2018 Fiscal Year Research-status Report
Community Design Method Corresponding to Shrinking Society in Disaster Recovery Area
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18K04515
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
菊池 義浩 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 講師 (50571808)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 震災復興 / 北但大震災 / 大豊岡構想 / 近代都市計画 / 縮退社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要課題は、被災・復興経験を有する地域において、近代都市計画遺産および復興建築群が構成する空間的な特徴を明らかにすること、また、そこで展開される住民主体のまちづくり活動に焦点を当て、縮退社会における地域生活空間の計画手法を考究することである。2018年度は、主に「近代都市計画遺産・復興建築群の現存状況の地図化」について取り組んだ。 当該年度は豊岡市の市街地(旧豊岡町)を対象として、大正期に進められた大豊岡構想による近代都市計画と、その最中の1925年に発生した北但馬地震(北但大震災)の復興計画に関する資料を収集し、計画内容の分析に着手した。また、北但大震災の復興において建設されたRC造の建物に着目して、被災から90年以上が経過した現在の状況を調査し、これまで住み継がれてきたプロセスについて把握するため、調査協力の承諾を得られた所有者・管理者へのインタビュー調査を実施した。 これまでの調査分析から得られた成果として、当時の豊岡町はRC造で住宅再建する者に対して補助金を支給する方策をとっており(豊岡復興誌,1936年)、兵庫県城崎郡豊岡町が発行した「乙丑震災誌」(1942年)によると、申請者数48名、建坪総数1,694坪、補助金総額83,933円との記録がある。豊岡市教育委員会では、2014年に大学や高専と連携して「豊岡市再復興建築群」の調査を行っており、その調査結果を踏まえながらRC造の復興建築に対象を絞って現況を調べたところ、新たに判明した建物や既に取り壊された建物を含めて39件(公共施設・銀行として建設された建物を除く)が確認された。インタビュー調査からは、修繕や改築を繰り返しながら維持されてきた過程や、時代の移り変わりに応じて用途を変更しつつ存続してきた経緯が捉えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題における調査実施上の課題として、北但大震災の発生から90年以上が経過した現在において、当時に建てられた復興建築の変遷過程について把握している対象者をどれだけ得られるかが挙げられる。2018年度はRC造による復興建築の現存状況を明らかにし、12件に対してインタビュー調査を行った。一定数の聞き取りから具体的な成果を得られたとともに、建設当時の写真や建築図面など資料の提供を受けることができた。 一方で、その調査依頼を丁寧に進めたことと、調査結果の整理および詳細分析に時間を要している。研究成果を取りまとめて雑誌論文や学会発表等での報告を行うこと、地域社会へのフィードバックを図ることが課題であり、次年度は研究計画にもとづいて遂行できるように努める。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は豊岡市中心部における調査結果の精査を進めつつ、もう一つの対象地域である豊岡市城崎地区(旧城崎町)の調査に取り組む。城崎町は北但大震災によって大きな被害を受けた地域で、犠牲者は272人にのぼり、家屋被害は702戸中の547戸(半壊・破損94戸)が焼失するなど(北但震災誌,1926年)、ほぼ壊滅状態になっている。城崎町では共同浴場(外湯)再建を中心とした温泉地の再興を基軸として、町民大会による合意形成などを町政の復興方針とした(城崎町史,1988年)。以降、変化を加えつつも現在まで継承されている町並みについて、そのプロセスを明らかにすることが本年度の目的である。 調査方法として、はじめに自治体史や震災誌等の歴史書・記録書の精査を行い、旧版地図および過去の様子が分かる空中写真等を用いて市街地空間の推移を整理する。その上で、現地住民へのインタビュー調査による実態の把握と、時間軸を意識した空間構造の分析を行う。それらの結果を踏まえて、当時推進された復興計画が今日の地域経済や地域コミュニティに与えている影響を検証する。 また、災害復興後に顕在化してくる課題を広く考察するため、引き続き国内における事例視察を進める。2018年度は和歌山県における、紀州大水害(7.18水害,1953年)時に建設された応急仮設住宅など、過去の災害復興事例について現地調査を行った。2019年度は石川県輪島市を訪問し、2007年に発生した能登半島地震の復興過程と現況について調査する。なお、海外における事例視察も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査のテープ起こしや、古い建築図面の電子データ化(スキャン)に当初予定していた以上の費用がかかった。その反面、購入を予定していた設備備品を次年度に移行したこと、また、国内で開催された防災・危機管理研究をテーマとした国際会議に参加(口頭およびポスター発表)できたこともあり、海外における事例視察を繰り越したことで残額が生じた。 2019年度は予定していた設備備品の購入を行い、現地調査も研究計画にもとづき行う予定である。また、テープ起こしなど調査結果の整理にかかる費用も引き続き必要であり、差額が生じた分はそちらに充当して研究の推進および効率化を図りたい。
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Remarks |
平成30年度第1回県立コウノトリの郷公園運営懇話会での研究紹介(2018年10月)
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