2019 Fiscal Year Research-status Report
構造体コンクリートの材料分離に伴う品質低下を防止するコンクリート工事方法の確立
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18K04446
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
寺西 浩司 名城大学, 理工学部, 教授 (30340293)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 材料分離 / 間隙通過性 / 粗骨材沈降 / 高流動コンクリート / 細骨材種類 / セメント量 / 粗骨材量 / チクソトロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)高流動コンクリートの材料分離抵抗性および間隙通過性の評価 細骨材種類や混和剤種類を変化させたスランプロー45cmの低粉体系高流動コンクリートに対し、様々な分離抵抗性・間隙通過性評価試験を実施し、さらに、小型壁モデル型枠への打込み試験を行った。そして、高流動コンクリートの材料分離抵抗性や間隙通過性を評価するための試験方法について検討した。その結果、①自己充填で高流動コンクリートを打ち込む場合、鉄筋間通過を伴う充填性を評価するためにはJリングフロー試験のPJ値が有用である、②振動締固めを伴って高流動コンクリートを打ち込む場合、粗骨材沈降に対する抵抗性を無振動下で行う試験により評価することには限界がある、③加振ボックス充填試験のB室単位粗骨材量、Jリングフロー試験のB値などにより鉄筋間通過時の粗骨材の分離抵抗性を評価できる可能性がある、などの知見を得た。 また、セメント量や粗骨材量を変化させた高流動コンクリートに対し、上記と類似の実験・検討を行い、その結果、上記①および③と同様の知見を得た。また、そのほかに、自己充填で高流動コンクリートを打ち込む場合、粗骨材の沈降に対する抵抗性を材料分離の目視判定により評価できる可能性が高い、などの知見を得た。 (2)種々の混和材を添加したセメントペーストのチクソトロピー性の検討 チクソトロピー性を付与してコンクリートの材料分離を抑制するという手法の可能性を探るため、その基礎研究として、種々の混和材を添加したセメントペーストのチクソトロピー性を二重円筒型回転粘度計により測定した。その結果、ダイユータンガムやグァーガムなどの多糖類系混和材は、セメントペーストに添加すると、降伏値および塑性粘度に比べてチクソトロピー性が顕著に増大するため、チクソトロピック剤として有用との結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた「壁試験体に対するコンクリートの打込み実験」は、当初計画していた通りに概ね実施することができた。また、この実験により、昨年度の研究で未確認事項として残された「構造体コンクリートの材料分離の度合いに対するマトリックスモルタルの影響(すなわち、細骨材種類やセメント量などの影響)」に関しても十分な実験データを収集することができた。 なお、本年度は、上記の「5.研究実績の概要」に示した検討課題のほかにも、科学研究費補助金申請時の研究計画書に研究課題として挙げていた「構造体コンクリートの材料分離に伴う品質低下を防止する新構造材料の開発」に取り組んだ。この課題は、研究代表者がこれまで開発を行ってきた「構造躯体用モルタル」(粒度分布を最適に調整して実積率を高めた細骨材を用いることにより、通常のモルタルよりも骨材量を増やし、乾燥収縮をコンクリートと同程度に抑制し、コンクリートの代替材料として構造躯体に使用することを可能にしたモルタル)を高流動化して材料分離を抑制できる新しい構造材料として利用する、との着想に基づいたものである。しかしながら、本年度に行った各種実験の結果から、乾燥収縮の抑制に必要な骨材量を確保しつつ、材料分離しないように構造躯体用モルタルを高流動化することは困難との結論に至った。したがって、本課題についてはこれ以上の検討は今後行わないこととした。そこで、今後は、その代わりの材料分離抑制の新しい手段として、「5.研究実績の概要」に上述した「チクソトロピー性を付与することによりコンクリートの材料分離を抑制する手法」の検討に取り組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)高流動コンクリートの材料分離抵抗性および間隙通過性の評価 本年度に実施した「細骨材種類や混和剤種類を変化させた低粉体系高流動コンクリートの小型壁モデル型枠への打込み実験」をさらに継続して実施する予定である。本年度は、スランプロをー45cm、目標圧縮強度を27N/mm2とした高流動コンクリートを対象として実験を行ったが、次年度は、「スランプフロー55cm、目標圧縮強度30N/mm2」および「スランプフロー60cm、目標圧縮強度45N/mm2」の高流動コンクリートに対して、本年度と同様の内容の実験を行う。 (2)種々の混和材を添加したセメントペーストおよびモルタルのチクソトロピー性の検討 次年度も、本年度に引き続き、チクソトロピー性を付与してコンクリートの材料分離を抑制することを目的とした検討を行う。次年度は、本年度の研究でチクソトロピック剤としての適性が高いと判断された混和材を対象とし、フロー値や水セメント比などがセメントペースト試料のチクソトロピー性に及ぼす影響をより詳細に調べる。また、実験では、ペースト中における個体粒子の凝集の形成・解消に要する時間なども測定する。さらに、これらの次の段階として、チクソトロピック剤の種類や粉体・骨材粒子の粒度分布・形状などを変化させたモルタル試料のチクソトロピー性を調べるための実験を行う。 (3)ガイドラインの作成 次年度が科学研究費補助金による研究の最終年度となるため、本研究で得られた知見と取りまとめ、構造体コンクリートの材料分離に伴う品質低下の抑制を目的とした調合設計法、施工方法、品質管理・検査方法に関するガイドラインを作成する。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度は、「壁試験体に対するコンクリートの打込み実験」を名古屋生コンクリート協同組合と共同で実施することになり、実験費用も分担したため、その分の未使用額が生じた。 (使用計画) 次年度は、科学研究費補助金による研究の最終年度にあたるため、当初、大きな実験を予定しておらず、そのための費用も見込んでいなかった。しかし、結局、「8.今後の研究の推進方策」に上述した種々の実験を次年度に実施することとしたため、主にそれらの実験のための費用に「次年度使用額」を充当する。
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Research Products
(5 results)