2019 Fiscal Year Research-status Report
重文民家を住みつぎ居住文化を伝える次世代担い手支援の研究
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18K04481
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗本 康代 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (20410954)
中尾 七重 山形大学, 理学部, 研究員 (90409368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重文民家 / 世代継承 / 住み継ぎ / 維持管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
①全国の2018年度に実施した、重文民家の次世代継承についてのアンケ-ト調査の回答デ-タを、これまでに研究代表者が蓄積してた重文民家の基礎デ-タと組み合わせて分析を深めた。住み継ぎは家族の事情によるところが大きいが、重文民家の立地などの条件も一定影響している傾向がみられた。結果の一部は、日本建築学会近畿支部研究報告集に投稿した(2020年3月)。 ②重文民家の活用・公開を次世代が実施するモデルの一つとして、2019年10月に奈良県の重文民家一軒において地域住民を対象とした演奏会を実施し、その実施の課題を参加者や実施関係者へのアンケ-ト調査等から検討した。 ③重文民家の建物および住文化の継承に関わる具体的な課題の把握については、8住宅を訪問して次世代継承者を対象にインタビュ-調査を実施した。この結果の一部を2020年度の日本建築学会学術講演会梗概集に投稿した。 ④重文民家の継承者の支援に関わる海外事例として、英国のHistoric Houses主催の次世代継承セミナ-にオブザ-バ-参加し、資料取集を行った。また、Historic Housesの次世代メンバ-の会代表者らの住宅(7軒)を訪問し、歴史的住宅の運営や継承に関する考え方について意見交換を行った。さらに、「全国重文民家の集い」と共同して、英国の歴史的住宅の次世代メンバ-の代表者と重文民家の若手世代とが意見交換を行うセミナ-(「日・英の歴史的住宅の次世代継承を考えるセミナ-」)を大阪会場と群馬会場で開催した(2020年2月)。セミナ-を契機に、重文民家の若手世代の連携方法と支援策について検討進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①重文民家を住継ぐための共通課題抽出を目的としたアンケ-ト調査の結果分析のフォロ-アップ、③重文民家の建物および住文化の継承課題を具体的に把握するための訪問・インタビュ-調査、④英国の歴史的住宅の次世代継承者への支援の把握について、予定通りに研究を進めることができ、建築学会への研究報告を投稿することができた。②の重文民家の活用・公開を次世代が考えるための演奏会事例の実施については、当初の計画にはなかったが発展的に行ったものである。⑤重文民家の保存会や市町村の教育委員会による支援に関わっては、保存会については一定の基礎デ-タを得ることができたが、市町村については具体的な事例把握に至らなかった。以上を踏まえ、全体としては、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(2020年)は研究のフォロ-アップとまとめとして、①重文民家の訪問調査を続行し、引継ぎの課題を検討すること、②保存会を訪問して、重文民家の支援についての実態を明らかにすること、③研究成果を還元するためのシンポジウムの開催を予定していた。しかしながら、英国のHistoric Housesメンバ-の一人の来日に合わせ、2020年5月に開催予定だったシンポジウムは、コロナウイルスの感染拡大のため来日ができないことと、および感染拡大防止を考慮し、中止とした。また、本研究は全国各地の重文民家の訪問調査や、関係者との意見交換などフィ-ルド調査をを主体とするが、コロナウイルスの感染予防を踏まえると、実施が困難になるかもしれないと危惧している。これまでに得られた調査デ-タの分析と検討を深めるなど、人と接することが必要でない内容については研究を進めることが可能であるが、フィールド調査や研究成果報告のシンポジウムについては、コロナウイルス感染状況を踏まえつつ、場合によっては研究期間を一年延長して対応することも検討したい。
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Causes of Carryover |
2019年9月に英国出張を実施したが、受け入れ先の好意で宿泊費が節約できたため、出張旅費が予定より低く抑えられた。また、昨年度の時点では、2020年5月に英国のHistoric Houses関係者を招き、研究成果を還元するシンポジウムを計画しており、その会場費、通訳費、記録費、成果報告書印刷費等に大きな費用が必要と見込んで支出を節約し、物品費は可能な限り所属大学で配分される研究費から支出した。また、研究代表者・分担者が可能な限り資料整理等の作業を行ったため、学生に補助を依頼する費用が計画よりも少なくなった。 以上によって、次年度使用額が生じたが、2020年度前半にコロナウイルス感染拡大が収束すれば、シンポジウムの開催と研究報告書の作成、訪問調査などによって全額を使用する予定である。コロナウイルス感染防止を考慮し、出張および訪問調査等が予定どおりに進められない場合は、研究期間の延長も検討したい。
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