2019 Fiscal Year Research-status Report
養生温度がフライアッシュを混合したコンクリートの強度発現に及ぼす影響
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18K04437
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
小山田 英弘 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (80233625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高巣 幸二 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60336948)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 暑中期 / フライアッシュ / 温度応力 / 内部ひずみ / 床スラブ / 耐久性 |
Outline of Annual Research Achievements |
管理用供試体及び柱試験体から抜き取ったコアの強度試験から,材齢7日ではフライアッシュ内割混合コンクリートが普通コンクリートより最大6.7N/mm2低いものの22.5N/mm2の強度を発現した。材齢28日のコア強度では,普通コンクリート,フライアッシュ内割混合コンクリートともに,端部より中央部の強度が高く,かつ,両者は同程度の強度で,7日から28日までにフライアッシュのポゾラン反応による強度増大の効果と考察された。つまり,フライアッシュをセメントの内割りで20%置換しても十分な強度が発現すると思われる。さらに,2019年度と2018年度の構造体強度補正値(以下,S値),既往の研究から得られたS値の検討結果から,フライアッシュを混合した場合,S値は最大で2019年度FA20-Nの0.1N/ mm2,最小で2013年度の-10.4N/ mm2となっており,JASS5で指定されている外気温が25℃以上の場合の規定値6N/mm2よりも大幅に小さな値となっていることを確認した。2019年度は,外気温,コンクリート温度とも最低であったが,これらのことから,フライアッシュをセメントの内割りで置換した場合には,暑中期であっても外気温が25℃未満の場合の規定値3.0N/ mm2で十分に強度管理ができると考えられた。温度応力解析から,温度分布は2018年度の解析結果と同様,水平方向に円状に広がり,上下に筒状に分布し,調合や打込み時の外気温により大きな差があることが分かった。また,外気温が8.3℃,打込み温度が1.5~1.9℃低い2019年度の結果では,中央部と端部の応力の差は前年程大きくはなかった。全体的にみると,前年度の結果から中心部と端部の温度差が大きいほど温度応力も大きくなる傾向がみられたが,今年度も同じ傾向がみられたため,強度差は温度応力による影響である可能性が高いことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の2年目として極一部を除いて予定以上に順調である。2019年度は,2つのテーマについて実験及び検討を行った。先ず,研究実績に記した,フライアッシュをセメントの20%内割りしたコンクリートは,構造体内部の温度上昇を抑え,かつ,必要な強度が1週間程度で得られること,4週以降においてはポゾラン反応による安定的な強度の増進を実験及び解析から確認するため,データ蓄積を図った。圧縮強度試験に関しては,暑中期に施工されるコンクリートにフライアッシュを内割混合することによる強度増大効果を2年間の実験データに加えて,本研究着手以前に実験を行っている強度試験結果を用いて,S値の比較,温度応力解析を交えて検討している。次いで,2019年度から,厚さ200mmの床試験体を作成し,床スラブの耐久性に関する実験を追加したが,床スラブ,特にスラブ下に関しては,これまでの検討例が少ないもので,透気試験,透水試験からフライアッシュ内割り混合による耐久性への影響を確認している。以上,ここまでに以下の知見を得ている。 (1)フライアッシュの混合は,温度上昇の低減に有効で,初期においても十分な強度が確認され,暑中期に施工されるコンクリートに対する有用性が高い。また,温度応力解析からも,普通コンクリートと比較して,打込み時のコンクリートの温度差,打込み後の部位別の温度差から,応力差が生じていることが確認できる。 (2)床試験体上下面において,フライアッシュを混合した場合でも耐久性に差が無く,適切な養生により上面の緻密性が確保されている。 しかしながら,温度応力解析と強度に影響する組織の微視的な変化につい,内部に埋め込んだひずみゲージによる観測では,凝結から硬化初期段階で明瞭な傾向を把握するには至っておらず,次年度に向けて測定方法等,改良すべき課題を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度,2019年度に引き続き,暑中期及び標準期の2回,建築用として標準的な強度レベルの普通コンクリートを比較対象に,フライアッシュを内割り20%混合し,これらを打ち込んだ実大柱試験体を作成,強度増大効果を検討する。これは,本研究着手前からデータを蓄積しているが,気温やコンクリート温度などの条件が異なる要因を考慮するためのデータ蓄積をさらに進め,S値による補正の要否に関する知見を拡げ信頼性を高める。これにより,暑中期のコンクリートにおける強度低下を始めとする性能低下を普通ポルトランドセメントからフライアッシュセメントに代替することで補えることを確認する。 これらを工学的に考察するため,強度に関しては温度応力解析を引き続き行う。具体的には,本研究着手後3年間データに過去のデータも加えて,コンクリート内の温度分布から温度応力を計算し,コア強度との比較を交えて考察する。また,過去2年間,測定が難しかった材齢初期の内部のひずみ分布については,試験体内部に埋め込むひずみゲージに,測定性能向上のための改良を施して行い,凝結から硬化初期に至る段階での温度応力の影響がコンクリートの組織に影響を及ぼすことの有無を確認する。2019年度に追加した床スラブ及び壁の実大試験体による耐久性に関する実験では,基礎的性能である圧縮強度に加えて,耐久性評価を目的とした透気試験,透水試験により,表面のミクロ的な状態の違いを比較することで,フライアッシュ混合による耐久性向上効果のデータ数を増やし信頼性向上を図る。これは,これまで実構造物では劣化が見逃されがちで,かつ,研究実績が少ない,スラブ下での中性化抵抗性を主とした耐久性の検討を行うもので,スラブ下の耐久性に関する新たな知見を得る。
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Causes of Carryover |
2019年度は,3月に予定していた国内学会が中止となり,研究報告や研究内合わせが全て途中で中止されたことで旅費支出が減少した。また,2019年度中に予定していた2019年度及び2020年度に実施するための計測器の改造及び納品が,新感染症の影響で不可能となり,全て次年度に持ち越されている。これらにより使用額に差が生じた。計測器の改造費は約20万円である。 2020年度には,計測器の改造を行えるため,これを用いた持ち越しとなっている実験及び測定を行う予定である。
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