2018 Fiscal Year Research-status Report
建築構造の耐震ロバスト性数値実験システムへの数理的アプローチ
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18K04444
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山川 誠 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (50378816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 康行 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 教授 (00410374)
朝川 剛 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (00806127)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 建築構造 / 耐震設計 / ロバスト性 / 最適設計 / 動的応答 / 地震動 / 数値実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
建築構造の耐震設計におけるロバスト性(以下、耐震ロバスト性)向上を目的とし、研究を進めた。外乱および構造物パラメータに不確定変動を与え、応答の変動量の少なさを耐震ロバスト性と解釈し、構造最適化手法により耐震ロバスト性を向上させた設計解を求めた。得られた研究実績は以下の通りである。 1)順序統計量により耐震ロバスト性を評価し、時間領域での応答の非線形性を考慮可能なロバスト最適設計法を提案した。制振ブレースつき鋼構造骨組を対象として、地震動の位相特性および地盤特性の不確定性が構造物に与える影響を評価し、その影響が最も少なくなる設計解を求めた。 2)柱梁部材よりも高い材料強度を有する鋼材をブレースに用い、さらにブレースの作用開始点を遅らせることにより、柱梁部材が降伏した後も弾性水平抵抗要素を確保することが可能である。変位制御型PC鋼棒ブレースとしてこのような弾性水平抵抗要素を実現させ、過度な層間変形の集中を抑制することにより、耐震ロバスト性をどの程度向上させることが可能かを調べた。 3)変位制御型ブレース要素では、初期状態で端部とプレートが離間状態にあるが、層間変形が指定量に達した時点で端部とプレートに接触が生じる。このプレート離間状態から接触状態への移行時に、衝撃的な応答加速度が生じるおそれがあるので、緩衝材として硬質ゴムと皿ばねを利用することを検討した。 4)空間構造における耐震ロバスト性の向上を目的とし、単層ラチスドームに複数小型TMDを空間・周波数領域の両方で分散配置する構造システムの検討を行った。停止規則に順序統計量を利用した構造最適化法により、事前に割り当てられた精度を確率的に満たすことが保証されることを示した。数値解析例により、均等配置したTMDに比較して、本提案方により振動制御性能が2倍程度向上することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)地震動の位相特性と地盤特性の同時不確定性をもつ鋼構造骨組の設計問題に、順序統計量を用いたロバスト最適化法を適用した。数値解析例においては、下層部に大きな制振ブレースを持つ設計解が高い耐震ロバスト性を示した。 2)特定層への変形集中を防ぐ設計として、変位制御型PC鋼棒ブレースと制振機構(オイルダンパー)を併用することにより、通常の耐震設計の想定を超えるPGV 100cm/sec相当の大きな地震動に対しても特定層への変形集中を抑止することが可能であることを数値解析例により確認した。 3)変位制御型ブレース要素端部の衝突緩衝材として硬質ゴムと皿ばねの利用を検討した。緩衝材を端部に設けてプリテンションを加えた解析モデルによる数値解析を実施し、接合部での残留変形の抑制効果を検証した。さらに自由落下による端部とプレートの衝突実験を行い、緩衝材による衝撃力と応答加速度の低減効果を調べ、皿ばねの有効性が示唆される結果を得た。 4)停止規則に順序統計量を利用した最適設計法を提案し、単層ラチスドームへの小型TMDの最適設計問題に適用した。数値解析例により、均等配置のTMDに比較して振動制御性能が2倍程度向上することを確認した。ただし、設計解は入力の方向性に大きく影響を受け、また主構造物の構造特性の変動にも敏感であるので、よりロバスト性を向上させられる設計法を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
構造物、地震動特性の両方に不確定性が含まれる場合の最悪応答を、順序統計量から予測するという観点から、順序パラメータ、予測精度、必要標本数の関係について理論解析を行い、その関係性を理論的に究明することを引き続き行う。 さらに、今年度までに開発した要素技術を統合し、これらを実装した数値実験システムを開発し、パラメータ変動に対する『制振装置による減衰効果』、『制御要素による心棒効果』、『両効果の併用』の応答低減率を調べ、最適な構造形式についての定量的検討を行う。
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Causes of Carryover |
理論的検討を集中的に行い、その実装である数値実験システムの開発を次年度に計画を変更した。数値解析に必要なPCワークステーションの購入時期を遅らせたため、次年度使用額が生じた。本件による研究課題遂行上の影響はない。
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Research Products
(7 results)