2019 Fiscal Year Research-status Report
資源・エネルギー回収を最大化する下水処理システムの開発
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18K04412
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
高島 正信 福井工業大学, 工学部, 教授 (30257498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢口 淳一 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80342450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 嫌気性消化 / リン回収 / アンモニアストリッピング / 下水 / 下水汚泥 |
Outline of Annual Research Achievements |
下水汚泥の集約処理に有利となる高濃度嫌気性消化(下水汚泥12~15%、中温35℃、水理学的滞留時間30日)について検討した。定常時の平均値として、VS負荷率3.98 kgVS/L-日でVS分解率56.5%、ガス発生率0.506 NL/gVSと良好な処理結果が得られた。アンモニア阻害の軽減を目的に消化汚泥のアンモニアストリッピングを組み合わせており、温度80℃、初期pH約9、2時間の条件で回分式で実施したところ、平均アンモニア除去率63.0%が得られ、消化槽内の全アンモニア濃度は平均2,570 mgN/Lと、3,000 mgN/Lより低く維持できた。微生物叢解析によると、消化汚泥は比較的限られた微生物種から構成され、一般的な中温消化汚泥と異なっていた。以上より、消化槽内アンモニア濃度を適正に制御すれば、流入濃度15%程度においても安定な高濃度嫌気性消化が可能なことが示された。 次に、下水汚泥からエネルギー、窒素およびリンを回収する嫌気性消化システムについて検討した。下水汚泥濃度9~10%を高濃度・高温嫌気性消化において、消化汚泥のアンモニアストリッピングとその返送により消化槽全アンモニアを平均して1,760 mgN/Lに抑えたところ、VS分解率57.8%、メタン発生率0.321 NL/gVSが得られ、高分子凝集剤のみ用いる一液法の脱水が可能であった。アンモニアストリッピングは脱炭酸後、薬品添加なしで温度70℃、初期pH約9,2時間で実施し、流入汚泥からの窒素回収率20.7%が得られた。消化汚泥に対して水酸化鉄吸着剤を室温、pH4~5,24時間で適用すると、固形性リンの一部も溶解され、流入汚泥からのリン回収率54.6%が得られた。以上より、下水汚泥の高濃度・高温嫌気性消化およびアンモニア・リン酸回収の可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とはやや異なり、汚泥処理系を主対象に実施している。 汚泥処理系においては、高性能な高濃度嫌気性消化をまず中温で取り組み、その後高温でも可能なことを確認している。結果として、有機物分解率が60%近くまで高まっている。このとき、アンモニア阻害を回避するためアンモニアストリッピングを適用しており、消化汚泥からのアンモニア除去と同時に、アンモニア回収が可能となる。概要で記述したように、流入汚泥中窒素の約20%が回収できているが、さらに高める工夫が必要である。 リン回収については、新規のリン酸吸着剤を用いる方法に変更し、その適用性の見通しをたてることができた。概要でも記述したように、固形性リンの一部も溶解されることにより、流入汚泥中リンの50%以上が回収可能であった。したがって、嫌気性消化とリン回収について、大変良好な結果を得ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験計画に前後はあるが、進捗状況および得られた成果はおおむねよく、今後は下水処理系を中心に実施する予定である。そして、下水と汚泥の処理系をリンクさせ、総合的に処理・回収を検討する。 具体的には、下水処理の一次処理において、高効率な固液分離装置と凝集沈殿について検討する。これにより多くの有機物と栄養素を下水から汚泥側に移行させ、汚泥処理においてエネルギー・資源回収を行う。上記したように、高濃度高温嫌気性消化や新規のリン回収法について、2019年度までの研究から目途が立っている。 課題としては、新型コロナウイルスの問題から大学の実験室の使用や下水処理施設への立ち入りなどが困難になる恐れがある。しかし、あと約10カ月残っていることから、調整可能であると思われる。
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Causes of Carryover |
初年度に生じた未使用額がほぼそのまま持ち越された。故障した備品の購入などにあてがい、全額使用する予定である。
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Research Products
(7 results)