構築してきたモデルにのっとり評価することによって,分析による恣意性を排除することができる.そして,本研究では,評価を計量的に実施することから,誘致実現向けた対外的なアピールを行うことも可能となり,政策判断の貴重な情報提供につながると思われる.これによって,研究を社会貢献につなげることができる.
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスのために出張を伴う学会が中止になったため,未使用額が生じたが,この状況が続くことも想定し,次年度の使用計画を見直し,効果的な地域活性化策を実施している地域の視察など,有効な使い方を考える予定である.
|
Research Products
(17 results)