2019 Fiscal Year Research-status Report
ポスト復興および事前復興から捉えた立地適正化計画の可能性と課題
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18K04502
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
北原 啓司 弘前大学, 教育学部, 教授 (30177860)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 事前復興 / 立地適正化計画 / コンパクトシティ / ポートランド市 / 公共交通網計画 / 南海・東南海大地震 / 東日本大震災 / 復興まちづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)第一次産業の空間と都市空間との相互交流をライフスタイルにつなげる米国ポートランド市のコンパクトシティ政策に関して、実地視察をするとともに、西芝雅美氏(ポートランド州立大学教授)、柳澤恭行氏(ポートランド州立大学シニアフェロー)に対するヒアリング調査を実施した。単純な集約モデルではなく、農村部との共存を目指した都市計画の理想的な姿として、公共交通を上手に関連させたモデル都市としてのポートランドの意味を、今回の視察によって明らかにすることが出来、それが我が国の立地適正化計画のあるべき姿に対して非常に重要な意味を持つことが明確になった。 (2)事前復興計画としての立地適正化計画の策定状況に関する実態調査として静岡市、蒲郡市、和歌山県、高松市の都市計画部局に対するヒアリング調査を実施し、各府県における調査対象を決定し、実態調査を実施した。立地適正化計画を策定することが各自治体の急務になっているものの、南海・東南海大地震が想定される地域においては、現状の都市構造をベースに計画をしようとする場合、都市機能誘導区域や居住誘導区域を、津波災害が予測される地域に設定せざるを得ないケースがいくつかの事例で報告されており、都市計画マスタープランの策定が急務であることが把握でき、今後の研究の進展に対して、大きな成果を上げることができた。 (3)立地適正化計画を策定する際に、重要となる公共交通網計画について、特に交通過疎地の生活を成立させることが居住誘導区域の設定の際には大きな問題となることが考えられ、一昨年の大雨被害でも知られる岡山・鳥取圏域の日野町において安全を守りながらもスーパーマーケットの宅配事業が居住を保証する仕組みを調べることができた。また見附市役所は徒歩をメインにした地方小都市として一つのモデルとなる立地適正化計画を作成しており、現実的な立地適正化計画の課題を議論することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の入院のために実施できなかった、米国のポートランド市の調査については、今年度無事に実施することが出来たが、当初ヒアリングの予定であった山崎満広氏(元ポートランド市開発局オフィサー)が日本に帰国されたため、それにかわる柳沢恭行氏(ポートランド州立大学シニアフェロー)に依頼することとなり、予定通り実施することができ、大きな成果を得ることが出来た。 また当初の計画では、被災していない東北各地の自治体における立地適正化計画の実態調査として、国土交通省東北地方整備局内の「コンパクトシティ推進研究会」の協力のもとに、非被災自治体に対するアンケート調査を実施し、コンパクト&ネットワークという観点から捉えた立地適正化計画の評価と立地適正化計画における農村部の位置づけ等について明らかにし、いくつかの自治体に対するヒアリング調査を実施する予定であったが、令和元年に発生した台風・大雨被害により,対象の各自治体が復旧に向けた事業に追われ、国土交通省東北地方整備局の協力も得られない状況にあったため、調査を次年度に移すこととした。しかし、福島県須賀川市、会津若松市、新潟県須賀川市、山形県米沢市において立地適正化計画担当行政等に対する事前調査的なヒアリングを実施している。 そのかわりに、令和2年度に実施する予定であった、事前復興計画としての立地適正化計画のあり方の検討として、立地適正化計画が津波被害予測と矛盾する形で計画を余儀なくされている都市に対して、追跡的なヒアリング調査を実施し、事前復興計画の現実的な意義を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)昨年大雨被害で断念した被災していない東北各地の自治体における立地適正化計画の実態調査として、国土交通省東北地方整備局内の「コンパクトシティ推進研究会」の協力のもとに、非被災自治体に対するアンケート調査を実施し、コンパクト&ネットワークという観点から捉えた立地適正化計画の評価と立地適正化計画における農村部の位置づけ等について明らかにする。 (2)昨年のポートランド調査で聴取することができなかった、農業関係者(ファーマーズマーケット関連)及び公共交通担当者(ロバート・ヘイスティング氏)のヒアリングをコロナ禍の推移を見極めながら実施する予定ではあるが、最悪の場合には、メール及びインターネットを用いた意見交換も検討している。 (3)東日本大震災被災自治体における復興計画から本格的都市計画への移行実態調査を復興まちづくり支援に関わってきた大船渡市および宮古市において、引き続き復興現場に寄り添いながら、計画の方向性を詳細に調べ、担当者との意見交換を実施し、その効果を検討する。 (4)3年間にわたる本研究のまとめとして、立地適正化計画と事前復興との関係性を災害の危険性のみならず都市の持続可能性の観点からまとめていくこととする。
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Research Products
(7 results)