2019 Fiscal Year Research-status Report
建築物の耐久性向上のための地球環境配慮型高流動・高靭性コンクリートの収縮低減
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18K04442
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
渡部 憲 東海大学, 工学部, 教授 (10384934)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 構造材料 / 繊維補強コンクリート |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートの収縮ひずみ低減のための調合や力学特性を明らかにするため、以下の検討を行った。1)調合検討:骨材種類(再生)、水結合材比(40~60%)、繊維体積混入率(PVA繊維を使用、3%)、混和剤(増粘剤、高性能AE減水剤、収縮低減剤)、フライアッシュ(置換率20%)、膨張材(石灰系、カルシウム・サルフォ・アルミネート系を単独または混合使用、単位量40~120kg/m3)を要因として、調合を試し練りにより決定した。目標スランプフローは、65㎝とした。2)各種破壊試験:圧縮および曲げ破壊試験を行った。3)長期性状試験:拘束膨張および自由膨張収縮試験を行った。 検討の結果、以下の知見が得られた。1)調合検討の結果、収縮低減剤や膨張材を使用した場合のスランプフローは、62.5~69.0cmとなり、材料分離を生じることなく、目標スランプフロー65cmを概ね達成できた。2)各種破壊試験の結果、収縮低減剤や膨張材を使用した場合においても、高流動・高靭性コンクリートが実現可能であることがわかった。3)長期性状試験の結果、材齢7日における拘束膨張ひずみは、単位膨張材量を40および80kg/m3とした場合では不明瞭であったが、単位膨張材量を120kg/m3とした場合、カルシウム・サルフォ・アルミネート系膨張材を使用すると、最も大きくなることがわかった。また、材齢63日における自由膨張収縮ひずみは、膨張材および収縮低減剤無添加で収縮側に2084μ、膨張材(石灰系、80kg/m3)および収縮低減剤添加で収縮側に35μとなっており、膨張材および収縮低減剤を併用することで、収縮ひずみを大幅に低減(膨張材および収縮低減剤無添加との差で2049μ)できることがわかった。 令和元年度の研究成果により、収縮ひずみ問題の解決手法が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、地球環境に配慮した、鉄筋コンクリート建築物の耐久性向上技術の提案を目的としている。筆者が注目した材料は、高靭性セメント複合材料であるが、高靭性セメント複合材料の普及には、流動性の改善、収縮ひずみの低減が重要な課題である。これまでに筆者は、流動性改善のため、再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートを開発した。そこで本研究では、まず、収縮ひずみ低減に関する検討を行うこととした。1年目となる平成30年度は、収縮ひずみを低減させた再生細骨材を使用した高流動・高靭性モルタルの開発を目標とした。2年目となる令和元年度は、収縮ひずみを低減させた再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートの開発を目標とした。3年目(最終年度)となる令和2年度は、収縮ひずみを低減させた再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートを使用した鉄筋コンクリート梁試験体の載荷実験および数値解析を行い、性能向上メカニズムを解明することを目標とした。 2年目となる令和元年度は、収縮ひずみを低減させた再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートを実現させるための調合を検討し、各種の破壊試験、長期性状試験を実施することにより、収縮ひずみを低減させた再生細骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートの調合や力学特性を明らかにすることを目指した。【研究実績の概要】に示した通り、収縮ひずみを低減させた再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートは実現可能でること等の知見が得られており、本年度の目標は、概ね達成された。 以上を踏まえ、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目(最終年度)となる令和2年度は、前年度の試験結果から収縮ひずみを低減させた再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートの力学モデルを構築する。また、鉄筋コンクリート梁試験体の載荷試験および数値解析を行い、鉄筋コンクリート部材への適用性を明らかにするため、以下の検討を行う。1)力学モデル構築:収縮ひずみを低減させた再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリートの圧縮軟化挙動および引張軟化挙動について検討する。2) 収縮ひずみを低減させた再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリート製鉄筋コンクリート梁試験体の載荷試験および数値解析:載荷試験の概要は、以下の通りである。鉄筋コンクリート梁試験体は、主筋D-16(SD490)、引張鉄筋比5.88%、梁せい180mm×梁幅100mm×梁長さ1500mm、支点間距離1300mm、せん断スパン長450mm、載荷点間距離400mmとする。載荷は、1000kN万能試験機を使用して行う。また、数値解析の概要は、以下の通りである。鉄筋コンクリート梁試験体の載荷試験を対象とした3次元非線形FEM解析を行う。コンクリート各要素は8節点アイソパラメトリックソリッド要素とし、主筋は付着すべり埋め込み鉄筋要素とする。解析では、自重および膨張収縮ひずみを加えた後、載荷位置に強制変位を漸増的に加える。 今年度の重点管理項目は、再生細・粗骨材を使用した高流動・高靭性コンクリート製鉄筋コンクリート梁の性能に及ぼす膨張材や収縮低減剤使用の影響を明らかにすることである。問題が生じた場合、研究協力者(企業協力者)の助言を受け対応する。 なお、新型コロナウイルス対策のため、十分な実験を実施できない可能性もあるが、その場合、解析を主体として研究を進める。
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Causes of Carryover |
・理由:次年度使用額は1,056円であり、ほぼ計画通り使用した。 ・使用計画:令和2年度は、鉄筋コンクリート梁試験体の載荷試験を行う。当初計画より、物 品費がかさむことが予想されるため、生じた次年度使用額を使用する。
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