2020 Fiscal Year Research-status Report
歴史的市街における時間的重層性を形成する空間更新の実態解明と情報共有モデルの構築
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18K04480
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳沢 究 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60368561)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インド / ヴァーラーナシー / 街路空間 / 3Dスキャン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年3月以降の新型コロナウィルスの影響によるインドへの入国禁止措置のため、予定していたワークショップをはじめ、現地での調査は一切実施できなかった。そのため主として昨年度までの調査データの整理と分析を行った。ヴァーラーナシー旧市街の街路の空間構成の特徴として、袋小路が多く、雨季には回遊性が変化し、また街路が狭く歪んでいることなどの点が挙げられ、それらが迷宮のような街路の空間体験を形作っていることが指摘できる。街路幅員は住宅地において狭く、店舗の多い街路や巡礼路は比較的広い傾向がある。古地籍図との比較から、街路は徐々に建て詰まっており、その結果街路の回遊性が失われる変化も起きる一方、人通りが多い店舗の多い街路や巡礼路はそのような建詰まりが少ないことがわかった。利用特性に応じた街路の維持と建詰まりの均衡により複雑な街路が構成されてきたと考えられる。3Dスキャンを通じた街路空間の特性把握の試みからは、地図や立面図などによる平面的な理解に留まらない、地形の影響を受けた街路の立体的な特徴が理解しやすい。同地の街路空間の立体的な特徴として、ガンジス川沿いの自然堤防が生み出す高低差の変化、また融合寺院が垂直方向の建設を抑制することで生じる街区の起伏を指摘できる。ヴィシュワナータ寺院周辺の既存街区の履歴を一掃する再開発地の調査結果からは、街区解体の結果として融合寺院が再露出する現象が多数確認され、このような大規模な変化の中でもなお寺院が定点として存続しうること、またその一方で開発の障害になるため解体されたであろう寺院の事例が確認され、都市空間の変容過程における寺院の挙動に関する貴重な情報を収集することができた。上記の研究成果を2020年度の日本建築学会大会で発表した。また、これまでに撮影した街路空間の3Dモデルをウェブサイトを通じて一般公開する試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は引き続きヴァーラーナシー(インド、ウッタル・プラデーシュ州)を中心的なフィールドして、昨年度までに撮影した3Dスキャンデータを用いて現地での住民ワークショップを開催し、3Dモデルの活用可能性や情報共有ツールとしての有効性を検証する予定であったが、2020年3月以降の新型コロナウィルスの影響によるインドへの入国禁止措置のため、予定していたワークショップをはじめ現地調査が一切実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
街路空間のマクロな変容に関しては大枠を把握することができたため、よりミクロな視点から融合寺院現象を中心とした街路および街区空間の具体的な変容、建詰まりのプロセスに関する分析をすすめている。街路空間の3Dモデルの作成については、街路空間の変容履歴情報のマッピングの試行とワークショップ等を通じたモデルの活用可能性や情報共有ツールとしての有効性の検証が、引き続きの課題であるが、今年度もインドにおける調査やワークショップの実施は困難と予想されるため、京都あるいは渡航可能な都市における歴史的街区を別途フィールドとして設定して実施する方法を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響によるインド入国禁止措置により、予定していた現地調査等が実施できなかったため。
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Research Products
(6 results)