2018 Fiscal Year Research-status Report
Sustainability of small fishing villages after the Great East Japan Earthquake considering the households stay on disaster site and relocated households
Project/Area Number |
18K04396
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲村 肇 東北工業大学, 工学部, 名誉教授 (50168415)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 防災集団移転 / 被災住民の転居 / データベースの作成 / 電話帳の追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災において、多くの住民が防災集団移転地区、災害公営住宅あるいは遠隔地に移転を余儀なくされた。被災集落の継続のためには、土木計画学的、社会学的研究も不可欠である。こうした研究の基礎となるのが被災世帯の現在の居住地である。本研究はこうした目的のために震災前後の電話帳に基づく被災世帯の居住地変化のデータ集計を試みる。 本研究では岩手、宮城の2県に着目している。岩手県沿岸部においては宮古市以南の市町の被害が非常に大きいことから、本研究では宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市の6市町を対象とした。対象6市町で世帯数は約5,000世帯、7%の減少となっている。中心市街地の被害が比較的少なかった宮古市、釜石市は減少率が少ないものの近隣市町の減少が大きい。宮城県においては、東松島市以南の平野部においては比較的に復興が早く、また海岸部から内陸都市部への移転が多いため復興後のコミュニティーの持続性の問題は比較的少ないと思われる。そこで宮城県では、三陸海岸で被害の大きかった気仙沼市、南三陸町、女川町、石巻市を対象とした。また南三陸町は平野部の被害が非常に大きかったため隣接の登米市に多くの住民が避難、移住したことから登米市を追加し、5市町を対象とした。世帯数の減少は6市町で約3,500世帯とわずか3%の減少に留まっている。 平成30年度の研究で得られた主たる結論は以下の通り。1)複数年の電話帳のマッチングにより居住地変化の80%程度が把握されることが明らかとなった。2)中心市街地が壊滅した岩手県大槌町、宮城県女川町で50%に近い世帯が転居を余儀なくされたことが分かった。3)分析の結果、居住地変化なし11.1万世帯、同自治体内移転1.6万世帯、地域外移転3.6万世帯、転入7,500世帯が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は特に必要となるデータの収集に力を入れた。それらは以下の通り。 ① 国勢調査小地域データ1995,2000,2005,2010,2015 ② 住宅詳細地図 11市町、震災前、震災後、現在 ③ 電話帳11市町、2007,2012,2019 ④ GISデータ こうしたデータを活用し、一次集計として、被災地住民の転居の概要を把握できた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は震災以前と2007年と震災後2012年の被災住民の移動を把握した。本年度は現在(2019年)のデータのマッチングを行うとともにGISデータとの照合を行い、結果の妥当性を検証する。さらに、住宅詳細地図との照合を試験的に開始する。 住所録作成の作業手順は以下の通り。1)Pythonによる電話帳データのダウンロード: 震災前後の固定電話の電話帳(住所、氏名、電話番号)はインターネットからダウンロードが可能である。利用可能なURLとしては以下の例がある。2)重複電話番号の削除: 電話帳には以下のような重複がある。① ある程度の規模の企業・商店では複数の電話番号がある。ただし、大きな企業はタウンページのみへの記載となる。② 個人商店等では商店名と個人名で同一電話番号を重複して掲載されている例がある。③ 同じ電話番号で複数の事業名掲載される以下のような例が多々ある。ここでは同一電話は単一世帯であると仮定する。この場合、商売や事業は廃業や名称変更があるため個人名の方を残すこととした。このプログラムはVBAに依った。 3)2007年の電話帳と2012年の電話帳のマッチングによる居住地移転の同定:本研究では2007年の電話帳の住所を基準として、居住地の移転状況を以下のように仮定した。① 2012年に2007年と同一電話番号、同一姓、同一住所の場合は震災前から継続的に居住しているとした。(姓が同一であれば名が変わっても同一家族と見なすこととする) ② 2012年に2007年と同一電話番号、同一姓、別住所の場合は震災後、同一自治体内での転居したとする。 ③ 2007年にあった電話番号が2012年の電話帳に存在しない場合は地域外(他市町村)へ転居したとする。④ 2012年に2007年に存在しない電話番号がある場合はその世帯は地域外からの転入したとする。
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Causes of Carryover |
PC関連消耗品などの購入予定はあったが、発注が遅れた。少額であるため、次年度の使用計画に変更はない。
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