2019 Fiscal Year Research-status Report
バイオガスによる阻害物除去が可能な新規嫌気処理リアクターの開発
Project/Area Number |
18K04416
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
小野寺 崇 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (30583356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタン発酵 / 阻害物 / ガスストリッピング / バイオガス / リアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、新規な嫌気性処理リアクターの開発を目指して、主にリアクターの連続実験による処理性能の評価を行った。新規技術は、1相もしくは2相式メタン発酵法に限る従来の概念を脱して、前段(酸生成相/H2S除去/NH3除去槽)と後段(メタン生成相)が上下に半連結した構造により、後段の発生ガスが前段に無動力で供給される仕組みとする。これにより、前段ではストリッピングにより阻害物除去を行い、後段ではメタン生成反応の安定化・高速化を図るものである。連続実験では、有機物負荷 10 kgCOD/m3/dayの実験条件において、流入水に含まれる硫化物濃度を段階的に上昇させ、処理リアクターが許容できる硫化物濃度の把握を行った。本リアクターの性能評価では、有機物除去能やメタン転換率に基づいて行った。本リアクター本新規リアクターに模擬廃水を供給して実験を行った結果、8000 mgCOD/Lの有機物濃度において、1200 mgS/Lの高濃度の硫化物を含む廃水の処理が可能であることが明らかとなった。1200 mgS/Lはメタン生成活性が通常時の10%以下まで低下するレベルであるが、バイオガスによる硫化水素のストリッピング除去により、後段に流入する廃水の硫化物濃度が低下したことが処理の安定化につながったと考えられた。また、バイオガスによる硫化水素の除去機構についても確認した。これらの実験結果をまとめることで、本技術の性能を評価するとともに、本リアクターの実用化に向けて、リアクター構造や運転条件の決定に向けたデータやノウハウの蓄積を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の研究計画どおりに進展しておりデータが蓄積されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、引き続きリアクターの連続実験を行うことで、処理性能の評価とともに、バイオガスにおける硫化物などの阻害物の除去特性の把握を進める。具体的には、リアクター(実験系・対照系)に人工廃水を供給した連続運転により性能比較を行う。人工廃水には、有機物とともに阻害物(硫酸塩など)を加える。連続実験では、段階的に阻害物濃度を増加させることで、有機物濃度(発生バイオガス量)に対する阻害物除去濃度により最大許容負荷を確認する。さらに、本リアクターを設計・作製して連続運転性能を行うとともに、本リアクターの処理性能に及ぼす各因子の影響を把握し、阻害物除去と処理性能の効率に関する最適な条件を求める。また、性能向上や実用化を目指して、ストリッピング効果の向上、汚泥保持機能の最適化、スカムの効率的な除去法、適切なpH管理方法、スケールアップ化(実機リアクターの構造)などの検討も同時に進めることで、リアクターの実現化に資するデータを取得する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴い出張等が制限されたため残額が生じた。使用額の差に関しては、当初の予定に則り、適切に執行していく予定である。
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