2019 Fiscal Year Research-status Report
縦型単層ラチス構造の座屈および座屈後挙動に関する研究
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18K04440
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
山下 哲郎 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (80458992)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 円筒ラチスシェル / 軸圧縮実験 / 弾塑性座屈 / 3Dプリンター / アルミ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は軸圧縮による弾塑性座屈実験を計3体の縦型円筒ラチスシェル縮小試験体で実施できた。2体は正三角形格子、1体は正六角形格子で構成された試験体で、材料はアルミ合金、3Dプリンターの粉末積層法により製作した。 実験は2回に分けて実施した。最初の実験の試験体は直径160mm、高さ136mm、厚さ2mmの正三角形格子円筒ラチスシェル1体であり、非接触画像処理変位計で計測したシェル面外方向の初期不整振幅は0.65mm(半径の0.8%)である。アムスラーで加力し加力速度は0.02mm/sとした。座屈モードは境界付近で生じる軸対称型のいわゆる象の脚座屈であり座屈波長は部材長さの約1.5倍である。この実験では材料の靭性が低く、座屈後すぐ連鎖的に破断が生じ急激に耐力低下を生じた。実施した追解析で破断を考慮しない梁要素による弾塑性座屈荷重は実験結果の約2割、破断を考慮したソリッド要素による数値解析は実験結果の約1割程度高いが、概ね有限要素解析で座屈特性を追跡できる。また初期不整の影響は小さいことも判明した。 2回目の実験は2020年1月に実施した。試験体は直径162mm、高さ約100mm、厚さ1.7mmの正三角形並びに正六角形格子の円筒ラチスシェルで、成形後の焼きなまし処理により靭性を改善したアルミ合金である。初期不整は正三角形格子試験体が0.81mm(半径の1%)、正六角形試験体が0.73mm(半径の0.9%)である。座屈モードは正三角形格子は前回と同様波長の短い象の脚座屈であったが、正六角形ではシェル全体に及ぶ長い波長の軸対称座屈を生じた。また座屈が局所的な三角形格子では顕著な破断も生じた。座屈耐力は0.2%耐力から算定する降伏荷重と概ね等しい。座屈後耐力は三角形格子では急激に減少するが、六角形格子では塑性率が概ね3付近まで耐力を保持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下により当初の予定より半年程度遅延。 1)試験体製作の方法、材料(アルミ合金による3Dプリント)と、予算の範囲で試験体製作を依頼できる企業を見出すのに予想外に時間を費やした。 2)計測の準備(非接触式3次元計測システム(VENUS3D)のマーカーの間隔が、試験体が小さいため狭く、計測カメラの同士の干渉を避ける方法を見出す)に時間を費やした。 3)試験体の初期不整の計測精度の向上のため、東京都産業技術研究所にて3Dスキャンを依頼したが、上記VENUS3Dの計測とは完全には一致せず、その原因究明のため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)実験結果を有限要素法により追解析し試験体の挙動を分析するが、強非線形挙動であるため要素や材料特性のモデル化が実験結果の追跡精度に大きく影響する。解析によるパラメトリックスタディを可能にするため、実験挙動を精度よく再現し得るモデル化と解析法を見出す。 (2)3Dプリントに用いるアルミ合金は熱処理を施しても材料としての靭性が低く、座屈後に亀裂や破断を生じ、座屈そのものによる耐力低下の評価にはあまり適していないことが判明したため、ステンレス鋼や高分子材料など高靭性材料による試験体の製作の可能性を調査し、予算的に可能であれば実験を実施する。 (3)アルミのような塑性域でも耐力上昇が顕著な材料で作られたラチスシェルの弾塑性座屈耐力の評価に、既往の正規化細長比と圧縮強度曲線による方法(日本建築学会「ラチスシェル屋根構造設計指針」)を用いると大幅に過小評価となる。またこの方法では降伏、座屈後の靭性(変形性能)も評価できない。したがって降伏後の塑性座屈荷重の評価法として1960年代に弾塑性座屈荷重の評価に用いられた接線係数理論に注目する。連続体円筒シェルについてはTimoshenkoが接線係数とシェルの軸対称弾性座屈荷重に基づく簡易な方法を提案している。現代では線形座屈解析が比較的容易に計算機で実施できるため、弾塑性座屈荷重と靭性の評価を接線係数と線形座屈解析で簡易に行える方法を探求する。 (4)実際に搭状構造物として使用を想定すると、せん断や曲げによる座屈耐力の評価が必要となるため、主に数値解析による研究を実施する。
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Causes of Carryover |
理由:実験の試験体と器材購入に別途大学の予算を充当できたため
使用計画:高靭性材料による3Dプリント試験体の製作、国際会議における発表、論文登載料など
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