2019 Fiscal Year Research-status Report
超高感度遊離残留塩素分析に基づく次世代水質管理手法の開発
Project/Area Number |
18K04420
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
越後 信哉 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70359777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂 浩司 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (60370946)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 遊離残留塩素 / カーボンフェルト電極 / クロラミン / 水道水質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は,塩素が入っていても塩素に由来する臭い(カルキ臭)がしない安全な水道水を作ることである。2019年度は,極低濃度塩素標準液の検定が可能な塩素標準試料不要のプローブ物質(3-クロロ-4-ヒドロキシ安息香酸 (CHBA))による分析法(LC-MS/MSによるもの,以下プローブ法)と,高感度残留塩素選択性電極(以下,電極法)の比較,特に低濃度域での相関と次亜臭素酸に対する評価を行った。 より具体的には,臭化物イオン非存在下では,これらの2つの方法は,遊離塩素が数ppbの条件下でも良好な相関関係にあったが,電極法では臭化物イオン存在下で遊離塩素を添加した場合に生成する次亜臭素酸に応答を示すことが分かった(分析条件の検討を行ったが次亜臭素酸と次亜塩素酸を区別することは困難であった)。つまり,臭化物共存下では,電極法は正の誤差を与えることになる。現行の残留塩素の基準である0.1 mg/L以上であれば,この誤差は多くの場合,水道水中の臭化物イオンの濃度範囲を考えればそれほど大きくないが,本研究で想定する残留塩素濃度を低く維持する場合には,添加した塩素の多くが次亜臭素酸に変換され,電極法で検出され遊離塩素と考えられていたものが実際には遊離の臭素である可能性がある。このことは現行のDPD法も同様であり,今後の低塩素領域での遊離塩素の分析ではプローブ法(本法はLC-MS/MSを用いるものであり,臭素化体と塩素化体を区別できる)により,臭素と塩素を区別して測定することが重要であることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では,2019年度は,電極法における臭素化合物の影響評価,特に次亜臭素酸の影響を評価し,次亜臭素酸と次亜塩素酸の区別ができないこと等,その限界を示すことができた。あわせて,プローブ法の利点についても示すことができ,今後の低濃度域での遊離塩素の測定には,プローブ法が望ましいことを指摘した。以上,最終年度に予定している浄水フローへの適用(低濃度域での残留塩素の安定性)に際しては主にプローブ法を採用して検討を進めるべきであるとの方針を定めることができたことから,概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はさらに,極低濃度遊離残留塩素を確保するための浄水フローに関する多角的評価を進め,次世代の水質管理手法の提案を行うこととしている。ここまで概ね順調に成果が得られており,このまま予定通りに計画を遂行する予定である。なお,試薬中のアンモニウムイオンの影響については,制御法をさらに検討する予定である。
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