2019 Fiscal Year Research-status Report
火災高温時における建築鋼構造の鋼材ひずみ速度の詳細検討と耐火設計の高度化
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18K04429
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尾崎 文宣 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40434039)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鋼材ひずみ速度 / 加熱速度 / 載荷重速度 / 鋼構造耐火 / 高温座屈 |
Outline of Annual Research Achievements |
建築耐火分野において、今まで詳細な検討・評価されてこなかった「高温時鋼材のひずみ速度」と「鋼部材・構造全体の火災時終局強度」の関係を解明するために、ひずみ速度に着目した高温素材引張試験、鋼部材の高温載荷実験と数値解析を新たに実施する。これより火災時におけるひずみ速度変化が部材終局耐力・変形性能に及ぼす影響を検討し、ひずみ速度の視点から鋼材の高温時機械的性質~部材実耐力・実変形性能の関係を新たに明らかにする。得られた成果は、建築耐火実務設計で利用可能な設計強度と各種部材耐力に反映させることで鋼構造耐火設計を高度化し、また部材崩壊までのひずみ速度の実態が解明されることで、JISに規定された現行高温素材試験の画一的なひずみ速度設定値が持つ工学的意味と問題点を明らかにし、現行試験法の抜本的改革も視野に入れた建築耐火向け新試験法の開発と提案を目指す。 本年度においては、鋼柱の高温全体座屈に対して、ひずみ速度と等価な影響を有する加熱速度(荷重一定・温度漸増実験)、および載荷速度(温度一定・荷重漸増実験)に着目し、加熱速度が変化した場合の鋼柱の座屈温度、および載荷速度が変化した場合の鋼柱の高温座屈強度をそれぞれ明らかにした。昨年度の鋼梁の曲げ実験においては加熱速度は大きな影響因子ではないことが明らかとなっていたが、本年度の座屈実験においては加熱速度によって座屈温度が大きく変化することが明らかとなった。この要因として、座屈現象においては高温クリープの影響が大きくなるために、加熱速度が小さく長時間加熱される鋼柱に対してはクリープ変形が卓越し、そのため座屈温度が低くなったものと考えられる。一方、座屈耐力(温度一定・荷重漸増実験)においては、昨年度の鋼梁曲げ実験と同じく、載荷速度が大きくなることで座屈耐力が上昇することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題2年目までにおいて、研究協力者(研究室の学生)の努力により、高温素材引張り実験と応力~ひずみ関係の定式化、および全ての鋼部材(梁および柱)の2種類高温実験(温度一定・荷重漸増実験、および荷重一定・温度漸増)が終了し、ひずみ速度(加熱速度および載荷速度)の影響の明確化、およぼその影響因子の定量化が完了した。さらに、本課題の最終目標である現行高温素材試験法の改良法の仮提案までいたることができた。 これらの進捗により次年度においては、上記実験データのさらなる精査および提案試験法の改良が更に前進できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度ということで、本課題の最終目標である鋼構造耐火分野に対する新しい高温素材引張試験法の提案を行う。すでに本年度の研究成果より、各種部材実験データの取得は完了し、さらに鋼梁の曲げ挙動に関しては数値解析結果と実験結果の比較・検討を行い、本研究で提案した解析手法の妥当性は確認されている。そこで次年度においては数値解析によるパラメトリック計算を行い、各荷重条件および加熱条件下の実大H形鋼の火災時挙動に対してひずみ速度を明らかにし、それらに対応したひずみ速度に対応可能な素材引張試験の改良法を提案する。 本年度までの素材試験法に対する検討から、試験時ひずみ速度は現行の0.3%/min.で最初は実施し、ひずみ1%を超え、2%に至るまでの間でひずみ速度を7%/min.に上昇させることで2種類の鋼材高温耐力が得られるが、それらが加熱速度および載荷速度がそれぞれ異なる梁の高温曲げ、および柱の高温座屈強度の最小および最大値を与えることがわかった。この成果を補強するために実験範囲外の荷重・加熱条件に対してさらに数値解析を行い、この妥当性を検討する。 また昨年度まで得られた実験結果を纏めて国際論文誌への投稿、および国内・国外学会での研究発表を行う。
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Causes of Carryover |
実験をより効率的におこうなために、試験体仕様の変更を行い、当該試験は次年度に行うこととなったため。
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Research Products
(8 results)