2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K04443
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山本 憲司 東海大学, 工学部, 教授 (70311884)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 引張ブレース / 格子シェル / 非抗圧性 / 線形座屈解析 / 偏在荷重 / 初期応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレテンションの無い引張ブレースで補剛された格子シェルモデルに対し、偏在荷重を受ける場合の弾性座屈荷重を、申請者らが考案したブレースの非抗圧性を考慮した線形座屈解析手法(以下、非抗圧線形座屈解析)を用いて、解析を行った。荷重の偏在率が大きいほど非抗圧線形座屈解析の結果は弾性座屈荷重との誤差が大きくなる傾向があることが分かった。偏在率0.7で弾性座屈荷重が1.7倍程大きく評価されるケースがあり、偏在荷重に対して精度よく予測することは困難であることが分かった。 座屈前変形時に圧縮、引張状態が混在するモデルに対して非抗圧線形座屈解析を行った。荷重は等分布荷重とした。このケースでは比較的精度よく弾性座屈荷重を予測できることが分かった。 引張ブレースは格子シェルを建設した後に取り付けられると想定される為、格子材には固定荷重による初期応力を受けるが、ブレースは初期応力を殆ど受けない。この為、プレテンションの無い引張ブレースで補剛された格子シェルモデルに対し、固定荷重による初期応力の有無が弾性座屈挙動に与える挙動について調査した。この結果、ブレースの初期応力の有無が座屈挙動に与える影響はごく小さいことが分かった。この為、非抗圧線形座屈解析にブレースの初期応力を考慮する方法については検討する必要が無いものと判断した。 引張ブレース補剛された格子シェル模型試験体を塩ビパイプを用いて作成し、加力実験を行った。引張ブレースにはステンレスワイヤーを用い、プレテンションを与えないようにした。また、比較のためにブレース補剛の無い試験体についても加力実験を行った。両試験体の座屈耐力の比較により、プレテンションを導入しない引張ブレースの補剛効果を確認することができた。ただし、最終的な座屈モードが数値解析と異なるモードであった為、今後詳細な検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した内容のうち、偏在荷重を与えたモデル及び引張・圧縮となるブレースが混在するモデルについて座屈挙動を調査と、自重による初期応力が座屈挙動に与える影響についても調査した。また、模型実験も実施した。検討したモデルはEP曲面シェルのモデルに限られているが、プレテンションを導入しない引張ブレースで補剛されたラチスシェルの基本的な座屈性状について把握することができた。 未検討な内容として、ブレースにプレテンションを導入したモデルの座屈挙動の把握とプレテンションを導入しないモデルとの性状の比較、球形や円筒シェルなどその他のシェル形状のモデルについての検討、数理モデルとしてではなくより実際の設計を意識したモデルや分析とすること、などを考えている。3か年の研究期間に対して研究全体の1/3程度の検討は実施できているものと考え、進捗状況は概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の模型実験では、引張ブレースによる補剛効果は確認できたものの、最終的な座屈モードが数値解析とは異なるモードであった。これはブレースの軸力を計測する為に取り付けたプラスチック製のプレートが、座屈が進行する過程で破断した為と考えている。プレートの材料の見直しを行い、計測のし易い低剛性でありながら強度や靭性のあるプラスチック系材料を選定し、2019年度に再度模型実験を行う。 数値解析では、2019年度にブレースにプレテンションを導入したモデルの座屈性状について詳細に調査を行い、プレテンションを導入しないモデルとの座屈耐力の比較を行う。また、模型実験においても、ブレースにプレテンションを導入した試験体を作成し、数値解析との比較を行うことで、両者の結果の妥当性の検討を行う。 最終年度の2020年度では2018年度、2019年度で得られた知見をもとに、数値解析における検討モデルの追加や見直しを行い、プレテンションを導入しない引張ブレースで補剛されたラチスシェルについて、様々なシェル形状、外力分布のモデルに対して座屈性状を調査する。これらの結果をもとにブレースの補剛効果の有無、ブレース補剛が無い場合と比べて部材断面をどの程度低減可能か、またはプレテンションを導入した場合と比べた場合の優位性の有無など、建設実現の可能性について明らかにする。
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Causes of Carryover |
科研費申請時に2018年度と2019年度の模型実験の試験体作成費、試験体計測費を一桁誤って記入して申請してしまった為、当初の計画を実行するには予算が大幅に不足する状況になった。この為、数値解析で使用予定であった古くなったワークステーションの買い替えやソフトウェアの購入を全て諦め、現在の解析環境で研究を遂行することにした。この使用計画の変更によって意図的に残した2018年度の20万円を、2019年度に行う模型実験の試験体作成費、試験体計測費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)