2020 Fiscal Year Research-status Report
重文民家を住みつぎ居住文化を伝える次世代担い手支援の研究
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18K04481
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
碓田 智子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70273000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗本 康代 平安女学院大学, 国際観光学部, 教授 (20410954)
中尾 七重 山形大学, 理学部, 研究員 (90409368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重文民家 / 引継ぎ / 維持管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年3月以降はコロナウイルス感染拡大により、予定していた重文民家の訪問調査、英国の歴史住宅関係者を招聘したセミナ-の実施、全国重文民家の集いメンバ-との研究成果の懇談会が実施できなかった。また、全国重文民家の集いの総会が中止されたため、重文民家の所有者への聞き取り調査などが実施できなかった。この状況下において、下記の3点が研究実績である。 ①昨年度までの研究成果については、日本建築学会住宅系研究報告会に論文を投稿し、オンラインでの発表を行った。また、日本建築学会大会に発表した。 ②訪問調査の代わりに、オンラインでの聞き取り調査を1件実施した。住宅の引継ぎと家業の引継ぎが同時に生じる事例であったが、10代の時から将来を見据え、大学の選択も行われていることが把握できた。 ③「重文民家の修理事業」をテ-マに、全国重文民家の集いのメンバ-を対象としたオンラインセミナ-を2020年2月に開催し、少数ではあるが、参加者(現当主と継承予定者)を対象に住宅の引継ぎ準備に関するアンケ-ト調査をWebで実施した。アンケ-ト調査の結果、①住宅の日常の維持管理については、母親から伝えられることが多いこと、②住宅の維持管理や屋根の葺き替え修理のことなどが、家族内であまり話されていないことが把握できた。③次世代からは、引継ぎに必要なことを学びたいとの意向が強かった。個々の住宅の条件や地域の事情は様々であるが、重文民家の継承に向けて、共通した準備や学習が必要であることが窺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度はコロナウイルス感染拡大のため、府県を超えた移動が制限されたこと、また本研究の対象である重文民家の居住者は高齢者が殆どであることから、訪問調査が叶わなかった。主対象である次世代は、連絡先を把握している当主世代を通じてしかアプロ-チできないため、オンラインでの調査も困難であった。たとえオンラインで聞き取りをしても、住宅や住まい方との対応ができないため、本来の目的に叶う充実した内容の調査が困難であった。 海外調査については実施が叶わなった上に、英国は2020年にコロナウイルス感染拡大でロックダウンが長く続き、歴史的住宅も運営等に大きなダメ-ジを受けていた状況下で、研究協力を依頼すること自体にも躊躇があった。 重文民家の次世代向けにセミナ-を開催し、WEBでのアンケ-ト調査を行うなどの工夫により成果を得た部分もあったが、本来の調査研究を行うことができなかったため、1年間の研究期間延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も新型コロナウイルス感染の完全な収束は困難ではないかと予想されるが、少数であっても重文民家の訪問調査をすすめ、可能な場合はオンラインでのインタビュ-調査を行う。また、海外調査の代替および研究成果の社会還元として、日英の歴史的住宅所有者を対象としたオンラインセミナ-を開催する。このセミナ-の機会を活用して参加者(次世代)にwebでのアンケ-ト調査を行う計画である。さらに、研究成果を報告書にまとめ、重文民家の所有者ならびに関係機関等に配布する。
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Causes of Carryover |
コロナウイル感染拡大により、2020年度は国内外の訪問調査を行うことができなかった。また、学会発表もオンライン発表となった。このため、本研究経費の大部分を占める予定であった旅費を使用することがなかった。また、謝金はオンラインによるインタビュ-調査とセミナ-の協力者への支出にとどまった。以上の理由で、2020年度は新たな調査研究が限られたため、助成金を殆ど使用することができなかった。 2022年3月まで1年間の研究期間の延長が承認されたので、2021年度は、1)昨年度できなかった訪問調査の実施、2)研究成果の社会還元としての日英の歴史的住宅の引継ぎと維持管理をテーマとするオンラインセミナ-の開催、3)研究成果のまとめとしての報告書作成を行う。そのための旅費、オンラインセミナ-の運営と通訳費用、報告書印刷費、資料整理補助の謝金などに研究費を使用する計画である。
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