2022 Fiscal Year Research-status Report
Theory and development of self-help housing policy; The Mutual Self-Help Housing program in the US
Project/Area Number |
18K04495
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
早田 宰 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80264597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 住宅 / 相互自助住宅プログラム / アメリカ合衆国農務省 (USDA) / Mutual Self-Help Housing / 農村開発 / Rural Development |
Outline of Annual Research Achievements |
米国における相互自助住宅プログラムは、農村部において経済的に最低限度自立した世帯が住宅を手ごろな価格で入手するために複数世帯からなるグループの協力による自力建設への公的支援をマッチングさせたユニークな制度である。オバマ政権からトランプ政権への移行、さらにバイデン政権への政権交代による変化を考察することが本研究の目的である。 トランプ政権では、2017年発足以後、農村経済は活性化し、雇用は増加した。一方、住宅に関する政府予算の大幅カットを提案した。その結果、都市部および農村部での住宅不足、価格高騰が発生し、世帯あたりの住宅着工数は史上最低となった。財政の大幅カットの中には、相互自助住宅プログラムも含まれていたが、上院下院は超党派で反対した。喫緊の住宅ニーズ、特にコロナ禍における困窮に対応するため、農商務省(USDA)は相互自助住宅プログラムに190万ドル(2億600万円)の投資を決定した。サウスダコタ州やオクラホマ州における相互自助住宅事業への支援である。 バイデン政権は2021年1月発足に際して、住宅は強力で健全なコミュニティを成長させる戦略を打ち出した。全米農村住宅連合(NRHC)は、USDAの相互自助住宅プログラムの予算増額、賃貸住宅供給支援、低所得者向けの賃貸支援等を要請した。住宅政策の2023年度予算は前年度と比較して維持または増額となり、セクション515賃貸住宅直接融資、セクション521家賃補助(低所得者賃借人の保護)は増額となった。さらに都市部では住宅都市開発省によりコミュニティ強化のための新しい保存および再投資イニシアチブ(PRICE) の新制度が創設された。 このように米国におけるセルフビルドの住宅は、都市部・農村部における低所得者層に残された住宅政策の最後の選択肢かつレジリエントなコミュニティづくりのアプローチとして政権交代を超えて存続しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オバマ政権からトランプ政権への移行における米国における自助型のセルフビルド住宅政策の変容に加えてバイデン政権へ移行も含めて中期スパンでの政策の一貫性またはレジリエンス(強靭性・回復力)という視点からの分析を加え2023最終年度を実施している。 コロナ禍において住宅困窮者のニーズ、とくにトレーラーやコンテナハウスなどの工業住宅に頼らざるを得ない層が増えている。また気候変動の影響で、洪水危険地帯から住宅を移転して安全な場所に移転するニーズも顕在化してきた。このような新たな住要求によりセルフビルド支援型の住宅プログラムのニーズが高まっている。 トランプ政権においては農村における経済と社会のアンバランスが深刻なものとなり、相互自助住宅プログラムの廃止が提案されたが議会は上院下院とも超党派で反対し制度は維持された。 バイデン政権では住宅困窮状況に対する支援は重要な制度として運用されている。相互自助住宅プログラムの重要性は再認識され、とくにワークライフバランス、ウエルビーイングや幸福に必要なソーシャルネットワークの開発、環境的および社会的リスクからの家族の保護等について改めて評価されている。アメリカにおける複数の州における運用、自助住宅グループの規模、それらの決め方についてオンラインおよび現地インタビューによる調査を実施している。新築のみならず既存建物のリニューアルも積極的に市民へ選択肢として情報提供している地域もある。ユタ州東南部地域などはその例である。洪水危険地帯からの住宅移転とアフォーダブル住宅建設は、アラスカ州ベーリング海峡地域で住宅支援プロジェクトとして展開されている。 さらに都市部では住宅都市開発省によりコミュニティ強化のための新しい保存および再投資イニシアチブ(PRICE) の新制度が創設された。これらの新たな政策潮流について追加調査項目に含めておこなう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
オンラインで可能な限りのデータ収集、分析をおこなってきた。2023年5月現在、コロナの影響は小さくなり、2023年夏アメリカに渡航調査を計画しており、調査票の作成、依頼団体、専門家等のリストアップ作業をおこなっている。訪問・現地調査を調整中である。限られた時間を有効活用するため研究補助者を活用した研究情報収集を併用するなどを検討中である。研究関心については、アメリカの相互自助住宅についての当初の問題仮説、その全体像についてはおおむね概要を把握することができた。現段階の研究到達点における考察をもとに研究とりまとめ、学術雑誌へ論文を投稿した。 コロナを経て新しい自助型の住宅政策が出現してきた。ノマドランドなどの映画でも有名になったトレーラーハウス等の工業住宅が定住に移行した「モバイルホームパーク」などの場所が出現している。これらの中には、居住者所有コミュニティ (ROC) という協同組合が土地を所有してコミュニティ事業を管理しているものがある。強いコミュニティ意識を形成し、土地賃貸料の管理、道路、水道、電気、下水システム、景観などのコミュニティ施設の修理と改善の管理、居住保障などの住関連サービスを自らの出資で共有・享受している。こうした事例についても研究対象の射程に加えてゆく。 本テーマは、今後も中長期にわたって研究を継続する予定である。対象国をアメリカに加え、イギリスにおけるコミュニティセルフビルド住宅、日本における住宅リノベーションをとりあげる。制度および担い手(非営利住宅団体、セルフビルダー)、支援者(金融セクター)の制度比較の研究をおこなってゆく。とくに住宅取得困窮者層への手ごろな価格での住宅供給という視点に加えて、自力建設による事故効力感や幸福感、グループビルドによる良好な近隣コミュニティの構築、社会生活の安定等への影響や効果について考察してゆく。
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Causes of Carryover |
2022年度は、コロナ禍の影響でアメリカの渡航調査がまだ実施できなかった。そのため予算の残額を2023年調査に繰り越すこととした。2023年度夏はアメリカ調査が実施できる見込みであり使途の予定は立てられる。
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