2018 Fiscal Year Research-status Report
新たな公共観・公共ニーズを踏まえた都市計画新法の提案とその評価
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18K04505
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高見沢 実 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (70188085)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 都市計画 / 都市計画法 / 改革 / 制度研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では近年、都市計画そのものの存在意義が問われている。本当に都市計画は役に立っているのか、必要なのかと。本研究は、都市計画は必要であるとの立場から、それを再定義し、具体的システムを提起し、それが有効であることと、より有効となるための課題を研究的に吟味することを目的とする。半世紀前にできた都市計画法の条文が接ぎ木の積み重ねによってきわめて不自然かつ複雑になり、結果として「都市計画とはいったい何なのか」がわからなくなっているばかりでなく、「都市計画」は次第に小さな領域になりつつあるととらえ、これらの問題を解消する新たな都市計画法体系を提起するための研究課題群を設定し、平成30年度は、現行都市計画(法)の問題点と論点、および改革の際の着眼点の整理をおこなった。 課題を大きくまとめると、①つくるための都市計画から計画管理を内在した都市計画へ、②行政主体の都市計画から民間・住民も主体となる都市計画、③一斉見直し中心からボトムアップの提案も含む継続的見直し、④量の配置中心から場所づくりを含む質の向上をめざす都市計画、⑤50年間に積み上がった都市計画外の各法令の取り込み・関連づけ、⑥以上を可能にするための都市計画法制全般の地方分権化である。また、近年の研究や提言を検討すると、1)単なる技術論に終わらせることなく、そもそも「都市計画」とは何かにまで踏み込み大きな改革の方向を示すこと、2)単なるあるべき論ではなく、現代的課題に対処できる実務的内容を含めた提案とすること、3)理想論や非現実論にならず、合理的かつ有効な制度をめざすこと、の3点に課題があることがわかった。また、次年度に向けた予備調査として、現代的課題が集中してみられる大都市郊外部(横浜市)を対象とするケーススタディーを行い、とりわけ「地域地区」「都市施設」を中心に具体的課題と改革に向けた方向性について整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の枠組みおよび年度毎の研究計画に従い、平成30年度実施とした箇所についておおむね進めることができた。なお、本年度の研究を進める過程で改めて認識したことと、当初の想定を超えたところで補足的・補完的に行ったことは以下のとおりである。 まず、改めて認識したことであるが、先の研究成果のところでも言及したように、これまでの研究や提言に不足している点として、あまりに実務的・技術的でありすぎたり、理想論や非現実論に傾きすぎているなど、克服すべき点が多いことが明らかになった。これは、都市計画制度の再構築の研究という、今回取り組もうとする研究のハードルがきわめて高いともいえる一方、「都市計画制度の再構築の研究」というテーマを設定したならば、あまり個別の議論や短期的課題の克服、革新的手法の創造のようなテーマに走ることなく、ある意味、淡々と研究対象・研究方法・研究構成を設定して1つ1つこなしていくべきこと、そうすることにより一定の成果に到達しうることを示している。とはいえ「都市計画」とは何かといった核心的テーマについてもきちんと整理することが要求される。まだ試論のレベルで整理している段階であり、次年度以降のブラッシュアップをめざす。 当初の想定を超えたところで補足的・補完的に行ったこととしては、郊外地の再生につながる都市計画の姿をサブ研究として位置づけ、「生産緑地地区」「第1種低層住居専用地域」などの「地域地区」の再整理の方向、「市街化区域」「市街化調整区域」「居住誘導区域」といった線引きの意味の変化とマスタープランへの位置づけ方法の再整理の方向などを考察した。当初計画ではこの部分は平成30年度から31年度の研究テーマとしていたが具体的研究方法が定まっていなかった。突破口の一つができたので、1つ前の科研(平成27-29年度)の成果と合わせ、当初年度計画は果たせているととらえている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、1)既往研究・提言レビューと課題設定、2)「マスタープラン」の新しい体系と内容の新生、および「都市計画」「地域地区」「地区計画」等の改革、3)「開発」の再定義と「許可」システムの拡充、4)都市計画関連制度の都市計画(基本)法への統合または新たな関連づけ、5)以上をまとめた新しい都市計画法の有効性の評価と修正、6)課題の整理、の6つに分割した研究を、およそこの順に行うものとして企画した。 上記したように、1)および、2)については部品や手がかりを得た状態である。令和元年度には2)の残りの部分と、3)4)を進め、令和2年度に5)6)に至る予定である。 まず令和元年度については、2)3)の手がかりはつかめているものの、4)についてはまだ方法が未確定である。すなわち、「都市再生(特別措置法)」「歴まち」「立地適正化」「低炭素」等、都市計画制度に関連しているが都市計画法の外にある諸々の制度群をどう再整理するかについてである。これらについては近道は無いと考え、まずは現在の制度連関そのものを「見える化」して構造をつかみ、平成30年度の成果にも関連させて、それらが都市計画法とどのように関連しうるか/すべきかについて整理するところからはじめたい。 5)6)についてもまだ具体的方法は決めていない。これらについては、令和元年度の成果も踏まえ、平成30年度の基本的成果とも関連させながら、令和元年度の末にはおよその研究デザインをしていく予定である。
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Causes of Carryover |
60万円の予定額に対して16万6316円を次年度使用額とした。内訳ごとに報告する。物品費が10万に対して5847円の残で、これは予定の範囲内であると考える。謝金は40万に対し60469円の残であるが、これも新年度に引き継ぎながら行う作業予算ととらえている。 その他は10万に対し残も10万である。これは当初「印刷費」等を考えていたものである。ただし、平成30年度内にこれを消化しなければならないものではなく、研究遂行の過程において、適切な時期に適切な内容で執行したいと考えている。 今後の使用計画は、物品費と謝金は当初計画通りに基本的に使用していく。「その他」については次年度が平成30年度分を上乗せした形になる。とりわけ都市計画のさまざまな部品や都市計画関連制度に関する具体的な検討段階にさしかかるので、有効に活用していきたい。
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