2018 Fiscal Year Research-status Report
内航海運における船員不足がもたらす経済的影響の推計手法の開発と政策分析
Project/Area Number |
18K04391
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石黒 一彦 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (60282034)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内航海運 / 船員需給 / 船舶需給 / 産業連関分析 / コーホート分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は内航海運の①船員不足による経済的影響の推計手法を開発すること,およびその経済的影響を緩和するための②各種政策や対策の費用対効果分析の手法を開発することを目的としている.初年度である2018年度は①に取り組んだ.①では【1】不足する船員数の推計,【2】船員不足により運航できなくなる船舶数の推計,【3】船舶が運航できなくなることにより輸送できなくなる貨物量の推計,【4】貨物が輸送できなくなることにより減少する付加価値の推計,の4つの推計を組み合わせることとしている.まだ精緻化の余地は残されているものの,4つすべての推計手法を提案し,何ら対策がなされない場合を想定した付加価値減少額の推計値を得ることができた.具体的には以下のように行った.【1】船員需要については,まず内航船の隻数の実績値を用いて回帰分析を行い将来の隻数を推計した.内航船の隻数と船員数には強い相関が確認されたため,回帰式を推定することにより求まる隻数の予測値により,将来の船員数の需要を推計した.船員供給については,コーホート分析の手法を用いて推計を行った.2025年に船員不足数がピークを迎えるとの結果を得た.【2】船員が不足した場合,まず運航できなくなるのは小型船であると仮定した.さらに 200総トン未満と500総トン未満の船舶について,船種ごとに運航が止まる船舶の比率が一定であると仮定した.【3】小型船の載貨重量トン数と輸送重量実績との関係から船舶1DWTあたりの貨物輸送重量を船種別に求めた.【4】各品目の所管官庁および業界団体の資料に基づき,各品目分類の代表的な貨物の1トンあたりの価格を算出し,それを各分類全体の価格と読み替えて輸送途絶重量に乗じることで金額ベースへの換算を行っった.輸送できなくなる分だけ生産が減少すると仮定して,産業連関分析により付加価値減少額を求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績記載の【1】から【4】のうち,2018年度は【1】と【2】のみを行う予定であった.その観点からは2019年度に予定していた部分も既に一部行っているため,当初の計画以上に進展している部分はある.しかしインタビュー調査が十分に行えなかったために,今後精緻化が必要な部分が残されたことにより,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に進めた研究により,内航海運における船員不足がもたらすマクロな経済影響を推計する見通しが立った.今後は地域別や産業別など,より詳細な影響を推計するための手法を提案するとともに,必要な情報はインタビュー調査を継続することにより得る.
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Causes of Carryover |
インタビュー調査を予定していた企業のうち,担当者との日程調整が不調で調査が行えなかったインタビュー先がある.その分は次年度に調査を行うこととしており,次年度使用額はそのための旅費として使用する.
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