2019 Fiscal Year Research-status Report
外力作用条件が実大鉄筋コンクリート部材のひび割れ進展メカニズムに与える影響評価
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18K04422
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 典之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60401270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶原 浩一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 総括主任研究員 (10450256)
長江 拓也 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (90402932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ひび割れ進展 / 幾何学的部材変形 / ひび割れ間隔 / ひび割れ定常状態 / ひび割れ幅分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,実地震を想定した外力作用条件における実大鉄筋コンクリート造建築構造部材の損傷量進展メカニズムを解明し,損傷量評価手法へと展開させることである。 平成31年度(令和元年度)は,RC造壁体載荷実験およびRC梁4点曲げ載荷試験(動的/静的)を実施した。開発を続けている画像計測技術のノウハウを用いて,A.I.を用いたひび割れ領域検出技術を展開し,RC造壁体載荷実験で得られたひび割れ量を精緻に分析し,従来から指摘されていたRC造梁部材および柱部材のみならず,RC造壁部材においても,ひび割れ幅分布関数が対数正規分布に従うことが確認された。また,画像相関法を用いたひずみ計測システム(DIC計測システム)を用いて,RC梁4点曲げ試験におけるコンクリート表面のひずみ分布と主筋ひずみ分布が,ひび割れ進展に応じていどのように推移するかを分析した。ひび割れ定常状態(これ以上新たなひび割れが既発ひび割れ間に発生しない状態)に至る前に主筋の降伏がはじまること,主筋降伏ひずみの数倍(2~3倍)でひび割れ定常状態に至ること,コンクリート表面のひずみはひび割れ幅の増大に対して必ずしも比例的に変化するわけではなく,内部鉄筋との応力伝達を介してひずみ増大期とひずみ維持期とがあることが推察された。 また,実験結果の分析を通して,鉄筋コンクリート造建築構造部材の損傷量進展メカニズムの解明にむけた解析的研究を昨年度同様進めた。昨年度は,幾何学的部材変形法により簡易な(通常の耐震設計で用いるような)解析モデルでもひび割れ進展過程を大まかに推定できる可能性が,柱梁部材だけでなく壁部材についても,修正圧縮場理論を用いることで大まかに推定可能であることが示されたが,今年度は,ひび割れ定常状態に切り替わるメカニズムを精査し,剛性変化からその基準を仮定することで,さらに推定精度を向上させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで培ってきた画像計測技術のノウハウを用いて,動的載荷時にも適用可能な画像計測システムの構築をすすめるとともに,損傷量画像計測において必要な撮影環境条件についても情報整理を行った。RC造梁の4点曲げ動的/静的載荷試験を実施し,その結果をかつての実大部分架構振動実験結果との比較検討し,ひび割れ定常状態に到達するのが内部主筋歪みが縮小試験体および実大試験体によらず降伏ひずみの2~3倍であること,その倍率は載荷速度によって変化する可能性があることを示すことができた。最終年度は,当該メカニズムについてより詳細な検討を行なう予定である。 また,同時並行で進めた解析的検討においては,RC造せん断壁の静的載荷実験を用いた部材変形法による損傷量簡易推定技術の精度向上が図られ,これにより,柱部材,梁部材のみならず壁部材についても簡易な損傷量評価手法の確立に道筋がついた。 なお,現在世界的に問題となっている新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,大学・研究機関における研究活動が大きく制限されている状況であることから,オンライン会議など活用できる技術を最大限生かして研究を進める予定であるものの,実験など人と接する現場対応が必須の活動については難しい局面が予想されるため,これまでの実験結果を踏まえた解析的な検討・分析ができるように態勢を組みなおしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は最終年度であり,これまでの研究成果を踏まえ,ひび割れ定常状態にいたるタイミングを主筋降伏ひずみから判断できるようにし,それを架構全体として評価する際には剛性に着目する必要があることが(壁部材の損傷量簡易評価手法の開発において)判明したので,これらの定量的評価が可能になるようにひび割れ進展メカニズム解明を目指す。特に,主筋ひずみとコンクリート表面ひずみとの関係は比例関係にはなくひび割れ定常状態にいたるまでの主筋とコンクリートの応力伝達変化によって変動することや,コンクリート表面ひずみとひび割れ幅の関係も必ずしも比例関係になっていないことなどが,これまでのDIC計測実験から明らかになってきたことから,これらを踏まえたひび割れ損傷進展メカニズムの分析を進め,部材変形法に基づく損傷量簡易推定手法の進化に繋げる予定である。 なお,現在世界的に問題となっている新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため,大学・研究機関における研究活動が大きく制限されている状況であることから,オンライン会議など活用できる技術を最大限生かして研究を進める予定であるものの,人と接する現場対応が必須の活動については難しい局面が予想されるため,今年度は既往のデータを活用した解析的検討を中心とした活動態勢をとる予定である。
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Causes of Carryover |
防災科学技術研究所(つくば)の大型耐震実験施設において実施予定であった実大振動実験にいおいて,想定したRC部材の適用が共同研究者との相談の結果難しいことが分かり,これを,RC造4点曲げ試験におけるDIC計測および損傷量画像計測における撮影環境条件の精査用の機材費として活用することに変更したため,2019年度計上予算に対して決算結果として余剰分が生じた。余剰分は最終年度において,新型コロナウイルス対策のため研究活動が制限されている状況に鑑み,これまでの実験データを分析し解析手法の妥当性検証を進めるうえで必要な解析機器を拡充させる目的で使用することとし,具体的には,計算機およびプログラムソフトウェア費用に充てる予定である。
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Research Products
(12 results)