2018 Fiscal Year Research-status Report
給配水過程における病原細菌リスク増大に対する自由生活性アメーバの寄与とその制御
Project/Area Number |
18K04411
|
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
大河内 由美子 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (00391079)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自由生活性アメーバ / 水道システム / レジオネラ属 / 水質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,末端給水栓における微生物リスク管理の強化を目的として,レジオネラ等の病原細菌のリザーバーとして知られる自由生活性アメーバ(FLA)の水道システムにおける生態特性(特に内部寄生細菌叢)を調べるとともに,微生物リスク増大に対するFLAの寄与を評価し,有効なFLA/寄生細菌類の制御方法を提案する。 平成30年度は,FLAが検出されやすくなる水質条件を抽出するため,使用頻度の異なる貯水槽水道システムの給水栓から採水し,残留塩素濃度と従属栄養細菌数(HPC)を測定した。同時に,FLAを測定するため試料1 Lを孔径8 umのメンブレンフィルターを用いて濃縮し,熱不活化した大腸菌液を塗布した無栄養寒天培地を用いて30℃で培養した。また,試料の残留塩素を中和後,①未ろ過試料(FLA共存系)と②8 umメンブレンフィルターによるろ過済み試料(FLA非共存系)に分け,それぞれ20℃と30℃で1週間静置してFLAの再増殖を比較した(再増殖促進試験)。 調査の結果,FLAは1~9 PFU/Lの濃度で採水直後の試料から検出された。FLAは水温が低下した冬期の試料からも検出され,また残留塩素がほぼ消失した給水栓のみならず,0.4 mg/L超の遊離塩素が残留する試料からも検出された。現在,水道水由来のFLAを分離するための液体培養条件および夾雑細菌・真菌による汚染抑制手順を引き続き検討している。一方,再増殖促進試験の結果,採水直後にFLAが検出されたほぼ全ての未ろ過試料(①)においてFLAプラークの増加が確認された。その増加量は20℃よりも30℃静置下で大きく,今回検出されたFLAは30℃でより増殖しやすい種であったと推測される。なお,30℃に静置した一部のろ過済み試料からもFLAが低濃度で検出され,栄養体のFLAの場合,孔径8 umのメンブレンフィルターでは完全に阻止できない可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,自由生活性アメーバの検出条件を検討するための分離は完了しなかったが,現在引き続き検討中である。しかし,計画2年目後半以降に予定していた精密ろ過膜によるろ過処理の有効性評価については予備回分実験を実施し,本実験に取りかかれる体制を整えたため,おおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,水道水からFLAを分離し培養した上で,自家蛍光を指標とした検出条件の予備的検討を行う。予備実験により,FLAの培養時に夾雑細菌の汚染抑制が大きな課題となっており,抗生物質添加のみでは十分な効果が得られないことが判明している。塩素消毒/熱処理によりFLA 細胞のシスト化しつつ,夾雑細菌を不活化した上で,さらに抗生物質を組み合わせる等の工夫を行い,細菌汚染を回避する予定である。分離培養によりFLA細胞懸濁液を調製できたら,FLA細胞が有する自家蛍光物質を検出可能な励起波長-蛍光波長の組み合わせを探索に着手する予定であり,現在は文献調査により候補対象物質の絞り込みを進めている。また,FLA細胞内部に寄生する健康リスクに直結するアメーバ抵抗性細菌(ARB)に関する情報蓄積を目的として,分離したFLA内部の細菌叢の解析準備も併行して進める。 一方,平成30年度に予備実験を進めた精密ろ過膜によるFLA除去能強化の有効性評価について,まずはFLAが生息する水道水試料を用いて,予め培養したレジオネラ属細菌(臨床分離株ならびに環境(水道水)分離株)を添加して,経時的にレジオネラ属細菌数の変化を調べることで,FLA除去がレジオネラ生残性に与える効果の比較を進める予定である。また,本研究の最終目的である実浄水場試料を用いた精密ろ過膜処理の有効性評価に向けて,浄水場関係者との協力体制の構築を進めていく。
|
Causes of Carryover |
交付決定額が申請額を下回ったため,当初計画していた微粒子カウント式濁度計の購入ができなくなり,次年度使用額が発生した。必要時は他大学の研究者の協力を仰ぎ,測定させていただいているが,機種変更を含めて再度購入可能性を検討する予定である。
|