2020 Fiscal Year Research-status Report
内航海運における船員不足がもたらす経済的影響の推計手法の開発と政策分析
Project/Area Number |
18K04391
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石黒 一彦 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (60282034)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内航船員 / 船員需給 / 船舶需給 / コーホート分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は内航海運の①船員不足による経済的影響の推計手法を開発すること,およびその経済的影響を緩和するための②各種政策や対策の費用対効果分析の手法を開発することを目的としている.3年目である2020年度は引き続き①に取り組んだ.①では【1】不足する船員数の推計,【2】船員不足により運航できなくなる船舶数の推計,【3】船舶が運航できなくなることにより輸送できなくなる貨物量の推計,【4】貨物が輸送できなくなることにより減少する付加価値の推計,の4つの推計を組み合わせることとしている.いずれも初年度から2年度目にかけて提案した推計手法を改良することにより,何ら対策がなされない場合を想定した付加価値減少額の推計値を得ることができた.特に【1】において,最近の若年船員の増加の傾向を踏まえて,今後のシナリオを追加するとともに,ここ数年の業界や政府の取組の効果について明らかにするようなシナリオ設定を行った.不足する船員数については,2015年時点における推計から順次1年分ずつ新しいデータを追加しながら2019年時点における推計まで,5通りの推計行い,それらの将来予測値を比較することで,近年の業界や政府の取組の効果を評価した.船員供給については6通り,船員需要については3通りのシナリオを設定し,計18通りのシナリオ別に将来の船員需給の推移の推計を行った.業界や政府による取組が今後も強化されれば船員不足は回避できるものの,そうでない場合は船員不足が生じることが示されたため,本研究全体の流れを変更する必要性がないことを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つである①船員不足による経済的影響の推計手法を開発することについては,当初の予定通りに進めることができている.しかし,もう一つの目的である②各種政策や対策の費用対効果分析の手法を開発することについては,インタビュー調査を当初予定通りに実施することができず,まだ国土交通省や業界団体が公表している資料をまとめ,それらをいかにモデルで考慮するかを検討している段階にとどまっている.
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Strategy for Future Research Activity |
分析モデルのパラメータ設定に必要なデータのうち,統計や調査報告書などの公表資料からは得られないものについてはインタビュー調査により得る計画としている.しかしながら,現下において現実的なオンラインによるインタビューのみでは十分な情報を得ることが困難であることが予想されるため,既往文献の情報を今一度精査してパラメータ設定方法を再検討する.その他については当初計画通りに研究を進めることが可能と考えている.
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Causes of Carryover |
インタビュー調査のための出張が当初予定通りに実施することができず,次年度に延期した出張が複数件あるためである.
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