2018 Fiscal Year Research-status Report
歴史的市街における時間的重層性を形成する空間更新の実態解明と情報共有モデルの構築
Project/Area Number |
18K04480
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳沢 究 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60368561)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インド / ヴァーラーナシー / 街路空間 / 再開発 / 3Dスキャン |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はヴァーラーナシー(インド、ウッタル・プラデーシュ州)における現地調査を実施し(2018年9月12日~26日)、主に以下の3点の調査およびその結果の検討を行なった。 ①街路空間の状況調査:1929年および2000年の1/1000地図を基に、旧市街中心部に設定した調査範囲内の全街路を歩き、 2000年以降の街路形態の変化を確認・記録するとともに、街路から確認できる店舗種の分布、街路に張り出したプラットフォーム等のストリートファーニチャーの有無、街路に散財するゴミの集積所、多数のバイクの駐輪状況など、街路空間の利用状況を反映する要素・現象に関する悉皆的把握を行なった。 ②街路空間の3Dスキャン予備調査:簡易な3Dスキャンカメラを導入し、本来屋内撮影を対象とした機器を外部空間で運用するためのノウハウ確立のため、京都での試行およびインドでの街路空間スキャンの予備調査を行った。京都での試行は、京都大学キャンパス内の、ヴァーラーナシーの街路を模した狭隘なドライエリアにて実施、機器の操作方法のトレーニングと撮影データの性状確認を行い、基本的な撮影手法を確立した。インドでの現地調査時には旧市街の典型的な街路形状を示す3ヶ所をモデル街路として選定し、京都での試行をふまえ、実地運用にあたっての課題や効率的撮影方法の検討を目的とする予備調査を行った。 ③旧市街の再開発状況の記録:現地調査を通じて、ヴァーラーナシー旧市街中枢部に位置するVishwanath寺院とガンジス川を直結する広幅道路("Kashi Vishwanath Corridor"と通称される)を建設するための、大規模なクリアランスを伴う再開発が行われていることを確認した。再開発は2018年より用地買収と既存建物の解体が本格化しており、クリアランスの現況記録を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りの調査を実施し、分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
街路空間の変容に関しては、これまでに得られたデータ・資料の整理・分析をすすめ考察を深めるとともに、すでに入手済みの1884年製地籍図との比較から、街区内の地割の変容が街路形態に与えた影響を明らかにする。また融合寺院に関する研究をすすめ、街路空間の変容プロセスとメカニズムを具体的に明らかにする。 街路空間の3Dモデル化に向けては、撮影により得られる3Dモデルに、街路空間の変容履歴などの情報をマッピングする手法の検討が、続いての課題である。 本研究の大きな目的は、歴史的に形成された都市空間の時間重層的な価値を維持した漸進的な開発手法の確立にあるが、その目的意識と対極にあるような大規模クリアランスが進行中であることが判明したため、当該再開発が既存市街に与えるインパクトについて、緊急の調査と検討を要する。
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